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銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅰ

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  「相変わらずお熱いですねぇ~」

まもなく離陸というところで相原が進に声をかける。

  「羨ましいんだろ?」

進が悪びれることなく呟く。もちろん手元は出航準備の確認で忙しそうだ。

  「えぇ、いつも見せつけられて羨ましいですよ。ドッグの係員も見てるんですから
   注意してくださいね!」

しかし相原はそれが牽制であることを知っている。

  「気をつけてるよ、ちゃんとな。」

にっこり笑う進の手にマイクが握られ「パトロール艇、予定通り出航します。」と報告した。










  「へぇ…北野も大変なんですねぇ。」

離陸後の異常がないか確認しながら相原がつぶやく。

  「あいつの場合見た目もそこそこいいからそうなるんだろうな。ヤマトに乗った
   ばかりの時は〝大丈夫か?”って感じだったけどヤマトは人を成長させる艦だから
   彼女訓練に行く前と後とすごい変わりようで焦ったんじゃないか?」

進がチェックの状態を再度確認しなが話す。

  「確かに僕たちもイスカンダルに行く前と後じゃ随分変わりましたよね。自分がそう
   感じてるんだから周りはもっとそう思うはずだと思うんですが…。」
(相原)
  「そうだよな…任された仕事が仕事だもんな。俺たちが死んだら地球も終わりだし。
   今思うとすごい任務だと思うけど当時は余り深く考えてなかったっていうか…よく
   わかってなかったんだろうな。何をするのも必死だったしやることなすこと全てが
   地球人初!だろ?ほんの数年前の事なのに10年ぐらい前の事の様に感じるとき
   あるもんなぁ…。」(進)
  「古代くん、なんだか年寄りみたいな言い方ですよ?あ、艇長だった」(相原)
  「同い年なんだから年寄り扱いするなよ!全く…。」

ぶつぶつ言いながらもしっかり手は動いている。

  「よし…異常なしだな。」(進)

地球に豊かさが戻ってきた。小さなパトロール艇はワープエンジンを積み地球を中心に金星軌道から火星軌道付近の小惑星帯まで広い範囲でパトロールを行う。任される地域は毎回変わり特に火星付近の小惑星帯はパトロールの重点地域だった。

  「小惑星帯まで自動航行システム作動!」

小惑星帯に入ればいやでも目視でパトロールとなる。艦載機と違い機敏性の低いパトロール艇なので小惑星帯はとても神経を使う。そのためそれ以外の時はできるだけ自動航行で目的地まで向かうようになっている。

  「現地に着いたら3日間はみっちりパトロールだ。今のうちに休んでおこう。」

進の言葉に相原が頷くとふたりで大きな伸びをした。








  「ただいま…」

ユキは女子寮に戻ってきていた。一度官舎に向かったのだが玄関を入ったら急に寂しくなりそのまま玄関を上がらずもう一度カギをかけて女子寮に戻ってきてしまったのだった。

  「だって…広すぎるんだもん…。」

部屋に入りベッドに座るとそのまま仰向けになった。

  「ベッドなんて広すぎて…冷たすぎるから眠れなさそうだし…」

ひとり女子寮に戻る理由を並べ始める。

  「だめだぁ~古代くんがいない時にあの部屋に行けないなぁ…」

結婚したらそれこそ女子寮を出なくてはいけなくなる。あの広い部屋に一人で住むことができるか不安になってきた。一緒に住むのはふたりの願いだったけどふたりの部屋に一人になる寂しさはきっと誰にもわからない…

  「古代くんが帰ってくるまでここにいよう…」

冷蔵庫にはビールとチーズしか入れなかったはず…などと思いながらユキは体を起こしてシャワーを浴びる準備を始めた。











  「ユキさん寂しがってないですかねぇ?」

暇を持て余した相原が呟いた。

  「…広すぎるもんなぁ…あの部屋…。」(進)
  「4LDKでしょう?リビングも広かったですもんねぇ…ユキさんに友達がたくさんいて
   誰かしら招いてっていう人だったら問題ないんでしょうけど…」(相原)
  「そうなんだよな…聞くと小学校の頃から勉強ばっかりしてたみたいで友達と呼べる
   友達いなさそうなんだよな。小学校からいきなり医学生だろ?友達って感じじゃなさ
   そうだし。普通の大学生ならまた違うんだろうけど医学生。その後真田さん付きで
   看護師兼訓練生だ。友達作る暇もなさそうだ。」(進)
  「でもその真田さんのおかげで悪い虫つかなかったんだからよかったじゃないですか。
   もし訓練学校や病院でめっちゃくちゃ和気あいあいしてたらそれこそ古代くんなんて
   〝知らない!”って感じだったかも知れないし。」(相原)