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四畳半に、ちゃぶ台ひとつ

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 そう言ってゾロは、やはり遠くを見つめたまま、その方向に向かって歩き始めた。サンジの手がゾロの腕を掴んでいられたのは、ほんの数秒だった。数秒ではあったけれども、サンジはその時間を、(ああ、俺はこの数秒を、この先一生、忘れられないかもしれない)と、そう思った。
「なあ……ゾロ、待てよ、なあ……!」
 ゾロはやはりサンジを振り返らず、やはり2人の視線が交わることはない。
 サンジはただ、座り込んだまま呆然とゾロの背中を見送った。異常なくらいに頭の温度が下がり続けていて、一方で顔の温度は馬鹿みたいに高い。焼け石と氷を抱えながら、は、とサンジは気が付いたように立ち上がった。
 風に舞い続けている1万円札を、5千円札を、千円札を、1枚、1枚。
「……んだよ! 見てんじゃねえよ! うちの飼い犬が稼いだ金だぞ……なんか文句あんのかよ! ……クソ、クソッ! ちくしょう!」
 新渡戸稲造の流した血の涙に、サンジの涙が重なった。