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銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅰ

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ユキが出勤したあと進はすることもなくぼんやりと外を眺めていた。

  「静かだなぁ…」

18階のバルコニーからは海が見えて英雄の丘も見える。沖田艦長を見下ろすような感じで"余りよろしくないかも"と思ったが部屋から海が見える環境に進はホッとしている自分に気付く。三浦にあった自宅の前は海で後ろは山だった。自然保護区だった三浦。夏はよく海水浴をした。

  「水着のまま家を出ても大丈夫だったからな。今思うとすごい贅沢な事だったんだな。」

地球の海は再生できたが真水に近い海。干からびた地上で僅かに残っていた塩が地上に溶け出しすこしずつ塩分のある海になりつつある。淡水魚を河口付近に放流する実験が行われると聞いた。。

  「見た目は元通りだがまだまだだな。」

そして遊星爆弾が落ちてくる前に戻そうと戻ろうと必死になっている時にまた新たな脅威にさらされないとも限らない…。進の脳裏にあの宇宙空間に浮かぶ巨大な宇宙要塞(ゴルバ)が蘇る。地球の戦艦と分かったはずだ…きっと何かしら攻撃を加えてくるだろう。それをあの無人艦隊で迎え撃つことができるのだろうか…

圧倒的な科学力だと進は思う。あのデスラー砲が通じなかったのだから…



進はふと真田の顔を思い浮かべた。進がそう思っているぐらいだから真田はきっともっと先をみて新しい火器を試作しているだろう。デスラー砲のエネルギーはガミラシウム。イスカンダルにあったイスカンダリウムと同じ成分のもの。スターシアの妹が乗った宇宙船のエネルギーはイスカンダリウムでそれを擬したエンジンをヤマトに搭載。それを"波動エンジン"と名付けたのは真田だ。

嫌な性格だと進は思う。今が平和ならそれを喜び楽しめばいいのにどうしても未来の見えない不安を漠然と考えてしまう…しかしその漠然とした不安が今まで的中しているので仕方ないとも思えるが…

白色彗星が来た時は悪夢を見続けた。そしてテレサからの通信…と同時に未確認飛行物体から攻撃された事…。あの時は何も分からなかったが今回は違う。敵はあの時"地球の戦艦"と認識しているのだ。報復に来ても不思議はない。


進は何を考えても出口が見えないので気分転換に出かけることにした。









  「古代はひとりで留守番か?」(藤堂)
  「はい。かなり疲れている様子でした。飛びっぱなしで一週間ですから。飛ぶ時間は
   決まっているとは言え危ない空間をあえて飛ぶので神経使うみたいです。
   長官、古代艇長と一緒に乗っている相原通信士の提案で"シームレス艇"をと話が
   ありました。シームレスならレーダーに探知されにくいのでと。次回の会議に
   かけていただけませんか?シームレスで作成した場合の予算を作りそれを大量生産
   した場合の予算と既存のパトロール艇を作成した場合の予算、現場のリスクを
   相対的に比べれば断然シームレスの方がクルーの安全面から考えるとそちらを
   推したほうがいいと思います。」

ユキが相原の提案を藤堂に話す。本当は真田に声かけしようと思ったが真田は特別任務中で地球外にいる。

  「…なるほど。やはり現場の声は大切だな。その案件ユキに任せていいか?」(藤堂)
  「お任せ頂けるのであればすぐに。」

ユキの頭の中はすでにどうやって誰に話をするか計算が始まっている。

  「まず誰に相談するつもりだ?」(藤堂)
  「本当は真田さんにと思ったのですが特別任務中ですし…少しフライングしちゃい
   ますが南部くんのお父様を頼ろうかと。パトロール艇をモデルにシームレス化した
   場合の見積りを作成してもらおうと思います。」(ユキ)
  「ははは、かなりフライングだな。でも使える伝手は大事にしないとな。」

ユキは藤堂の了解を得てを長官室を辞した