34 Dinner2~それぞれの想い
「で・・・この有様か」
もちろんレオニードは怒るつもりなどはなかった。それどころか、こういとも簡単にこの少女に取り込まれた「この二人」がおかしくもあり、加えてこれまでの自分も同様だったことに思い至り、似た者同士三人の奇妙な性(さが)に苦笑いするしかなかった。
「リューバはね、お料理の手際がとてもいいの!美しくて強くてお料理もできて、最高に素敵な女性だね。憧れちゃうなー」
「・・・・・」
「どうだリューバ、同性に憧れられる気分は?」
「くくっ・・・」
ロストフスキーが先ほどの仕返しとばかりにひやかしを入れ、レオニードも笑いを嚙み殺している。
「・・・レオニード・ユスーポフ、呑気に含み笑いなどしてる場合か?近頃の宮廷での噂は耳に入っているのだろう?いったいいつまでこんな・・・」
「リューバ!」
リューバの踏み込んだ、しかも的を得た反撃をレオニードがすかさず鋭い視線と声で遮ると、幼なじみ三人の間にギクシャクとした沈黙が漂い始めたのだが・・・。
「レオニード?今週はとても忙しかったんだよね、疲れているんでしょう?スチェパンがザクースカは準備してくれたから、お酒でも飲みながら先につまんでて。ロストフスキーさんも一緒に、ね?」
その場の軋轢を消し去るようなユリアのソプラノに、たちまち空気が和らいだ。
「あ、リューバはもう少しお手伝いお願いします」
作品名:34 Dinner2~それぞれの想い 作家名:orangelatte