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Lovin' you after CCA4

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「あのね。ライラ、弟か妹が欲しいってお願いしたの」
ライラの言葉に目を見開き、言葉が出ない。
そんなシャアに気付かず、ライラが話を進める。
「でもね。お母さん、凄く困った顔して、ゴメンって謝ったの。」
アムロのその時の心情を思い、シャアは胸が締め付けられる。
アムロ自身が妊娠のリスクを誰よりも分かっていた。娘の願いを叶えてやれない事にきっと胸を痛めただろう。
「ライラが泣いてお願いしたら、お母さん、分かったって、約束するって言ってくれたの。」
本来なら願いを受け入れて貰い、喜ぶところだが、ライラが悲しい顔をする。
「でも…、ライラの所為でお父さんとお母さんは喧嘩をしちゃったんだよね?ライラ、いけない事お願いしちゃったのかな?ライラどうしたらいい?お父さんにゴメンなさいしたらいい?」
涙を浮かべて縋り付く娘をギュッと抱きしめる。
「お父さぁん」
肩を震わせて泣く娘に、シャアは自分の罪を心から悔いる。自分が馬鹿な事をしなければアムロがあんな無茶をする事は無かった。そして、何も知らない娘を泣かせる事も無かった。
「ライラ…、すまない。お前は何も悪くない。全ては私の所為だ…。だからお前が気にする事は何も無い。」
ライラを抱きしめていると、部屋の隅にカイルの気配を感じる。
シャアはカイルを呼び寄せると、ライラとは反対側に寝かせ、両手で抱えるように2人を抱きしめる。
「カイル、ライラ。今、お母さんのお腹には赤ちゃんがいる。それも双子だ。お母さんは少し体調を崩していて、子供を産むのがとても大変なんだ。」
その言葉にライラがビクリと肩を揺らす。シャアはその肩をトントンと優しく叩く。
「でも、お母さんは頑張って赤ちゃんを産んでくれるって言うんだ。今までお母さんは私たちを一生懸命支えてくれた。だから今度は私たちがお母さんが元気な赤ちゃんを産めるように一緒に支えていこう。」
シャアは2人をギュッと抱きしめると、2人に尋ねる。
「お父さんと一緒にお母さんを支えてくれるかい?」
「「うん」」
力強く答える2人の額にそっとキスを送ると、その夜は3人で寄り添って眠りに落ちた。

『アムロ…。私はもう1人では無いのだな。君が私に家族をくれた。新しい家族の為にも私がしっかりせねばな…』

数日後、検査の結果、リスクを伴う事は変わらないが中絶はせずに出産に向けて準備をしてゆこうという事になった。
「シャア…、我が儘を言ってゴメン。」
ソファに並んで座り、謝るアムロの肩をそっと抱く。
「君は愛する娘の願いを叶えたいのだろう?ならばそれは私の願いでもある。一緒に頑張ろう」
その言葉に、アムロはシャアにしがみつくと、泣きながら「ゴメン、ありがとう」と囁く。
「しかし、アムロ…。出来ることならば私に相談して欲しかった。前にも言ったが、何でも1人で抱え込むのは君の悪い癖だ。」
「ゴメンなさい…」
「次からは必ず相談してくれ。私たちは夫婦なのだから…」
そして、アムロの手が震えている事に気付く。
「アムロ?」
「…シャア…、貴方に縋って…いい?」
涙を浮かべてアムロがシャアを見上げる。
「本当は…凄く怖い…。」
「アムロ!」
「貴方や…子供達を置いて死ぬかもしれない…そう思うと震えが止まらないんだ…」
シャアは震えるアムロをかき抱く。
「でも…、決めたから。産むって決めたから…。だから…、私を支えてて!シャア…、お願い!」
「もちろんだ!何があっても君を支えよう!私が君を守ってみせる!」
その言葉にアムロが涙を零しながら微笑む。
「君ならば絶対に大丈夫だ!君はあの1年戦争も生き延びてきたじゃ無いか!その君が死ぬわけがない!」
「うん、うん。ありがとう…シャア。愛してる。」
「ああ、私もだ。君を心から愛してる。私には君だけだ。君だけが私の望む全てだ!」
2人は見つめ合うと、どちらともなく唇を重ねる。深く、深く、互いに想いを伝え合うように…。


