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四畳半に、ちゃぶ台ひとつ

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1.5


「んー……」
 薄手の布団がむき出しの肩からずり落ちて、朝の空気がひどく冷たかった。
 西日の差し込むボロアパートの1階が、2人の住処だ。大家の婆さんはごうつくばりだが、家賃さえ払っていればゾロとサンジが喧しくしてもそううるさくは言わない。男2人で4畳半という不自然さも、「あァそうかい」で流すようなドライな婆さんだ。
「ゾロぉ……?」
 寝起きの鼻に掛かった甘ったるい声もそのままに、パシ、パシ、と、サンジは隣に寝ているはずの筋肉ダルマを手の平で探った。
「……?」
 パシ、パシ。
 パシパシパシ。
 バシバシバシバシバシ!
 どれだけ叩いても煎餅布団の冷たく平べったい感触が返ってくるばかりである。
「……しまった!」
 目と口とを全開にして、サンジは勢い良く起き上がった。狭い部屋には昨晩の名残らしきニオイが濃密に残っているが、案の定、どれだけ見回してもそこにゾロの姿はない。
 素っ裸のまま布団を跳ね除け、サンジは慌てて流しの下のアルミ缶を引っ張り出し、それをさかさまにすると底に貼り付けられた封筒に手を突っ込んだ。
 ピイピイ、と表ではスズメが鳴いている。カラスも鳴いている。パチンコ屋の呼び込みの声も聞こえるし、2つ隣の部屋のちょっとイカれた爺さんの叫び声も聞こえる。
「ああクソ……またやられた……!」
 夏目漱石が4人いたはずの封筒にはパチンコ店のチラシらしき紙が無造作に突っ込まれていて、そこにはゾロの意外なくらい几帳面な字で、「借りる」とだけ書いてあるのだった。
「もう、米ねーよー……」