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38 ごめんね…

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その日の朝は―、近頃は母親を笑顔で見送れるようになっていたミーチャが珍しく別れ際にぐずった。いつもミーチャと一緒の―大事にしているくまの縫いぐるみのアリョーシャをうっかり家に置いてきてしまったからだった。

アリョーシャは母親が手作りしてくれたくまの縫いぐるみで、それはミーチャが顔を知らない父親のものだったという洗いざらした手袋で作られており、丸い茶色のボタンの目(母親に言わすと父親にどこか似ているという)が何とも言えない愛嬌を醸していた。お腹にブルーの糸で刺繍されたト音記号がチャームポイントで、母親はこのくまにあろうことか(!)自分の夫の名前「アレクセイ」の愛称である「アリョーシャ」と名付けた。

アリョーシャがいないとイヤだ、家に取りに戻る…と普段は聞き分けのいいミーチャが母親譲りの碧の瞳に涙を浮かべてベソをかいた。
そんな息子を母親―、ユリア・ミハイロヴァは困ったような表情を浮かべながらも両手で息子の柔らかな頬を包むと、
「ミーチャ。今日は我慢して。ね?アリョーシャもミーチャと離れて寂しがってるかもしれないけど、お家でお留守番をしてるから、ミーチャも今日は一人で頑張ってみよう?帰ったらアリョーシャをたっぷり抱きしめてあげよう」
そう言ってぐずるミーチャの額に自分の額を優しくコツンとくっつけた。

―ユリア…。

彼女の出勤時間を気遣ったリザがぐずるミーチャの背中を優しく抱いて、目で促す。

「じゃあね、ミーチャ。ムッター行くね。…そんな顔しないで。笑ってムッターを見送って!いつもの時間に迎えにくるからね。リザさんのいう事を聞いて、いい子にしてるんだよ」
そう言うと母親は涙で濡れたミーチャの両頬に大きな音を立ててキスをすると、通りの向こうへと走り去って行った。

だけど―、その日のいつもの時間に、母親は来なかった。
いくら待っても母親は迎えに来ず、ミーチャの面倒を見てくれているリザとその夫のイワノフがその日遅くまで、怖い顔をして家を出たり入ったりしていた。
迎えに来ない母親を求めてミーチャはその日いつまでも泣き続け、とうとう泣き疲れて眠りにつき、朝を迎えた。

そして―、その日以来母親はミーチャの前に現れず、ミーチャはそのままイワノフ家で過ごす事となった。

作品名:38 ごめんね… 作家名:orangelatte