銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅰ
「おじゃましま~っす!」×5人
ふたりの官舎にメインクルーがやってきた。なぜか招待された側が大きな荷物を運んでいるアンドロイドを従えている。
「南部くん、太田くんありがとう。」
アンドロイドを真っ先に家の中に通すとあらかじめプログラミングされているので手際よくテーブルに食材を並べる。ユキはお皿を並べることだけに徹している。南部は南部ホテルからデリバリーを、太田は差し入れを持ってきていた。
「今日は忙しいところお越しいただきありがとうございます。」
進がいつもよりテレながらワングラスを持って挨拶した。そのワインは山崎の差し入れだ。
「一週間後、それぞれの任務も動き出すのでその前に新居を見てもらいたく時間を作って
もらいました。南部にはデリバリー頼んじゃって悪かったな。太田も差し入れ
ありがとう。山崎さんもワインありがとうございます。食事が足りなければまた
頼むので今日は無制限で飲み食いしてください。」
進の挨拶が済むと南部が「かんぱ~い!」と声をかけてワインに口を付け食事を始めた。真田はいないがメインクルーが揃い進とユキの関係の進展があったことを喜ぶ。婚約はしたものの結婚自体は足踏み状態。そこへ軍容認の事実婚生活が始まるとあって誰もが喜びを隠さずに招待を受けたのだった。
「部屋見てきていいか?」
一番遠慮のない島がワイングラスを置いてソファーから立ち上がる。
「あ?どうぞご自由に。ただしクローゼットとか引き出し開けるなよな!
大したもの置いてないけど見られちゃ困るものもあるから!」(進)
「わかったよ、ユキの下着がありそうなところは開けないよ!」(島)
「島くん」「島!」
二人が同時に叫ぶ
「わ~い、じゃぁ俺たちも自由に見よう!」
島と南部、太田、山崎がそれぞれ散りリビングから別の部屋に向かって出て行った。
「家具が入ってる部屋一つしかないんだけどな。」(進)
「え?そうなの?」(相原)
「だって二人で住むのよ?収納はほとんど備え付けで充分だし。」
ユキが〝ね?”と進に同意を求めると進も
「俺もほとんど上(宇宙)だしな。」
二人共驚く程荷物が少なかったことを思い出し笑いそうになった。その時奥の部屋から〝おぉ~でっけぇ~”と大きな声が聞こえた。
「ベッドルームか?」
進が立ち上がりベッドルームに向かった。
「ユキさんいい顔してますね。」(相原)
「…そう?」(ユキ)
「安心しました。サーシャちゃんと離れるときとても悲しそうだったから。」
ユキは相原の言葉にいろんな意味が含まれていることを感じた。
「…そう?気のせいじゃない?」
ユキは何気ない風を装ったが相原をごまかすことはできないだろうと心の中で判っている…が進が家にいるからそれ以上のことは言えない。
「古代くんがそばにいれば大丈夫ですよね?」
相原の念を押すような言葉にユキは相原の目を見ながら
「…大丈夫よ。私も…古代くんも…守さんも。」
最後の一人の名前は相原にしか聞こえない声で呟く。メインクルーしかいないが相原以外に聞かれたくない言葉だ。
「よかった。そう思っていてもやっぱりちゃんと言葉で言われると安心します。
僕は誰よりもユキさんを信じてますから。」
相原がそう言って残ったワインを飲む。
「真田さんがここにいなくて残念ですね。」
真田は守と一緒にサーシャのために月基地で降りた。その後イカルスへ行く予定になっていることだけ知っている。
「そうね…私もこれだけ長いあいだ真田さんと連絡取らなかったことないから結構
不安だわ。だけどいい加減独り立ちしないといけないし…。」
サーシァを見て真田も家族が欲しいと思うかもしれない。その時自分がそばにいると邪魔かもなどと思ったり…
「でもやっぱり不安だなぁ~」
ベッドルームからは笑い声が聞こえる。
「どんなに離れてても真田さんはちゃんと見てくれてますよ。」
相原の言葉にユキはワインを注ぎながら「そうね」と返事をした。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅰ 作家名:kei