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永遠にともに〈グリプス編〉7

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「ブライトさん!ハマーン様!お願いです。やめて下さい!」
アムロはハマーンに必死に懇願するが、その願いは冷たく切り捨てられる。
「アムロ、エゥーゴとの同盟交渉は決裂した。もはやその者たちに用は無い。」
ハマーンはそう言い放つと、アムロを呼ぶシャアに視線を移す。
「そして、この裏切り者にも用は無い!」
兵士に拘束されながらもアムロの元へ行こうとするシャアを兵士4人がかりで拘束し、営倉へ連行する。
「アムロ!!」
「クワトロ大尉!!」
皆が広間から連れ出された後、残されたアムロは兵士に連れられ、ハマーンと共にある一室に通された。
部屋に入ると拘束は解かれ、兵士たちが部屋を後にする。
ハマーンと2人きりとなり、戸惑いながらも口を開く。
「ハマーン様…。一体何があったんですか?」
20歳になり、少女から大人の女性となったその姿に眩しいものを感じつつも、瞳の奥に影を落とすハマーンに心配気な視線を向ける。
「アムロ、私を心配してくれるのか?」
ハマーンはアムロの前に歩み寄ると、自分よりも少し背の高いアムロを見上げる。
「当たり前です。そんな辛そうな瞳をして…。」
アムロはそっと両手でハマーンの頬を包む。
「シャア大佐は…やはり、ザビ家の再興には反対なのだな。」
「…そうですね…。あの人にとってザビ家は鬼門ですから…。それに、何よりあの人が腹を立てたのはミネバ様の事だと思います。」
「ミネバ様の…」
「あの人は優しいから…まだ幼いミネバ様にジオンの重荷を背負わせたくないのだと思います。」
「……。」
「それにしても、このグワダンの様相は一体…まるで過去に戻ってしまった様です。」
ハマーンは目を伏せ苦笑いをする。
「人々を纏める為には何かしら目に見える指標が必要なのだ。アクシズの…特に過去のジオンの栄光を知る者にはジオン再興の象徴がな。」
「それが…ミネバ様ですか…。」
アムロが少し悲し気に答える。
「私はミネバ様の摂政となり、ジオン再興を指標として皆を纏め上げた。父の様にその腕だけで纏める上げられれば良かったのだがな。」
「ハマーン様…」
穏健派と強硬派の争いが沈静化したとはいえ、若いハマーンがアクシズをまとめ上げる事はかなり厳しい事だった筈だ。その為に致し方なくミネバを祀り上げたのだろう。
そして、唯一の支えであったシャアは側を離れ、連絡が付かない…。それがどれ程ハマーンを不安にさせたのだろう…。
そのシャアにあんな風に叱責されてどんなに傷ついたことか…。
腕の中のハマーンの肩が小さく感じて思わず抱きしめる。
その瞬間、2人の間に宇宙が拡がる。
2人は宇宙の中の漂い、互いの過去が脳裏に映し出される。
アムロはハマーンが過ごしたアクシズでの数年間を垣間見る。信頼していた部下の裏切りと重鎮達との駆け引き、そして宇宙を見つめ、地球圏にいるシャアヘと想いを馳せる悲しい横顔…。
ハマーンもまた、アムロが過去に受けた人体実験の様子や、最近ムラサメ研究所で受けた事…、そしてシャアを想う心を見る…。
「アムロ…。アムロはやはり、私よりもシャア大佐を選ぶのか?」
ハマーンのその問いにアムロは戸惑い、答えに迷う。
こんな状態のハマーンを突き放す事は出来ない。けれど、シャアを選ぶ以外の選択肢はアムロには無かった。
「…ハマーン様…」
そんなアムロの様子にハマーンが小さく溜め息を吐く。
「アムロは優しいな…。」
気付くと宇宙は消え失せ、先程の部屋に戻っていた。
ハマーンは自分を抱き締めるアムロの胸をグッと押して体を離す。
「ハマーン様…」
「アムロ、私たちの道は違えた。私はミネバ様を中心にザビ家を再興し、ジオン公国を復興する。その為にエゥーゴが障害となるのならばシャア大佐やアムロを敵に回す事になろうとも戦って勝利を勝ち取る!」
ハマーンのその悲しい決意にアムロは胸が締め付けられる。
「ハマーン様!」
ハマーンはアムロの肩越しに部屋の入り口へと視線を向けると、アムロの胸ぐらを掴み、もう一度その唇にキスをする。
今度は触れるだけのものではなく、奪う様に深いものだった。
アムロはシャア以外の者に許すのはいけないと分かっているが、ハマーンの気持ちを思うと突き放す事も出来ず、ただそれを受け入れた。
すると、入り口付近からドンっと壁を叩きつける音がする。
視線を向けると、そこには営倉から脱走して来たと思われるシャアとカミーユが立っていた。シャアは拳を壁に叩きつけた状態でこちらを睨んでいる。
「シャア!」
アムロがシャアの名を呼ぶと、ハマーンはアムロを突き放し、「さらばだ、アムロ」と最後にアムロに視線を向け、入り口とは反対側のドアから出て行く。
シャアはそのハマーンに向けて銃を発砲する。
「ダメだ!シャア!!」
アムロはハマーンの盾になる様にシャアとの間に立つ。
「どけ!アムロ!!」
「ダメです!お願いです。やめて下さい!」
その隙にハマーンはドアの向こうへと姿を消した。
アムロはシャアの腕を掴み、銃を降ろさせる。
「お願いです…。」
腕に縋り付くアムロにシャアは小さく溜め息を吐くとそっと肩を叩く。
「アムロ…」
「すみません…」
アムロはシャアに視線を合わせる事が出来ず、目を伏せたまま謝る。
「説明は後で聞こう。とりあえず、今はここから脱出する!行くぞ!」
「はい」
シャアはアムロとカミーユを伴い、先にアポリー中尉が奪取したランチへと向かう。
辛そうな表情でシャアについていくアムロをカミーユは複雑な表情で見つめる。
『ハマーン・カーンとこの2人の関係は…』

