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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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 数分してようやく話せるくらいにまで回復した神通。そんな彼女の手を取って那珂は一言謝る。
「ゴメンね。無理させちゃって。でもこれで今後の訓練では、神通ちゃんには無理の無い範囲でやれるカリキュラムを立てられるよ。だから、今日は我慢して限界まで走ってくれてありがとね。」
 那珂の優しい言葉に、神通は返した。
「あの……私、まだやれます。」
 神通の言葉に那珂はチラッと提督を見て目配せをした後、神通に向かって頭を振った。
「無理しなくていいよ。あたしは二人の限界が知りたかっただけだから。」
「ゴメン……なさい。私、足手まといにならないように、体力つけます。」
 まだ完全に復活していない呼吸を整えながら神通は自身の思いを口にした。

「もう〜神通ちゃんは頑張り屋さん!負けず嫌いなところあるのかなぁ?もう〜可愛いなぁ〜!」
「あ、熱い……です、那珂さ…ん。」
 思わず神通をヒシッと抱きしめつつ、さりげなく的確に評価をする那珂。ムギューっと抱きしめられた神通は那珂を振りほどこうと弱々しく身を捩るが、結局人肌の熱さは取れなかった。


--

 神通が立ち上がって普通に歩けるくらいに回復した頃には、17時にあと数分で届く頃になっていた。

「えーと、体力測定なんだけど、まぁ、なんとなくわかりました。ホントはこのあと反復横跳びとかしてもらおうと思ったんだけど、状況が状況なのでやめておきます。神通ちゃんダイジョブ?」
 那珂の言葉のあと、神通はコクリと頷いた。

「あのー、あたしはまだまだやれますよ。足りないくらいです。」
 まだ元気いっぱいとばかりにガッツポーズをする川内。事実、彼女はまだ体力があり余っていた。そんな彼女の様子を見た那珂は俯いて考えたのち、こう彼女に伝えた。
「それじゃあ川内ちゃんだけ今日は続きね。神通ちゃんはあたしたちと一緒に川内ちゃんのこと見てよっか。」

 川内と神通は頷き、川内は再びグラウンドへ、神通は那珂に付き従う形で彼女の向かう方向へついていった。提督は那珂たちからやや離れた距離を保ってグラウンドに出た。
 その後、川内はもう5周し、その後反復横跳び100回、腕立て伏せ12回をこなしたところでようやくヘトヘトになって座り込んだ。これといって特定の運動部に所属していないがこれだけこなした川内。そんな彼女に対して、那珂は心のなかでこう思った。

((体力面はまったく問題なし。むしろあたしを超えそうで頼もしいな。もしかして……脳筋だったりするのかな?))
 甚だ失礼かもしれないと思い、口には一切出さなかった。


「はぁ……はぁ……。さ、さすがにヘトヘトだわ。提督! あたしのタオルと飲み物取ってきて〜。」
「はいはい。っていうか俺、一応君たちの上司なんだけどな。」
「気にしないでいいよ!」
「それは俺のセリフだわ!」
 提督は一応文句を言うが本気で嫌というわけではない。ロビーに置いてきた3人分のタオルと飲み物をまとめて持ってきた提督は川内に確認する。

「ほら。どれが川内のだ?」
「ん〜? あ、それとそれ。」
 川内はスクっと立ち上がって小走りで提督に近づき、彼が持っていたタオルとペットボトルのうち自分のものをサッと抜き取り、まだ提督の手に引っかかっているタオルで自らの顔を拭い始めた。
 提督は自分の手に引っかかったタオルが引っ張られ、川内が顔を思い切り近づけてきたのにドキリとした。川内は提督の反応なぞ気にせず汗を拭う。ミディアムな長さの髪が頭を振って拭う仕草に合わせて揺れる。激しい運動後のため、否が応でも汗の匂いがダイレクトに周囲、至近距離に伝わる。
 生活が生活なら女子高生とこんなに接近したり親しげに会話することなぞありえなかった三十路の西脇提督は年甲斐もなく中学生のように照れ、その照れ隠しに軽口を叩く。
「あー、人の手元にまだあるのに近くで拭くな。全部抜いてから拭け。汗臭いな。」
「そっか。アハハ!ゴメンゴメン。」
 提督の軽口を特に気に留めず素直に謝る川内。その口ぶりは人の評価など一切気にしていないのがよく分かる軽快さそのものだ。

「ちょーっと提督!女の子に臭いとか汚いとか言ったらダメだよぉ!デリカシーなさすぎ!」
 何気なく提督と川内のやりとりを見てた那珂は二人のその言い方と態度が気になり、二人に割り込んで入るように身体を近づけて注意しはじめた。たじろぐ提督を最後まで見ずに今度は川内の方を振り向いて叱る。

「あと川内ちゃん。女の子なんだから、丁寧に受け取って人の迷惑にならない距離でそういうケアしなさい!」
「え〜別にいいじゃないですか〜。」
「ダーメ!艦娘はうちの学校の生徒だけじゃなくていろんな人が集まるんだから、今のうちにうちの学校代表として恥ずかしくない振る舞いをしてよね?」

「はーい。善処しまーす。」
「はは、厳しい先輩だな、川内。」
 気怠い返事を返す川内を茶化す提督。その瞬間那珂は提督にキッと鋭い視線を送る。
「……っと。俺も気をつけます。」
 その視線がかなり真面目なモードだったので提督は本気で驚いて謝った。

--

 二人から返事を聞くと那珂は2〜3歩離れてしゃべる。
「はい、よろしい。それじゃあみんな、ロビーに戻りましょ。川内ちゃんお疲れ様でした!」
「はーい。汗かいちゃったしシャワー浴びたいなぁ〜。」
「……私もです。」
 那珂のすぐ後ろに来ていた神通も川内と同じ意見を呟く。

「ねぇ那珂さん。シャワーってどこにあります?」
 ロビーから執務室に戻る途中で川内が尋ねる。その質問には提督が答えた。
「すまん。シャワー設備はないんだ。」

「えーー!? じゃあ那珂さんや村雨さんたちはどうしてたの!?」
「駅の向こうのスーパー銭湯行ってたよ。」
「えーー。ちょっと面倒だなぁ」
 そう言いながら汗ばんだ感触が気持ち悪いのか、艦娘の制服の胸元の生地をパタパタ揺らして空気を通し、涼みながら川内は文句を言う。彼女の気持ちを十分理解しているのか、那珂は同意した。

「確かにそうだよねぇ。せめてシャワー室1つは欲しいよねぇ〜。チラッ?」
 言葉の最後はわざとらしく効果音を口で発して提督に視線を送った。那珂は先頭を歩いていたため、振り返って送った彼女の視線の先に川内と神通の二人はすぐにその意図に気がついた。