そして、数ヶ月が経ち、出産予定日まであと数日という頃、執務中のシャアの元にセイラから連絡が入る。
『兄さん、アムロが破水したわ。これから出産に入ります。来られて?』
「分かった!直ぐ行く!」
シャアは側で控えるナナイに視線を向けると、「後は頼む」と告げ、足早に執務室を後にする。
残されたナナイは、祈るように手を組み、空を見上げた。

「アルテイシア!アムロは?」
病院に着くなり、シャアを待っていたセイラに詰め寄る。
「大分陣痛の間隔が狭まっているわ。そろそろ分娩室に入る頃よ。こちらへ。」
「分かった。」
セイラはシャアを伴い廊下を進む。そして、ふと立ち止まるとシャアに振り向く。
「少し…心音に乱れがあるわ…。最善を尽くすけれど、覚悟はしておいて。」
「なっ!」
「もしもの時の為の助けも呼んであるわ。兄さんはとにかく、アムロを側で支えてあげてちょうだい。」
シャアは動揺のあまり、セイラの言葉が頭に入ってこない。
「アムロ…」
立ち止まり、動揺するシャアの頬をセイラが思いっきりひっぱたく。
「兄さん!!しっかりなさい!アムロが頑張っているのよ!兄さんがそんな事でどうするの!?」
セイラのその勢いに、シャアは正気を取り戻すと、前を見据えて小さく深呼吸をする。
「すまない。アルテイシア。大丈夫だ、行こう。」
セイラはそんな兄を見つめて小さく頷くと、目的の場所へと足を進めた。

分娩室では、アムロが荒い息を吐きながら痛みに耐える。
「アムロ、よし。頭が見えたよ。もう少しだ。」
アルの言葉にアムロが頷く。
「アムロ!!」
そこにシャアが飛び込んでくる。
「シャ…ア…」
荒い息の中、アムロがホッとした笑顔をシャアに向ける。
「んっんん」
一層強い陣痛が訪れ、アムロがいきむ。
シャアは、分別台のグリップを強く握るアムロの手を上から包むように握りしめる。
そして、ゆっくりと小さな赤ん坊がアムロのお腹から出てくる。
それをアルが受け止めると、赤ん坊は力強く泣き声を上げた。
アルはへその緒を切ると、赤ん坊をアムロの顔の側に連れて行く。
「アムロ、総帥。おめでとうございます。男の子ですよ」
赤ん坊はシャアと同じ金髪の男の子だった。
アムロは薄っすらと瞳を開くと赤ん坊を見つめて微笑む。そして、シャアに視線を向ける。
「ふふ。貴方と同じ髪の色だね。」
「ああ、そうだな。」
シャアも慈しむような瞳を赤ん坊とアムロに向ける。
すると、またアムロが痛みに顔をしかめる。
「次の陣痛が始まった。この子は一旦預かるよ。」
アルは優しくアムロに言うと、赤ん坊を看護師に預ける。
そして、バイタルを表示するモニターを見つめて、眉を寄せる。
『心拍が不安定だ…血圧も低い。もう1人…頑張れるか!?』
アルの不安を感じ取ったアムロがアルに触れる。
「大丈夫、…頑張れるよ」
アルは頷くとシャアを見つめる。
「総帥、アムロを支えて下さい。」
「分かった!」
1人目の出産から20分程が経ち、また強い陣痛がアムロを襲う。
「あっ、う、んんん」
「アムロ!」
シャアがアムロの名を呼び、その手を握りしめる。
そして、アムロが荒い息を吐きながら2人目を出産した。
「アムロ!!」
作品名:Lovin' you after CCA4 作家名:koyuho