3人はブライト達と合流すると、無事グワダンを脱出しアーガマへと帰艦した。
しかし、ホッとしたのも束の間、グワダンとは反対の方向からティターンズのモビルスーツ隊が向かってくる。
アクシズとエゥーゴの交渉決裂を察したシロッコがアーガマへと攻撃を仕掛けてきたのだ。
ブライトは艦長席に座るとモビルスーツ隊へ出撃命令を出す。
「モビルスーツ隊!出撃!!」
トーレスから敵機の情報がシャア達の元に入る。
《10時の方向!ティターンズの編隊20機!》
《了解!アポリー隊は先行出撃しろ!私とカミーユ、アムロは後方から挟み撃つ!》
《《了解》》
息をつく間も無く出撃し、敵機を迎え撃つ。
ヤザン・ゲーブルの駆る新型可変MS“ハンブラビ”を前にカミーユのZが苦戦する。
「クソっ!!早い!!」
「Z!覚悟!!」
ハンブラビがビームライフルをZに向けて撃とうとした瞬間、そのライフルを零式のビームサーベルが切り裂く。
「何!?」
《カミーユ!引け!》
《アムロさん!!》
アムロがハンブラビに向けて激しいプレッシャーをかける。
「何だ!?この凄まじいプレッシャーは!!何者だこのパイロット!」
アムロのプレッシャーにヤザンが圧倒される

アムロはハンブラビの攻撃を紙一重で躱しながら懐に入り込みビームサーベルで斬りつけた。しかし、その攻撃をバルカン砲で退け、ヤザンが零式から距離を取る。
「この新型のパイロットなかなかやる!」
アムロはヤザンの腕に感嘆しつつ、直ぐに切り替えるとライフルを連射しハンブラビを狙う。
ヤザンも久々に腕の立つパイロットと出会い、心が高揚する。
「ははは!!面白い!!来い!零式!!」