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34 Dinner2~それぞれの想い

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「レオニードはスメタナは好きかな?」

女二人、夕餉の仕上げに取り掛かる。ユリアは、ペリメニに添えるスメタナを小鉢に盛っていた。

「多分・・・あなたは・・・彼が好き?」

「ボク?うーん・・・レバーと一緒で、これも苦手だったのを憶えてる・・・」

「・・・レオニードが、好きか聞いた」

ユリアは、その手を止めてリューバをじっと見つめた。リューバも、今度は迷わずにその眼差しを受け止める。

「好き・・・だよ?どこの誰かもわからない大怪我を負ったボクを拾って、ここに置いてくれている。嫌う理由なんかない。この質問の意図は判るよ・・・そうだね、ボクは彼の優しさに甘えすぎているよね・・・」

「責めているわけではない。ただ・・・あなたには本来愛し愛される人がいただろうと・・・」

湯が煮立った大鍋に泳ぐペリメニを見つめながら、リューバは静かに言った。

「そうかもしれない・・・」

オーブンの様子を見ながらしゃがみ込み答えるユリアはなんとも頼りなげで、リューバは言ったことを後悔する。

―――この娘には、なんの責任も・・・ない。

「ねえ、リューバは好きな人は?結婚とか考えないの?」

沈黙の気まずさを払いのけるように、ユリアが明るい声で語りかける。
突然の質問に、リューバは一瞬心の粟立ちを意識するが・・・。

「・・・昔ばなしを一つ・・・私には、生れる前から決められた許婚がいました」

今まで人に話したことなどなかった淡い想い出・・・自然と口をついて出ていた。

―――なぜこの娘にこのような話を・・・?

ユリアは意外な告白に驚きを隠せない様子で、オーブンの火を止めて彼女に向き直る。

「・・・似たような環境で共に育ち、物心ついた頃にはこの人のお嫁さんになるのだと認識させられていて・・民族意識が根強く残る限られた世界で、成長と共にお互いに惹かれていったのは当然と言えば当然だった。けど、私が13の頃、彼は落馬事故であっけなく死んでしまった・・・自分の半身を失くしたような感覚に陥ったよ。しばらく、心身のバランスも失くし・・・」

「愛して、いたんだね」

わからない――リューバは首を振った。

「ずっと、そばに感じていてそれがずっと続くと思い込んでいて・・・でも失って初めて、運命の人だったのだと・・・そのかけがえのない人を失ってしまった喪失感と哀しみに押し潰された」

「リューバ・・・」

この、いつでも凛々しくピンとした姿勢で自らの任務を淡々とこなす美しい彼女が、こんなにも深い愛と哀しみを抱いていた・・・「運命の人」という言葉に、心臓がトクンと反応したように感じたユリアだった。