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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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--- 4 幕間:将来



 那珂たち3人を連れた提督は近くの居酒屋に連れて行った。まだお昼の定食メニューは続いている時間だ。4人は店に入り座敷席に案内された後、それぞれ好みのメニューを頼み待つことにした。

 冷水をコクッと口にした後、那珂が喋り始めた。
「提督はこの店よく来るの?」
「あぁ。お昼もよく使うし、夜もたまに明石さんたちと……って何言わすんだ。」
「自分で言ったんじゃん!へぇ〜明石さんたちとここでよろしくしちゃうんだぁ〜」
 わざとらしくニヤケ顔で提督を茶化し始める那珂。
「よろしくって……明石さんだけじゃなくてたいていは技師や事務員さんたちと一緒だぞ?君が考えてるようなやましいことはないからな?」
「「「アハハ」」」

 那珂と提督のやりとりに一同は笑い合い、しばらくして届いた料理を堪能した。
 昼食を一番早く食べ終わったのは川内だった。その後提督、那珂、神通と続いた。那珂と神通は僅差だった。

「川内は食べるの早いなぁ。俺も大抵早いと自負していたけど、女子高生ってこんなに食べるの早いのか?」
 提督の素朴な疑問に那珂と神通が揃って答えた。
「ううん。川内ちゃんが早すぎなだけ。男子みたい。」
「……先日も、川内さんはお昼食べ終わるの、早かったです。」

「えぇ〜!二人ともなんでそんな息ピッタリ!?ひどいですよ〜!」
「だって、ねぇ〜?」
「……はい。」
 早いのは事実だったので、那珂も神通も顔を見合わせて失笑するしかなかった。

「まいいや。ねぇ提督。ドリンクバー頼みたい。」
「居酒屋にそんなものねぇよ。帰りに飲み物買ってあげるからそれで我慢しな。」
「はーい。」

 その後もなにか思いついたように口を開いては提督に何か買ってくれだのこれが欲しいだの言い出す川内。
 提督と川内の何気ないやりとりを見ていた那珂。妙に欲望に正直なところが川内にはある。中学生組でいえば夕立と似てると気付き、提督が夕立に対して行う接し方を思い出す。本人的には至って平静を保って振舞っているのだろうが、傍から見るとデレッデレした顔になっている。あれは溺愛する娘に対する顔のようなものだと那珂は思い、心の中で苦笑した。
 夕立よりかは歳相応に精神的にも成長している川内だから、提督は夕立と川内を全く同じ接し方で接しないだろうとは思ったが、きっと提督にとってどちらも同じような存在になるのだろう、と漠然と捉えることにした。
 自分"たち"のライバルにはなり得ない。心のなかでホッと一息楽観視する那珂であった。


--

 その後店を出た4人はブラブラのんびりと歩きながら本館へと戻る。
「ねぇ提督。今日は会社戻るの?」那珂はなんとなく尋ねてみた。
「いや、今日は一日こっち。だから君たちは時間気にせず訓練続けていつ帰ってもいいぞ。」
「そっか。うんわかった。」

「そういや提督って夏休みはあるの? てか会社と鎮守府、どっちとしてあるの?」
 次に尋ねたのは川内だ。
「うーん、夏休みまだ決めてないんだよな。ちなみに鎮守府……国の仕事のほうはうちの鎮守府下では俺がすべての裁量権を持つトップだから自由。だから最終的には会社に夏休みいつ取るか言えばいいだけなんだ。」
「へぇ〜。会社員って夏休み少ないんだよね?大変だねぇ〜。」
「学生とは違うからね。ま、君たちも数年後働き出せばわかるよ。」

