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70 ~Requiem 1917年9月1日

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レオニードから託された最後の用事を終えユスーポフ邸へ戻って来たロストフスキーが目にしたのは―、涙にくれる使用人たちと、憔悴した表情で書斎から出て来た執事の姿だった。

― あぁ…やはり。

ロストフスキーは、主の自害を悟った。

「執事さん…」

ロストフスキーに声を掛けられた執事が、レオニードの最期を報告する。

「若様は…ご立派な最期でした。それで…」

執事がそれからの事をロストフスキーに―、このユスーポフ家に代々仕えていた忠臣中の忠臣にこの先の事を切り出した。

― ロストフスキーさんは、先代の…お父様からお聞きしておりますな?ユスーポフ家の秘密の霊廟の事を。

執事が切り出したその話にロストフスキーが頷いて、シャツの下にかけていた鎖を取り出して見せた。

―そこには―、一本の鍵が通されていた。

その鍵を示された執事も無言で頷いた。

― その霊廟は、この屋敷の当主の書斎にある隠し扉から入って地下奥深くにございます。尚その鍵は代々ロストフスキー家当主、そう、今はあなた様しか所持していないものでありますので…つまり、一度隠し扉の中に入って中から鍵を掛けたら…外からは二度と開けられない…そういう部屋です。

執事の説明にロストフスキーが微かな笑顔を浮かべて頷いた。

「もうすぐ、ソヴィエトの奴らがこの屋敷に来るでしょう…。急ぎましょう。執事さん」

執事に急ぐよう促したロストフスキーのその表情は、安らかで凪いだ海のように穏やかだった。