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永遠にともに〈グリプス編〉7

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そして、ハマーンにキスされた事も思い出し、顔がサッと赤くなる。
「…アレは…黙っておいた方が良いかな…」
アムロは口元を押さえて呟く。


ーーーーー

「アムロ、アムロ!」
シーツに包まり眠る、柔らかい癖毛を優しく梳きながらアムロを起こす。
「アムロ、そろそろ支度をしなさい。」
「ん…。」
情事の後の気怠い身体を起こし、目を擦りながらアムロが頷く。
「あ…、やっぱり夢か…」
「アムロ?」
ぼうっとシャアを見上げながらアムロは夢の中で思った事をシャアに伝えようと口を開く。
「あのさ…、シャア…。貴方に話しておく事が…」
と、そこに艦橋から連絡が入る。
《クワトロ大尉、そろそろジオンの先遣艦隊と接触します。ランチの準備が出来ましたのでデッキまでお願いします。》
「了解した。」
シャアはそれに答えると身支度を整え始める。
「アムロ、君も急いでシャワーを浴びて準備をしなさい。」
「あ、はい」
結局、アムロはシャアに話す事が出来ないまま先遣艦隊との接触に赴くことになってしまった。


ジオンの旗艦“グワダン”に向かうランチに、交渉役として、ウォン・リー、ブライト艦長、アポリー中尉、レコア少尉、クワトロ大尉、カミーユ、そして、アムロが乗り込んだ。

