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59 1917年早春の試練

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その日のユリウスは体調がすぐれなかった。身体が泥のように重く、力がどうにも入らない。そして少しの熱っぽさ。
― 風邪かな?
それでも主婦はそんな事で休養していられないのが常である。何とか身体を動かして、朝食の支度をし、ミーチャに朝食を摂らせる。
アレクセイはこのところずっと事務所に籠りきりで、数日アパートを留守にしていた。

「ミーチャ、これも食べなさい」
ユリウスは自分の分のパンとベーコン、卵をミーチャの皿へ移す。

「母さんは?…いいよ。お腹空いちゃうよ?」
なけなしの食糧を譲られたミーチャが心配そうに母親を見る。

「いいの…。母さん、今日はちょっと食欲がないから…。ね、食べて」

「いいの?」

「いいよ」

母親のやや青白い顔を見て少し躊躇したものの、育ち盛りのミーチャは母親から譲られた目の前に盛られたパンとベーコンと卵を我慢できず、それらに手を付けた。
そんな息子をユリウスは紅茶の入ったカップを片手に笑顔で見守っていた。

「じゃあ母さん、行ってきます」

「ちゃんと勉強してくるんだよ。クリモア神父によろしく」

玄関でキスを交わしてユリウスはいつの間にか自分とほぼ同じぐらいの背丈に成長した息子を送り出した。

この朝の抱擁とキスを最後に、この母子が実に半年以上も引き離されることになるとは―、その時はユリウスも、そしてミーチャも想像だにしていなかった。

作品名:59 1917年早春の試練 作家名:orangelatte