42 僕の金髪ちゃん
翌日―
「いや~今日もいい天気だな~~。うん、実にいい具合に冷えてる」
昨日から続く雨にザハロフが上機嫌でやって来る。
「何言ってんだ?お前、頭大丈夫か?―憲兵の野郎に頭でも殴られたか?」
同志の一人が浮かれ舞い上がったザハロフに訝し気…を通り越してもはや胡散臭げな視線を向ける。
「いい天気じゃないか~~。雨降り、大好き♥」
―お、れ、の、金髪ちゃ~~ん。
ザハロフがツーステップで事務所の奥へ―、ユリアのデスクの方へ向かっていく。
― ん?
「あれ~~~~?!」
昨日と同じように声のトーンがワントーン上がる。
昨日腰まである長い金髪を下していたユリアは―、またいつも通りにきっちりと髪を結い上げていた。
「あ、おはようございます。ザハロフさん」
傍らのザハロフに気付いたユリアが、輝くような笑顔を向ける。
「…ユリア、今日は…腕は…?」
「あ、今日もちょっと辛いんですが…。あ、髪は朝ブーニンさんが結ってくれたんです。腕が辛いときはいつでも頼んで~って言ってくれました。自分で結うより断然綺麗な仕上がりで。…ブーニンさんって優しい人ですね」
彼女の金髪に釘付けになったザハロフの視線に気づいたユリアが、嬉しそうに結われた髪に手をやって答える。
― お~の~れ~~~。ブーニン。
事務所に入って来た同志ブーニンを思わずザハロフが睨みつける。
そんなザハロフの忌々し気な顔に、ブーニンは「このド変態」と言わんばかりに、思いっきり舌を出して応酬した。
作品名:42 僕の金髪ちゃん 作家名:orangelatte