《ブライト艦長、先方の案内役が進入ハッチまで案内してくれるそうです。》
アーガマの艦橋に届いた連絡をトーレスがランチ内のブライトに伝える。
すると、ランチの横に白い一機のモビルスーツが接近してくる。
「見たことの無い機体ですね。それに…何だろう。凄いプレッシャーを感じます。」
アクシズで開発されたMS“キュベレイ”を見ながらカミーユが呟く。
シャアとアムロはそのモビルスーツからハマーンの気配を感じ、言葉無くそれを見つめる。
『ハマーン様…』
アムロは心の中でその名を呼んだ。
キュベレイに先導され、グワダンの側面ハッチからドックへと着艦する。
7人はランチから降りると、ジオン兵に囲まれながら謁見場所へと案内される。
ふと、視線を感じてアムロは上を見上げた。
すると、ドックのキャットウォークに立つハマーンと視線が合った。そして、隣のシャアを見ると、彼もまたハマーンへ視線を向けていた。
そんなシャアの腕にそっと触れる。
それに気付いたシャアがアムロを安心させる様に微笑む。
「大丈夫だ。」
そして、案内されるまま謁見場所へと歩みを進めた。
通路を進むと、左右にジオンの兵士たちが等間隔で並び通路を固める。
かつてのザビ家の様相そのままの艦内の様子に、ブライトは戦慄を覚える。
「ここは時間が止まっているのか?!」
その様子にシャアとアムロも驚愕する。
かつてのアクシズはここまでザビ家の色に染まってはいなかった。しかし、この艦内はまるで過去のザビ家そのままだ。一体、自分達がアクシズを離れてから何があったのだろうか…。そして、ハマーンに何が…。
一際大きな扉の前で立ち止まると、数人の兵士を従えたハマーンが一行の前に現れた。
ハマーンはシャアとアムロに視線を向ける。そして、高いニュータイプ能力を感じたのか、カミーユにも視線を送る。
一行を代表して、ウォン・リーがハマーンに向かい代表者との謁見を求めると、目の前の大扉が開き、まるで中世の宮殿を思わせる大広間が目の前に広がった。
大勢のジオン兵が立ち並ぶ広間の中央には大きな椅子が置かれ、そこに宮女たちに囲まれた7、8歳くらいの少女が座っている。
ハマーンは一行からその少女がよく見える様に身体を横にずらす。
「紹介しよう。ザビ家の正統なる後継者、ミネバ・ラオ・ザビ様だ。」
「ミネバ・ラオ・ザビ…。あんな子供が代表者だと!?」
ウォン・リーの言葉に一行は同意をすると共に小さな子供を担ぎ出すジオンの状況に驚愕する。
そして、シャアも自分がア・バオア・クーから脱出させ、戦争から離れたアステロイドベルトで育てた少女をこんな場に担ぎ出すハマーンのやり方に嫌悪を覚える。
「子供では話にならん!」
そんなウォン・リーを他所にミネバが側近の宮女にハマーンへの伝言を伝える。
「スクリーングラスの方、ミネバ様の前までお進み下さい。」
その言葉に皆が一斉にシャアを見つめる。
ウォン・リーやブライト達が固唾を飲んで見守るなか、シャアは拳をギュッと握ると、ミネバの元までゆっくりと歩み寄る。
すぐ前まで行くと足を止め、スクリーングラスを外した。
その顔を確認したミネバが微笑み、口を開く。
「やはり、シャア・アズナブルか!久しいな。昔遊んでもらった事を覚えているぞ。地球圏への偵察ご苦労だった。いよいよアクシズが動き出す時が来た。ザビ家再興の為に力貸してくれ。」
その言葉に、アーガマの一行から動揺の声が上がる。クワトロ・バジーナがシャア・アズナブルだと言うことは周知の事ではあったが、“ザビ家の再興”を目的として連邦に潜入したと聞いては捨て置けない。
シャアは尚も言葉を続けようとするミネバの元へと歩みを進める。そして、ミネバの座る椅子に手を掛けたところでジオン兵が止めに入った。
その腕を振り払いながら、怒りを露わにしたシャアがハマーンに向かって叫ぶ。
「まだ幼いミネバを担ぎ出すなど、どういうつもりだ!!大人の都合に子供を巻き込むな!それに私はザビ家の再興など望んでいない!!」
シャアの叫びにハマーンが怒りの声を上げる。
「シャア!!裏切るのか!?」
「裏切る?何を愚かな!!またザビ家の過ちを繰り返すつもりか!?私やマハラジャ・カーンが求めたのはジオン復興のその先、スペースノイドの連邦からの独立だ!何を履き違えている!!」
「何を言う!!ザビ家の再興こそがジオン公国の連邦からの独立、ひいてはスペースノイドの独立だ!」
「ハマーン!!ジオンはザビ家のものではない!!」
「黙れ!シャア!!お前と議論しても無駄な様だ!その者達を捕らえよ!!」
怒りに震えるハマーンの命により兵士達がブライト達を取り囲み、一行を拘束する。
「ハマーン様!」
一行の中のアムロがハマーンに向け不安気な視線を向けてその名を呼ぶ。
その声にハマーンは視線を向けるとアムロの元まで歩み寄った。
そして、兵士に拘束されるアムロの顎を掴む。
「アムロ・レイ、久しいな。会いたかったぞ。あの時の私の言葉を覚えているか?」
「ハマーン様…」
そう言うと、ハマーンはアムロへと顔を近付けそっと唇に口付ける。
その光景に広間内が騒然となる。
側で見ていたブライトやカミーユも驚愕のあまりアムロ凝視する。
「アムロ!?」
「アムロさん!!」
そして、恋人の唇を奪われたシャアが怒りを露わにし、ハマーンを睨み付ける。
「ハマーン!!!」
そのシャアを一瞥すると、ハマーンは驚きで目を見開いたまま固まるアムロに視線を戻し、笑みを浮かべながら告げる。
「言ったであろう?地球圏へ帰還した暁にはシャア大佐とアムロの2人を私のモノにしてみせると」
「ハマーン様…」
アムロはハマーンを見つめ、困った表情を浮かべる。
「アムロ・レイ以外の者は営倉へ!」
アムロは2人の兵士に両脇を掴まれた状態で拘束され、それ以外のメンバーは営倉へと連行される。
「アムロ!!」
アムロを振り向きブライトが叫ぶ。