銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ
激しい総攻撃は続いていた。地球防衛軍も対抗するが全く歯が立たない。無抵抗な一般市民も巻き込まれている。進も応戦するために有人基地へ向かうといったがそこが無事か全くわからない状態だ。
ユキは藤堂からの指令を守から受け取る。女性を…しかも敵の攻撃のさなか有人基地に単独で向かわせるのは抵抗があったが複数で…しかも男性が動くより目立たないだろうと判断したのと進とユキが一緒ならヤマトのメインクルーと何とか連絡を取り合いこの状況を打破してくれると思っての行動だった。
"何かあったら私よりヤマトのメインクルーとして行動しなさい"
藤堂からの一言もユキの心にしっかり残っている。ユキは辞令を受け取ると胸のポケットに入れ敬礼し正面玄関ではなく地下の緊急脱出用出口に繋がるシューターへ向かった。
(…ヒール…走りにくい)
辺りは被弾した残骸で平坦なところはなく何度も躓いて転んだ。だが歩いている場合ではないとユキは必死になって走る。広い道は爆撃の対象となっていて動くもの目掛けて砲撃するので一本裏の細い路地を走っていた。
どれぐらい走ったか…やっと有人基地が見えてきた。
(もうすぐ…古代くんに会える…)
途中で何度も"ダメかもしれない"と思いながら走ったがやっとゴールが見えてきた。普段は厳重な警備で中に入ることなんでできないが人が触れたら感電死してしまう程の電圧の高い有刺鉄線も分厚いコンクリートの壁も攻撃によりボロボロに崩れていたので基地の内部に入るのは簡単だった…が基地の中は広い…。
海側を見るとコスモタイガーと同型の艦載機がずらりと並んでいるのが見えた。
(格好の的になりそうね。)
ユキはそう思ったが動かせる艦載機目掛けて進が来るような気がしたので周りの様子を伺いながらそこへ向かった。基地には誰ひとりいる様子がない。キケンと思い避難したのかそれともあの物体の降下地点へ向かったのか…物陰に隠れながら様子を伺っていると上空を切り裂くような音が聞こえてきたのでその物陰の奥に身を潜めた瞬間低空飛行で近付いてきた敵爆撃機がコスモタイガーをゲームの的のように1台ずつ爆破し始めた。
(危なかった…)
すべてのコスモタイガーを爆撃すると満足したのか敵爆撃機は急上昇してどこかへ飛んでいった。それを見てユキが小さなため息をつくと誰かがユキに気付きコスモガンを向けてきた
「古代くん!」「ユキ!」
ほんの数日前ドッグで見送ったそのままの姿なのに何年も会っていなかったようなそんな錯覚を感じた。火星からの数時間、お互いの安否が確認できなかった不安がその錯覚に通じたんだろうとユキは思った。
しばらくお互いを確かめ合うように強く抱きしめ合っていた二人だったがユキが進に渡すべき辞令を思い出し進から離れた。
「イカルスの真田さんと連絡を…どうやって?」
進はどうしたらいいかわからなかったがユキの言葉に従い英雄の丘へ行くことにした。きっと誰もが何かあったら英雄の丘に向かうと思ったから…。
英雄の丘で佐渡はひとりと一匹と1台で静かに涙を流しながら呑んでいた。呑まずにはいられない…そんな状態だった。ヤマトが救った地球が占領されるのをただ黙って見ていることしかできなかったから…。
佐渡はあの未確認飛行物体を見上げたあと往診があったので医療用具一式をアナライザーに持たせみーくんを連れて出かけようと準備をしていた。そしてその往診先に出かける直前でものすごい爆撃音を聞き一升瓶を抱えそのまま英雄の丘へ向かった。
相原は宇宙要塞へ向かったがバリヤーに跳ね返され戦車が逆さまになり同僚に助け出された。けがはかすり傷程度だったが頭を打っているかもということになり一度司令部に戻ることになった。その戻っている途中で奇襲攻撃に遭遇し軍用車じゃ目立つと思い相原は途中でその車から降りた。そして重い簡易通信機を背負ったまま英雄の丘を目指した。市街地は危ないので海岸沿いを歩く。暗い海岸線は皮肉にも砲撃でときどき明るくなり歩きやすかった。しばらく経つと背中や首が痛くなってきたので"鍛え方がたりなくてムチウチっぽくなってるかも"などと思いながら歩いた。背中と首が痛いので簡易通信機がさらに重く感じる。
(古代くんは火星で調査した後地球に戻るって言ってた…地球に戻ってこの状態だと
どこへ向かう?ヤマトのクルーは宇宙から帰ってきたら沖田艦長に帰還の報告する。
だからきっと古代くんは英雄の丘に来るはずだ…丘へ行けば大丈夫…しっかしこの
通信機カスタマイズしすぎたせいか重たいなぁ…)
相原はくじけそうになる気持ちをそう思うことで必死に耐え歩き英雄の丘へ着くとそこに佐渡がいた。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ 作家名:kei