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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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 それで訓練にならない場合は自分自身が深海凄艦役となって二人に演習を何度もさせればいいだろうと考えた。慣れてない二人に本気でやる気もないが、わざと負けてやる気もない。自身だってできたんだからこのくらいはあの二人もきっとできるはずと、那珂は信じていた。
 1時間ほどみっちり練って考えて調整したカリキュラム案を提督に報告することにした。
「……うん。なるほど。それはそういう根拠で考えてるんだね。」
「そ。あとこれはね……」
 お互い顔はかなり接近していたが話が真面目な問題だったので、那珂も提督も一切気にはしない。


--

 那珂が真面目に考えている間川内と神通は借りた教科書を読んでいた。早々に飽きかけていた川内はじっと真面目に読み耽る神通に小声で話しかける。

「ねぇ。ねぇってば神通。」
「……!? は、はい。なんでしょうか?」
「そっちって、面白い?」
「この教科書ですか?」
「うん。それ。」
「ものすごく面白いです。以前の艦娘部の展示の比ではないかと。とても……参考になりますよ。」
珍しく興奮気味に言葉を出す神通を見て川内は興味を惹かれかける。彼女が読んでいるのは艤装装着者概要のための教科書だ。一方で川内が手に取ってしまったのは一般教養向けの教科書である。

「そっち一緒に読ませてよ。てかあたしのこっちの本さぁ。ぶっちゃけ中学の時の社会科の教科書みたいな内容なんだもん。面白くないよ〜。」
「……むしろそういう艦娘以外の知識のほうが大事な気も……はい。一緒に読みましょう。」
「やったぁ!」

 川内は手に持っていた本を閉じてテーブルに置き、神通に半身をくっつけて密着して彼女が手にとっている教科書を読み始めた。

「せ、川内さん……暑いです。そ、そんなにくっつかなくても……こうして真ん中に置けば……見えますので。」
「え? あぁゴメン。よく○○くんたちの漫画読ませてもらう時にこうしてたからつい。」

 鼻で吹き出しながら笑って少しだけ神通から離れて座り直す川内。
 神通は何気なく川内がポロリとこぼした過去のことが気になった。彼女は男子と密着して何かしてたのかと、思わずギョッとする。そんな態度を取っていれば、かつての噂どおりの誹謗中傷が生まれてしまうわけだと、川内をなんとなく気の毒に感じてしまった。

 川内が神通と一緒に艤装装着者概要の教科書を読み始めてから十数分経った。川内もようやく興味を持続していた。川内は三戸と同じくゲームや漫画・アニメで旧日本海軍や各国の艦隊を覚えたため、それらに近い情報が出てくると"おぉ〜"だの、"なるほどあれはこうやって艦娘制度に出てくるのかぁ!"と、声を上げて感心しながら読みふけっている。
 一方の神通は趣味らしき趣味がない分、読書はジャンルを問わず手を付けていた。さすがに艦娘の本は興味はあれど手に取る勇気がなかったためにほとんど読んでこなかったが、軍艦や艦隊に関する本はサラリと読んだことがある程度。その方面の知識では川内のほうが卓越しているのかと彼女に感心した。
 ただ、神通は勉強では負けていられないと、密かに闘志を燃やすのであった。


 二人様々な反応を示しながら教科書を読み、ふと神通が時間を気にして時計を見ると1時間ほど経っていた。ふと提督の執務席のほうを見ると那珂が提督のすぐ脇に居り何かを話していた。カリキュラムの準備が進んでいるのだろうと踏み、すぐに視線を本の方に戻した。

 次に神通が顔を上げて時計を見た時は、読み始めてから2時間経っていた。とっくにお昼をすぎている。神通が顔をあげたのでつられて川内も視線を本から離して部屋全体に向ける。その頃には那珂は秘書艦席に戻り、提督はPCに向かって別の作業をしていた。
 ずっと同じ姿勢で本を読んでいたため身体が硬くなってしまった二人はグッと背伸びをした。

「はぁ〜〜〜!ずいぶん読んじゃったね。それ確かに面白いわ。」
「……はい。」
「そーいう本だったらあたしも真面目に読めそう。ねぇ!提督!」

 PCから目を離した提督が川内を見た。
「ん?なんだい?」
「この本さ、持ち帰ってもいい?結構面白かったよ。普段本読まないあたしでもバリバリ興味持って読めたもん。」
「あ〜、別にいいけどそれ1冊しかないから、適当にコピーしていってくれ。」
「わかった!ありがとね。」

 提督から了承を得た二人は本を持ち帰ることにした。提督と川内のやりとりを聞いて視線を上げた那珂は川内と神通の方を見てニカッと笑いながら語りかける。

「どう?二人とも。お勉強できた?」
「はい!これならカリキュラム一つ今日終わりですよねきっと?」
「アハハ。一般教養と艤装装着者概要はもうクリアってことにしておくから、繰り返し読んでお勉強し続けてね。それ以外はこのあと説明するから。」
「はーい。」
「……はい。」

 那珂はグッと背筋を伸ばした。
「んん!! はぁ〜久々に真面目に考えたら疲れちゃった。もうお昼だよね。どうするみんな?」
「よし。今日は俺がおごってあげる。」
 提督はリラックスしはじめる3人を見て、そう宣言した。

「えっ!?いいの?」と那珂。
「うわーい!やったぁ! 提督ふとっぱらぁ!」
「……申し訳ないですけど。」
 バンザイをして思い切り川内は喜び、一方で神通は申し訳なさそうにするが、実のところ好意に甘える気満々である。

「いいっていいって。他の子は……五月雨と時雨はご家庭の旅行で今週は来ないし、今日は村雨たちも任務ないから来ないだろうし。留守番は明石さんに任せて行ってしまおう。」

「アハハ。明石さん仲間外れ〜。」
「いいんだよ。あの人は会社の人と来てるんだし。」
 那珂と提督は遠回しに明石を茶化す。そして那珂たちは提督に率いられ、昼食を取りに鎮守府を後にした。