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39 子供の情景

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動物園の入り口で入場券を買ってゲートをくぐったミーチャがユリウスの手を引いて走り出す。

「ムッター早く!」

「待って待って!ミーチャ」

「ムッター、あれは何」

「うーんとね。あれはカバだって」

「ムッター、ムッター…」

今まで絵本でしか見たことのない動物の数々にミーチャの目は輝き、興奮で頬がばら色に紅潮している。

そんな息子の嬉しそうな顔を見るにつけ、「連れてきてよかったな」とユリウスは改めて思うのだった。

「ムッター!アリョーシャだ!!アリョーシャがいるよ」

ミーチャが指さした先には、大きな大きな茶色い熊がのっそりと歩いていた。

傍で見ていた人が手にしていたリンゴをポンと投げ入れると、熊はそれを器用に前足でキャッチした。

「すごい!すごいすごい!!」
ミーチャの目がますますキラキラと輝く。

「アリョーシャ、見て!」

手にしていたアリョーシャを熊の檻に掲げて見せる。

目の前の小さな子供にその茶色い物体をおもむろに掲げられた熊は―、おそらくそれも食べ物だと思ったのだろう。前足を器用に叩いて、「餌をくれ」とミーチャにゼスチャーしてみせた。

作品名:39 子供の情景 作家名:orangelatte