「働くかぁ〜実感ないなぁ〜。高校卒業したら、あたしどうなるんだろ……。」
 提督の何気ない返しに感慨深く感じた川内は自身の将来を気にし始める。それを見た那珂が首を傾げて尋ねた。
「川内ちゃん?」
「いやぁ、まだ高校入ったばかりですけど、高校卒業したら大学行くのか働き始めるのか、考えたら不安になりませんか?」
「う〜〜ん。そう言われるとまぁね。あたしは高校生活もう半分過ぎてるし、そろそろ進路考えなきゃいけない頃だもん。」
「那珂さんは高校出たらどうするんですか?」
「あたしは大学行く予定。その合間に艦娘の仕事を続けられたらなって思ってるの。川内ちゃんと神通ちゃんは?」

 川内はしばし唸ったのち答えた。
「あたしは……まだ考えてないです。不安に感じちゃうから、考え過ぎないようにします。」
 そう言った後、川内は何かを思いついた表情になって提督の方を向いて口を再び開く。

「そうだ! ねぇ提督。艦娘って普通に仕事にならないの?」
「えっ? ええとだな……職業艦娘っていうのになれば準公務員になれるし、公務員への昇格も約束されてるから安泰といえば安泰な仕事だが。」
「じゃああたしはその職業艦娘になろっかなぁ〜?」

 川内の発言に提督が鼻で笑いながら忠告する。
「おいおい。職業艦娘は甘い考えでなれるようなもんじゃないぞ?激務だって聞くし、色んな鎮守府に派遣されるし、相当鍛えないと厳しいだろうし。」
「身体動かすのは得意だからそのへんは心配ないって。あ〜、早く訓練終わらせてバリバリ活躍したいなぁ〜。」

 提督の厳しい意見も意に介さず、自身の思いを素直にぶちまける川内。そして隣を歩いている神通の方を向いて次はとばかりに神通のことを尋ねてみた。
「神通は?」
「えっ……?わ、私?」
「そうそう。」

 川内の将来の考えを聞いて自身を見つめなおそうと思っていた神通は考え途中で注目されたので一瞬焦るが、数秒落ち着いたのち答えた。
「わ、私は……まだわからないです。大学……かもしれません。艦娘の仕事は続けるかどうかわからないです。」
「え〜?艦娘やめるかもしれないの?」
 川内が不満タラタラに神通に言葉を投げかける。
「いや……あの、わからないです。まだ艦娘になって間もないですし。」

 二人の意見を聞いていた那珂が口を開いた。
「そりゃまあ二人とも訓練まだやってないからなんにも実感ないでしょ? とりあえずさ、将来は置いといてもいいんじゃない? 提督もあつ〜〜〜く語ってたでしょ、あたしたちの日常生活がまず大事だってさ!」
 言葉の最後のほうは提督にチラリと視線を送りながら口にする。目が合った提督はやや恥ずかしそうに咳払いをして話題を締めようとした。

「ンンっ! まぁなんだ。艦娘の仕事は大変だろうけど、少なくともうちの鎮守府の担当海域ではそんなにしょっちゅう出撃があるわけではないし、艦娘のことに影響されずに君たちそれぞれの日常や将来のことを考える時間は存分にあるはずだ。俺はあくまでも艦娘としての君たちの管理者や保護者であって、君たちの日常には口出しできる立場じゃないから、見守ることしかできないけどさ。」

「でも人生の先輩として相談に乗ってくれてもいいでしょ?うちの艦娘はほとんど学生なんだし。トップの人がぁ〜艦娘たちの悩みの相談に乗ってくれるフレンドリーな人ならぁ〜、きっとうちの鎮守府も評判良くなって艦娘ガンガン増えると思うよ?」
 那珂はわざとらしく提督に半身を寄せ、人差し指で提督の肩をツツッと撫でる。目は笑みを含んだ上目遣いになっている。完全にからかっていると気づいたのは神通だ。川内は那珂の言葉を額面通りに受け取って、那珂にノる。

「そ〜ですよねぇ。それいいですねぇ! あたしたちの人生相談にも乗ってくれる提督!面白いと思いますよ。あたしも話したいですし。」