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【APH】望む落陽 まだ見ぬ夜明け

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「んー、国なったらか。何にも考えてねぇけど、夜中に異教徒の襲撃に怯えたり、あっちこっち野営することなく、定住出来るようになったらいいなって思ってる。何より国になったら、みんなを守れるだろ?」
マリアの言葉には端々にまだ見ぬきらきらとした希望が見えた。それを神聖ローマは眩しげに見やり、目を細めた。
「…んでさ、総長の話だとさ、神聖ローマ、お前の上司がオレの上司の上司になるかもしれないんだ」
マリアの言葉に神聖ローマは顔を上げる。マリアはにかっと笑った。
「そしたら、お前がオレの上司だよな?…オレはまだ見習いだけどよ、いつか立派な騎士になったら、お前を王だと思って仕えってやってもいいぜ!」
「…いつの話になるか解らないな」
「すぐに決まってんだろ!ケセセ!」
不可思議な笑い声を立てて、快活に笑うマリア。それにつられたように神聖ローマの口元にも笑みが浮かぶ。

「…約束だぞ。マリア」
「お前こそ、オレをちゃんと騎士として取り立てろよ!」

その約束は果たされることはなかった。

 その後、マリアはハンガリー、ポーランドと流れ、ポーランドの北の地を手に入れ、ドイツ騎士団、プロイセンと名を変え、小さな公国となり、マリアは国になるという願いを叶えた。
 それなのに、自分はどうだ?

 もう、既に死に体だ。
 このまま、無様に永らえていくのが生きていく意味だとするならば、何と意味のない生だ。
 ああ、もう一度…。
 もし叶うならば、もう一度…。
 あの子にも、マリアにも、相応しい王におれはなりたい…。


 それが、叶わぬ何とも虚しい望みだと、解っているけれど。







「…ああ、この生が終わるならば、」

この黄昏に染まる赤の鮮烈なる刃に心臓を貫かれたい。

「もし、叶うならば…」

次の生などあるわけがない。死ねばそれまでだ。それでも、願い望む。
闇を裂いたその先にある夜明けの光の先、あのきらきらと美しく光る赤のコランダム。

『…約束だぞ。マリア』
『お前こそ、オレをちゃんと騎士として取り立てろよ!』

 この生を、今一度、やり直すことが出来るだろうか。
 叶うならば、マリア、お前と一緒に…。







 1648年10月24日


 冬の気配が忍び寄る曇天の空の下、各国の王が集い、条約が締結された。