71 utopia
アナスタシアの墓の前で、20年近くの確執を経た二人が対峙する。
暫し重苦しい沈黙がその場を支配する。
先に沈黙を破ったのは、アルラウネだった。
「随分ご無沙汰を致しました…」
さしものアルラウネも、僅かにヴァシリーサから目を伏せ、長の無沙汰を詫びた。
「…全く…。本当ですよ」
アルラウネの言葉にヴァシリーサがため息まじりに返す。
アルラウネが、その場の人間が、その場に凍り付く。
「本当に…。あなたが、いつまでも顔を見せてくれないから…私は、あなたに、あの時アレクセイを助けて貰ったお礼を言えないまま…お迎えが来てしまう所でしたよ」
ー あなたも…無事で、息災で良かった。…あの時は、本当にありがとう。
にっこりと微笑んだヴァシリーサの老いた両手が、アルラウネの身体を包み込んだ。
アルラウネの黒い瞳からいく筋もの涙がこぼれ落ちた。
作品名:71 utopia 作家名:orangelatte