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BRING BACK LATER 5

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 士郎は、何が根性だ、とセイバーの茶碗にご飯を山盛りにしながら愚痴りたくなる。
 士郎は問いたい、お前、誰だ? と。
 俺と剣を交えて命のやり取りをしたのは、本当にお前なのか? と……。
「シロウ……、あんた、寝ぼけてじゃなく、寝ながらここまで来たの? 途中でセイバーと会って、連れてきてもらったのよ。覚えてない?」
 こく、と頷くシロウに、凛は目を据わらせる。
「アーチャー」
 凛が矛先を変えた。
「シロウをちゃんと、休ませてあげなさいよ」
「む」
 アーチャーは眉間にシワを寄せた。
 凛はどこまで理解しているのだろうか、と疑問が湧く。
 確かに同衾しているのを目撃されたが、シロウはパジャマを着ていたことだし、とアーチャーは、むむむ、とさらに眉間に深いシワを刻む。
 そんなアーチャーを、朝食を食べながら、シロウは不思議そうに見ていた。
 そして、そんな二人を凛は、
(まあ、上々かな)
 と、桜は、
(シロウさんはそうでもないのかなと思っていたけど、やっぱりアーチャーさんのことが好きなんだ。夫夫だし、当たり前よね……)
 と、セイバーは、
(まったく、またアーチャーの方ばかり見て……)
 と、士郎は、
(居間でイチャつくな!)
 と、それぞれに思っていた。



***

「あー! お腹空いたぁー」
 両手を上げて伸びをしながら、凛は空腹を訴えた。
「ええ、お腹、空きましたね」
 桜も同意する。
「シロウ、あと一回、あと一回ーっ!」
 セイバーは士郎に泣きの一回と勝負をねだっている。
「もうおしまい。遠坂も桜も腹ペコだし、昼ご飯、食べに行こう」
 士郎は縋りつくセイバーを宥める。
「お前らも行くだろー?」
 後ろに続くアーチャーとシロウに言い、士郎はセイバーを促して歩き出す。
 バッティングセンターから出て、ぞろぞろと歩き出した六名。
 凛と桜を先頭に、士郎とセイバーが続き、最後尾にアーチャーとシロウが続く。
「遠坂ー、なんだって、今日はバッティングセンターだったんだ?」
 昨夕、急に凛が、“明日は打ちにいくわよ!”と言い出して、流されるままに実行した士郎は今になって疑問が湧いたようだ。
 凛は振り返って、晴れ晴れと笑う。
「少し前にね、セイバーと約束したのよ」
「約束?」
「ええ。シロウが元気になったら行きましょうって」
「へー。ほんと、遠坂はこいつの面倒見がいいよな」
「あらー、衛宮くんもいいと思うわよー」
「な! べ、別に、俺は、」
「照れなくってもいいわよー。シロウは放っておけないものねー」
「はい! シロウさんはほっとけないです!」
 凛の言葉に桜も同意する。
「ちょっ、桜まで……」
 士郎は呆れつつも、否定はしない。
 シロウが危なっかしいのは、本当のことだ。どうしてもかまいたくなる。一線を画していた士郎でさえそうなのだから、凛や桜にしてみれば、それはもう、相当なのだろう。
「鬱憤を晴らすには、これが一番だと思ったのよ。セイバーの提案で、ね?」
 水を向けられたセイバーは頷く。
「はい。いろいろと心にわだかまったものをさっぱりさせるには、これが一番です」
「あー、まあ……、でもさ……」
 と、士郎はシロウを振り返る。
「お前、バッティングセンターで見逃しはないだろ……」
「打つのならホームランだ、と言っただろう」
 シロウは生真面目に返してくる。
「い、いや……、言ったけどもさ、フルスイングで当てるのが……」
「当てただろう。ホームランだった」
「あれは……」
 シロウは、ホームランを打った。確かに一本だけ、フルスイングで。
「つうか、他の球、全部見逃しただろうが!」
 士郎は、がー、と吠える。
「バッティングセンターに来て、見逃しなんかするなよ!」
「ホームランを狙うとなると、あの球しかなかった」
「試合ならいざ知らず、あそこで一球入魂する意味ないだろ……」
「俺は何かおかしなことをしたか?」
 シロウはアーチャーを見上げて訊く。
「お前がやりたいようにすればいい。小僧の意見など尊重しなくてもいい」
 アーチャーがこういうことでシロウを否定することはないと、このメンバーは承知している。
 したがって、それぞれに苦笑を浮かべたり呆れたりと様々に反応し、士郎はもう怒ることにも疲れ、大きなため息をつく。
「バッティングセンターの醍醐味を、お前は台無しにしてるぞ」
 半眼で注意してやることしかできなかった。


 ランチタイムの終了間際にレストランへと滑り込んだ一行は、二手に分かれた。
 六人掛けの席がなかったこともあるが、アーチャーとシロウは食べる必要がないため、オープンテラスでお茶でもしている、ということになったのだ。
 今日は外で食事をするには肌寒いためか、外に設置されたテーブルは他に客がいない。
 それをアーチャーが見越したのは言うまでもない。
「ねえ、あの二人……」
 凛が窓ガラス越しにアーチャーとシロウを指さす。
「目立つわね」
 改めて自身のサーヴァントたちを見て凛は気づく。
 ソーサーを持ち、静かにカップを口に運ぶアーチャー。その向かいで、テーブルに頬杖をついて、持ち手ではなくカップ自体をつかんで手を温めるように持つシロウ。
 互いに、やや斜(はす)になり、長い脚が当たらないようにしている。
 何か会話をしているようではないが、特に話すことなどなくとも、傍にいるだけで成立する空気のようなものが二人にはある。
 穏やかになったものねえ、と凛は最初の頃と比べれば大違いだと笑ってしまいそうになる。
「本当、なんだか目立ちますよね。アーチャーさんは外国の方って感じですし、シロウさんはなんだか、ミステリアスで」
「外国……、ミステリ……」
 桜の言葉に、彼らの元である士郎は吹き出しそうになる。
「まあ、確かに普通じゃないよな……」
 士郎は苦笑いを浮かべるしかなかった。
 そうこうしているうちに注文した食事が届き、食べはじめると、凛はまた気づく。
「なんだか、やたらと外に座るお客がいるわね。この肌寒い日に……」
 ティータイムに訪れた女性客はこぞって外のテーブルへ向かう。さっきまで二人しかいなかったテラス席は、もはや満杯だ。
「まさか……」
 凛の予想は当たっていた。
 みな、あの二体のサーヴァント目当てに寒さを凌いで外のテーブルに向かっている。
 凛はにやりと口端を上げる。
「と、遠坂、な、なんか、顔、怖いぞ……」
「うふふー」
 笑いながら店員を呼び、追加注文をする。
 外に座る二人の席へ、イチゴショートケーキを一皿。
「世の女どもよ! 甘ーいケーキを頬張る姿に幻滅なさい。フッフッフッ」
「遠坂……」
 もう士郎には何も言えなかった。


「あちらのお連れ様からです」
 と、示したウエイターにつられ、店内に目を向けると、ガラス窓の向こうで手を振る凛がいる。そして、テーブルに置かれた見た目にも可愛らしいイチゴショートケーキを見下ろす。
「これを、食え……、と……」
 アーチャーがガラスの向こうの主に半眼を向けると、凛はニコニコと笑っている。だが、食べなければどうなるかわかっているわね、と無言の圧力がある。
「お前が食べろ」
作品名:BRING BACK LATER 5 作家名:さやけ