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永遠にともに〈グリプス編〉4

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アムロ達は何も知らされていなかった連邦の軍人達を退避させ、偵察として潜入し、ジャブロー基地に囚われていたレコア・ロンドと、同じく潜入していた元ホワイトベースクルーのカイ・シデンを救出して、地球の反連邦組織“カラバ”の協力の元、ジャブローを離脱した。

アムロは、“カラバ”の大型輸送機“アウドムラ”の中で懐かしい仲間と再会した。
「カイさん!ハヤト!」
久しぶりの再会に3人は肩を叩き合う。
「アムロ!」
特にアムロのオーガスタ研究所での事を知っているカイはアムロの無事な姿に安堵する。
しかし、アムロの横に立つ金髪の男に視線を向けると眉間に皺を寄せた。
アムロが1人になった時を狙い、カイはアムロを問い詰める。
「おい、アムロ。あのクワトロ・バジーナって男…」
アムロはカイの言わんとする事を理解すると笑顔で答える。
「ええ、赤い彗星ですよ。」
さらりと答えるアムロに言葉が詰まる。
「…!?お前…!どういう事だ?」
アムロはまず、オーガスタ研究所からブライトと共に自分を逃してくれたカイに礼を言うと、今に至る経緯を話した。

「はぁ…。あの研究員!なんて所に逃げ込んだんだ。」
カイが頭を搔きむしりながら溜め息を漏らす。
「いえ…、オレにとっては幸運な事でした。」
「アムロ?」
アムロはそっと微笑み、カイに視線を向ける。
「多分、あの人がいなかったら、たとえ身体が蘇生されたとしても心までは戻らなかったかもしれません。」
「アムロ…?どう言う事だ?」
「あの人が…深く眠っていたオレの心を呼び覚ましてくれたんです。」
アムロのその穏やかな笑顔にカイは息を止める。
「戦争中、何度も戦って、命のやり取りをして…、あの人は最大の敵であり、倒すべき相手だった。でも、サイド6で偶然会った生身のあの人は…オレがガンダムのパイロットだと知らなかったとは言え優しくて…。あの時、オレが戦っていた相手もまた“人間”なんだと思ったんです。」
「お前…、サイド6でシャアに会ったか!?」
アムロはコクリと頷く。
同じパイロットとして戦ったカイにはアムロの気持ちが理解できた。モビルスーツで戦っていると “中” に乗っているのが自分と同じ“人間”だと言う事を忘れてしまう。いや、敢えて忘れていたのかもしれない。でなければ引き金など引けなかったから…。
「その後、色々あって…、個人的にも憎しみ合う事になって…最後のア・バオア・クーでは互いの機体が大破した後、生身で剣を交えました。」
アムロが右肩の古傷を押さえる。
「互いの剣が相手を突いた瞬間、周りに宇宙が広がって…ニュータイプ同士の共感を感じたんです。その時、初めてあの人に “触れた” 気がしました。…そして、あの人に同志になれと言わたんです。」
「何だと!?」
カイの反応にアムロはクスリと笑う。
「オレもさすがにその時は、この人何言ってるんだって思いましたよ。」
「だよな…」
カイが「ふぅ」と、肩の力を抜く。
「でも、…オーガスタ研究所で地獄みたいな実験をされてた時…、思い出したのは同志になれと差し出されたあの人の手でした…」
その言葉にカイが顔を上げ目を見開く。
「もしかしたら…、いえ、きっと初めて戦った時から…あの人に惹かれていたんだと思います。」
「惹かれてるって…、まさかお前ら!?」
アムロは自嘲気味に笑うとそっと頷く。
「今は…そう言う関係です。オレはあの人を求めているし…あの人もオレを求めてくれます。」
カイはどう言葉を発したら良いか分からず息を止める。
「殺し合いをした相手に…ましてや男同士で…と軽蔑しますか?」
辛そうな顔をするアムロに何も答えられない。
しかし、軽蔑するとか嫌悪とかそう言うものは不思議と感じなかった。むしろ心の何処かで納得してさえいた。
カイはしばらくの沈黙の後、重い口を開く。
「ブライトは…この事を知っているのか?」
その質問にアムロはそっと頷く。
カイは「はぁぁ」と大きく溜め息をついた後、アムロの頭をガシガシ撫ぜる。
「お前ら本人やブライトが納得してんならオレが何も言うことは無えよ!」
「カイさん…」
アムロの瞳に薄っすら涙が浮かぶ。
「それで…、身体の方はもう良いのか?」
その質問にアムロの顔が曇る。
「何か問題があるのか!?」
「頭に…、何かチップのようなものが埋め込まれているらしくて…それが原因で頭痛に悩まされています…。」
「チップ!?」
「はい…、脳波を計測する為と…何かの実験の為の様ですが詳しくはわかりません。」
「取り出す事は?」
アムロが首を横に振る。
「場所が悪いのと癒着している為…難しいそうです。」
「そうか…。」
「とりあえず、連邦の研究所にシャアが調査員を潜入させて調べてくれてます。今は色々と対策しながら何とか凌いでます。」
カイはもう一度アムロの頭をクシャリと撫ぜる。
「分かった。俺の方でも少し調べてみる。」
「ありがとうございます。」
「この事、ハヤトには?」
アムロは少し考えると目を閉じ首を横に振る。
そのアムロにカイは小さく溜め息をつく。
「まぁ、クソ真面目なあいつには理解しがたいだろうな。分かった。俺も余計な事は言わねえよ。」
「カイさん…、すみません」
「いんや、呼び止めて悪かったな。じゃあな」
と、手を軽く振りカイはその場を立ち去った。
すると、側にシャアの気配を感じる。

「聞いてたんですか?」
シャアはアムロの前に姿をあらわすと眉を少し下げて溜め息を吐く。
「すまないとは思ったが気になってな。」
「いえ、こちらこそ心配かけてすみません。」
「いや…」
シャアはカイが立ち去った通路を見つめる。
「君は彼の事を随分信用している様だな。」
アムロも同じ様にカイの歩いた先を見つめる。
「そうですね。サイド7で同じハイスクールの先輩でした。結構いい加減な人で、悪さに付き合わされたり散々でしたけど、戦争中はオレの事を理解してくれて…且つ、あの通り歯に絹着せぬ物言いで接してくれたのでオレも本音が言えました。」
明らかに戦況が悪くても、他のクルーを不安にさせない為、「大丈夫、勝算はある、ニュータイプの感だと」嘘をついた。けれどその後、「さっきのは本当かよ?」っと、嘘を見抜いてオレの共犯になってくれて…嘘の重荷を一緒に背負ってくれた。
昔の事を思い出しているのか、アムロが遠い目をして話す。
「そうか…」
シャアはアムロの腰に手を添えると充てがわれた私室へと向かった。



section 6 黒い影

アウドムラは北米大陸上空をフロリダ半島にあるカラバの拠点、ケネディ宇宙センターに向け航行していた。

ーーーー北米大陸、アムロが幽閉されていたオーガスタ研究所がある大陸。
アムロは眼下の景色を見つめ肩を震わせる。
「ダメだな、こんな事じゃ…。」
アムロは制服のジャケットを羽織ると私室を出て、モビルスーツデッキへと向かった。
そこでMK–Ⅱの整備をしていたカミーユと目が合う。
「アムロさん!」
以前の出撃で行動を共にしてから何となく懐かれている。おそらく同じニュータイプという事で、相手の心に踏み込み過ぎない良いバランスが保たれ、安心するからだろう。
「カミーユ、MK–Ⅱの整備か?」