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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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「さて、二人ともお昼終わったし、今度こそ提督のところ行こ?」
「……はい。」
 今回は神通も気になることは解消されたので川内に全面的に賛同した。ゴミを片付け待機室を後にし二人が執務室の前に行くと、ちょうど提督が扉を開けて出てきたところだった。
「おぉ!?二人とも。来てたのか。」

「はい。こんにちは提督。」
「……こんにちは。」
「あぁ、こんにちは。えーっと、那珂は?」
 挨拶をして真っ先に那珂のことを聞く提督。それに対しては川内が説明をした。
「なみえさんは生徒会の仕事が忙しくて多分来られないと思います。あたしたち、初出勤ということで二人だけで来てみたんです。」
「そうか。君たちは訓練前だし任務も何もないから、適当にゆっくりしていってくれ。」

「ねぇ、あたしたちの訓練は?」
 川内は気になっていたことを聞いた。川内から訓練を催促された形になり提督は頭をポリポリかきながら戸惑いつつも答えた。
「まだ二人に言えるほどスケジュールできてないんだ。本当は監督役の那珂が来たら打ち合わせしようかと思ってたんだけど……仕方ないからあとで俺の方から連絡してみるつもりだ。だから、訓練の説明は後日ってことで。」

「な〜んだ。つまんないの。」
「……川内さん。その言い方は……。」
「だってホントだし。これじゃ初出勤で来ても何にもすることないから来た意味ないじゃん。」

 不満たらたらで愚痴を漏らす川内と、それを注意して抑える神通。
 提督はその様子を見て、二人の人となりが少し分かった気がして微笑ましく思った。が、やることがないと言われると心苦しくなる。訓練を受けさせてない以上はうかつに同調させるわけにも、戦闘訓練として演習を勧めるわけにも行かない。艦娘名を名乗っているだけのまだ一般人同然の女子高生二人なのが、目の前の川内と神通なのだ。
 何か話題を振らなければと考える提督。すると川内が先に口を開いた。

「ねぇ提督。これから何するところだったの?」
「ん? これからお昼買いに行こうと思ってたんだ。そうだ!二人とも良かったら一緒に行かないか?」
 提督のせっかくの誘いだったのが、二人はバツが悪そうな表情をする。
「ゴメンね。あたしたちついさっき食べたばかりなんだ。」
 なんともタイミングが悪い3人であった。

「じゃあ俺お昼買ってくるから、二人ともよかったら執務室にある本でも読んでてくれよ。艦娘や深海凄艦に関する資料が揃ってるから、訓練を始める前の予習ってことでさ。」
 提督がそう提案すると、二者二様の反応を目の前の女子高生は見せた。
「え〜〜!あたし本読むの苦手なんだけどなぁ。」
「本……あるんですか!?私、それ読みたいです。」

 面倒臭がる川内と、本と聞いてやる気を見せる神通。提督はその様子を見てまた一つ、二人の人となりがわかってきた気がした。
「うんまあ、あとは適当に任せる。俺が帰ってくるまで留守番しててくれ、な?」
「はーい。いってらっしゃーい。」
「(コクリ)」


 川内と神通は昼食を買いに行く提督を見送ると、すぐに執務室に入った。執務室には当然誰もいない。
 秘書艦席は机の上が綺麗に片付けられており清潔感が溢れている。デスクカバーの中には海をモチーフにした絵が挟まれていた。そして一輪の花が小さな花瓶に刺してある。秘書艦は五月雨だということを思い出した二人はそれが彼女の趣味なのかと想像する。
 秘書艦席の後ろには3個ほど本棚がある。とはいっても全棚が本で埋まっているわけではなく、隙間がまばらにある。あとは荷物入れの棚やロッカーがあった。
 次に二人が提督の執務席に目を向けると、そこには机の上にノートPCと書類が何枚か、そして机の脇には筆記用具や文房具を入れると思われる小棚があった。他には趣味と思われるペットボトルのおまけのフィギュアがいくつか並べられている。配置が縦一列や横一列ではなく、意味ありげな配置になっていた。秘書艦席とは違いやや雑多だが西脇提督の人となりがわかる、整えられた机だ。

「あ、このフィギュア、あたし一個持ってる。提督も集めてるんだ〜。」
「……川内さん、知ってるの?」
「うん。コンビニでこれ見たことない?今キャンペーンやってるんだよ。」
 川内の説明を聞くがさほど興味がない神通は適当に相槌を打って返事をするのみにした。

 提督の執務席の後ろにはガラス張りの戸が付けられた、本棚くらいの背の高い棚がある。そこには西脇提督が写った写真や五月雨が写った写真、二人が写った写真が写真立てに飾られていた。他にはこの鎮守府、正式名称の書かれたブロンズの盾が静かに鈍い光をたたえ、公文書と思われる書面が埋め込まれている。

"208x年1月8日 ○○県○○市○○区○○設置
 深海凄艦対策局オヨビ艤装装着者管理署千葉○○支局・支部 以下ヲ命ズル
  ア 深海棲艦(ソノ他類推サレル不明海洋害獣生物)ノ駆除
  イ “ア” ニ対応スル人員(以下、艤装装着者)ノ採用・教育・訓練
  ウ “イ”ノ艤装装着者ノ教育
  エ ・・・
  ・・・・・・

 防衛省 深海凄艦対策局オヨビ艤装装着者管理署統括部 部長(局長) ○○○○ 
 防衛省 艤装装着者統括部 部長 ○○○○
 防衛大臣 ○○○○
 総務省 艤装装着者生活支援部 部長 ○○○○
 厚生労働省 艤装装着者生活支援部 部長 ○○○○"

 仰々しく記された文面を見てゴクリと唾を飲み込んで圧倒される二人。
「なんかこういうの見ると、あたしたちすんごい組織に入ったんだなって実感湧くねぇ。」
「……はい。不思議な感じです。」

「あとこの隣の写真さ、提督すんごい硬い表情、おっかしぃ〜!」
 数人の男性と一緒に写っている提督の写真を見た川内はプッと笑い始める。それがどういう集まりの写真なのかは二人にはわからなかったが、少なくともこの艦娘制度に関する人たちの集まりなのだろうと察した。
「あ、これ提督と五月雨ちゃんが写ってる。お?五月雨ちゃん中学校の制服着てるー。この姿見たことないから新鮮だな〜。」
「これ、本館の正門のところでしょうか?」
「そう言われるとそうだねぇ。でも本館まだ変な柵っていうか網がかかってる。工事中だったのかな?」
 提督と五月雨が写った写真は、鎮守府Aの本館の正門の前で撮られたものであった。神通が写真の日付を見ると、前年の12月20日とある。さきほどのブロンズの盾よりも前の日にちになっていた。