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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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--- 5 基本訓練(導入)



 昼食が終わって那珂たちは本館へ帰ってきた後、それぞれの作業の続きをした。那珂は訓練のカリキュラムの調整の続きを、川内と神通はカリキュラムの中の座学たる"一般教養"と"艤装装着者概要"を、教科書を使っての独学を再開した。
 二人は那珂と提督から、教科書を繰り返し読めと指示を受けたため、一旦その本をコピーしにコンビニに出かけ、必要と思われるページをコピーしたのち、二人で分けて読書を再開した。原本は川内の強い勧めにより、神通が持ち帰ることとなった。


 那珂は数回提督とカリキュラムの調整内容を話し合い、大体望みの形を見出した。しかしそれをそのまま実行に移せるわけではない。最終的には、川内と神通の身体的な確認が必要になるからであった。
 夏休み初日、まだ7月後半とはいえすでに夏真っ盛りの気候のため暑い。熱中症にも気を張らなくてはいけないため、その日は夕方まで川内たちには教科書を読ませることにし、那珂は16時を過ぎたあたりで一旦一人で外に行った。気候を確認した後再び執務室に行きソファーで寝っ転がって教科書を読んでいる川内・きちんと座って読んでいる神通の両人に向かってこれからの予定を伝えた。

「さて、二人とも。外はだいぶ暑さが和らいできたから訓練始めるよ、いい?」
「はい!待ってました!」
「……わかりました。」

「とはいってもね、今日はカリキュラムの内容にいきなり入るんじゃなくて、二人の体力測定みたいなことをしたいと思います。ここまではいいかな?」
「体力測定ですか。まぁあたしはいいけど、神通は運動苦手なんでしょ?」
「……苦手というか……体力が心配です。」
 川内の口ぶりは余裕を持っていて軽いが、神通は語尾を濁す。

「そんなだから、いきなり艤装装備してやるんじゃなくて二人の限界を知りたいの。それによってはカリキュラムをまた調整しなくちゃいけないから。二人に無理のないカリキュラムにするために、今日はこれだけ頑張って、ね?」
「「はい。」」
「それから提督。」
「ん、なんだ?」
「あたしだけだと絶対偏った見方になっちゃうから、提督も二人の様子を見て欲しいの。前に提督があたしのこと見てくれたように、二人の身体能力を計るのを助けて欲しいの。お願い?」
「あぁ。わかったよ。」
 提督の返事を聞いて那珂は提督に向かって無言でコクリと頷いた。


--

 16時すぎ。気分的には夕方だが、夏のこの時期晴れていれば普通に明るく、まだまだ日中という感覚だ。
 気候としては太陽がわずかに落ちてきているため暑さは13〜15時ほどではなくなっている。とはいえまだ暑いことには変わりはないため、川内と神通を外に連れてきた那珂は二人に無理をさせるつもりはなかった。
 4人が出てきたのは本館裏手、つまりは本館と海岸の間にあるグラウンドだ。一般的な鎮守府よりも狭いとはいえ、都心ど真ん中の学校によくありそうな小さめのグラウンドと同じくらいの広さは確保されている。

「体力測定って言っても、具体的にはどんなことするんすか?」
 両手を頭の後ろで組んで歩いていた川内が開口一番質問をした。
「んーとね。あまり複雑なことやってもあたしも提督も計れないから、わかりやすいところでは、ぐるっと何周かするのと、反復横跳びとか、腕立て伏せくらい? てきとーで悪いけど、それらをできるところまで。」
「はい。わかりました。」
「……うぅ。はい。」
 ケロッとした返事をする川内と、かなり嫌そうな表情で返事をする神通。違いは明白だった。
「それじゃ最初はグルっと5周くらいしてみて。携帯でタイム計るから。」
「了解で〜す。」
「……はい。」

 那珂と提督はそれぞれ携帯電話を出し、川内と神通のラップタイムを計り始めた。
 軽快に走る川内。それを追うように走る神通。川内の走る姿は綺麗なフォームで陸上部の部員さながらの姿であった。一方の神通は明らかに運動苦手そうな少女の女の子走りになっており、川内とはすぐに差がつきはじめた。
 川内が5周走り終わる頃には、神通はまだあと2周残っているという状況になっていた。

「はい!川内ちゃんゴール!」
「ふぅ。タイムはどれくらいですか?」
 わずかに息を荒く吐きながら川内が那珂に近寄る。
「これくらいだよ。」
「うーん。この前の体育の時より落ちてるなぁ。」
「アハハ。まぁここは学校のグラウンドとは大きさも地面の質も違うから一概に言えないと思うけどね。でも早いね〜川内ちゃん。マラソンやったらあたしより早いんじゃない?」
「え、そうなんですか?那珂さんは運動って……」
「あたしもそれなりに得意だけど、持久力は川内ちゃんに負けちゃうかもなぁ〜」
 アハハと笑いながら川内のタイムと能力を褒める那珂。川内はこの完璧超人の生徒会長に勝てる要素があることを誇らしく感じた。

 那珂と川内が自身の体育のことについて話している間、神通はまだ走っている。速度が落ち、どう見ても体力の限界の様子が伺える。
「なぁ那珂。神通やめさせたほうがいいんじゃないか?ヘロヘロになってるぞあれ。」
 神通のタイムを計っている提督は神通を見て途端に不安になったことを那珂に漏らす。
「あと少しなんだし、彼女がもう限界って言うまでは続けます。そしたら休ませます。」
「うわぁ……那珂さん厳しいなぁ〜。」川内は顔を歪めて言った。

 そののち神通は本気で限界を感じたのか、最後の1周の半分まで来たところで、バタリと倒れこみ、力を振り絞って手を掲げて"限界"という意思表示をした。さすがに本人から死にそうな意思表示を掲げられては続ける気が失せてしまった那珂はそこで測定を中断した。
 駆け寄った3人は神通の状態を確認する。熱中症の類の心配はなさそうだが、かなり息があがっていてつらそうな雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。

「ロビーは冷房が効いてるから、そこで休ませよう。俺が運ぶよ。」
 そう言って提督は神通を正面から抱えて抱き上げた。いわゆるお姫様抱っこ状態である。普段であれば抱き上げられた時点で神通は顔を真赤にさせて慌てふためいてもおかしくないところだが、その時彼女はそんな気力すら残っていない状態であったため、おとなしく提督に抱きかかえられてロビーの端にある長めのソファーに横たえられた。代わりに内心慌てふためいて身悶えして恥ずかしがったのは那珂だった。表向きは努めて冷静を装い、提督に抱きかかえられてロビーに運ばれる後輩の姿を眺めるだけだったが。
 川内は那珂の指示で執務室に一足先に戻り、置いてきたスポーツドリンクを持ってきて神通の口に運んで飲ませる役目を担った。