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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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「人に歴史あり、ですね……。」
「ん?」
「いえ、私達の知らない、人の歴史を見るのって、面白いと……思ったんです。」
「ん〜。そう言われると確かにね。この二人まだ固い表情してるから、きっと出会ったばかりの頃だったんだろうねぇ。会社員と中学生、不思議な組み合わせ〜。」

 提督と五月雨が写った写真などを見てあれやこれやと想像しながらおしゃべりをする川内と神通。提督がいないのをいいことに、本よりも執務室にある様々なものを興味津々で見て回っている。川内と神通の二人は、本よりもむしろ部屋の中のものを見て回るのが、共通して楽しめることだったのでノリノリなのであった。

 ひと通り見て回った川内と神通は最後にソファーに座り、入り口付近に立てかけてある壁掛けタイプのテレビに注目した。
 この時代のテレビは、かつて存在したようなブラウン管や液晶一体型の機器そのものではなく、専用のスクリーン用のシートおよび好みの壁の四隅に取り付けてその四隅の中に映像を映しだすという、超小型の機器(群)になっている。機器の投影範囲には性能差があり、執務室にあるテレビ(の装置)の間隔は長辺が140cmあった。2020年代に革新的な形式の製品が発表され、それから2030年代にもなると、スクリーン一体型のテレビは一気に廃れてサイズ拡大競争もリセットされ、テレビは進化をやり直していた。流留たちの時代ではこの形こそがテレビという常識である。執務室にあるサイズのテレビは大きい(幅)でも圧倒的な美麗さで大抵の材質の壁でも綺麗に映る高性能タイプだった。

 なんとなくテレビをつける川内。月曜日のお昼すぎ、テレビ番組は特に興味を引くものは放送していない。チャンネルをを切り替えてみると、ちょうど映画が放送されていたので二人はそのまま映画を見ることにした。


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 しばらくすると提督が手に袋を下げて執務室に戻ってきた。
「お、なんだ。テレビ見てたのか。」
「うん。見たらダメだった?」と川内。

「いや、別に構わないよ。それと……はい。二人にジュースとお菓子。好み知らないから適当だけどいいかな?」
「やったぁ!ありがとー提督!!」
「……ありがとうございます。わざわざ。」
「いいっていいって。今日は退屈させちゃって悪いからさ、せめてお詫びにってことで。」

 提督は袋をさげたままソファーの間のテーブルの前に立ち、二人のために買ってきたジュースとお菓子を取り出して渡した。川内がそれとなくチラリと袋を見ると、その中には焼肉弁当と執務席の机の上にあったペットボトルの蓋のフィギュアがおまけに付いたお茶が入っていた。
「あ〜提督。それまた買ってきたんだ。集めてるの?」
「気づいたのかい。うん、なんとなく集めてるんだ。川内も?」
「あたしも一個持ってるよ。けど今回のキャンペーンは好きなキャラいないからパス。」
「そうか。俺はこの作品好きだからなぁ〜」
「それじゃさ!この前のコラボにあった作品は……」

 話がノリだした川内は提督とフィギュアの話からそのコラボ作品のアニメの話に移った。提督は執務席に戻り弁当を開けて食べ始め、会話相手の川内はソファーに座りながら提督の方を見て話を再開した。提督はウンウンと相槌を打ち、時々自ら話を振って川内の話を盛り上げる。

 神通はその話についていけないので黙って見ているだけである。ただ彼女が感じたのは、その様子がさきほど川内が打ち明けた提督への思いが実行に移されている、ということであった。
 あまり深く物事を考えないであろう川内は本当にただなんとなく、話題のキーとなるおまけ製品を見つけたから話し始めただけなのだろう。
 意図せず自分の望んだ通りの展開をできていることを羨ましく思い、いつか自分もそういう会話を艦娘の誰かと楽しみたい、そう願う神通であった。


 提督はひと通り食べ終わり、片付けをした後二人に対して話しかけた。
「そういえば何か本は読んだかな?」
「え?あ〜うん。ま〜色々見させてもらったよ。色々と。」
「えっと……あの、見させてもらいました。さ、参考に……なりました。」

 二人は焦りつつも答える。提督は特に深く尋ねる必要もないだろうと感じそれ以上話を広めるつもりなく、言葉を続ける。
「そうか。いずれもっと関連資料集めて図書室作るつもりだから、もし本好きなら協力してほしいな。その時はよろしく頼むよ。」
「「はい。」」

 提督の何気ない将来の希望に、元気よく返事をして答える二人。その後川内と神通は提督から艦娘制度のことについて簡単に説明を受けたり、提督の労をねぎらうつもりで雑談などをして過ごし、16時前には鎮守府から帰っていった。