55 取引
「まことにすみませんが、暫く―、一か月程―、ヴェーラ様の元を離れます。私が不在の間は、従姉妹の、このサーニャを警護に当たらせます。この娘も―、一族の女の中ではとても腕が立つので、立派にお役目を果たせるものと思います」
― サーニャ、頼んだぞ。では、私はこれにて失礼いたします。
手短に要件を告げ、留守の間の代理の娘をヴェーラに引き合わせると、リューバはユスーポフ邸を後にした。
向かった先は―、ロマノフ家のクリミアの別荘―、リヴァディア宮殿だった。
作品名:55 取引 作家名:orangelatte