銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ
「山崎さん…。」
サーシアが不安そうに山崎を見る。
「幕さん、ありがとう。」
山崎がそう言うと幕の内はにっこり笑って
「いえ…では私は戻りますね。」
と言って厨房に戻っていった。サーシアの不安そうな顔は山崎の顔を見てもそのままだ。
「サーシアちゃん、部屋に戻ろうか。」
山崎はサーシアをヤマト亭から司令室の近くにある真田の部屋に向かった。
「山崎さんさっきのって…」(サーシア)
「多分サーシアが思っている事は当たっていると思う。私も詳しい事わからないが
サーシアの叔父さんと婚約者のユキさん達がこっちに向かってくる。」(山崎)
「そう…お父様は来れないのね?」(サーシア)
「…多分これない…かな?」
真田はメインクルーが来ると言った。もし守が含まれていれば"守とメインクルーが来る"と言うだろうと思ったのだ。
「そう…大丈夫かしら…」
何かが地球で起きていることは想像できるがまさか地球が占領されそうになっているなんて誰も想像できなかった。
翌日真田と山崎は最終点検に余念がなく新しい設備のチェックに忙しく動き回っていた。進たちが無事地球を脱出したのか確認する手段はなかったが彼らのことだから必ずここへ来ると信じ出撃の準備をしていた。エンジンルームの電気系統を最終確認しているところで真田の羅針盤が光った。
「お?来たか。」
司令室に緊急通信が入ると羅針盤が光るよう設定してある。真田が常に司令室にいるわけではないので無人の時に連絡付くよう設定していた。
「山崎さん…メインクルー着いたみたいです。」(真田)
「ゲート開けなくていいんですか?」(山崎)
「彼らから連絡が来たら自動でドームが開きます。…今はチェックの方が大事です。」
真田の手は止まらない。ハーネスに破損がないかネジが緩んでる部分はないか確認しながら地道な作業が続く。しばらくすると真田の羅針盤が違う色で光った。それはヤマトの内部に外部から人が侵入した場合緊急時に示される色だった。
「第三艦橋に着いたみたいですね…作業中断しましょうか。」(真田)
「そうですね。きっと第一艦橋へ向かうでしょうが挨拶ぐらいはしないと…ですね。」
山崎の言葉に真田はやれやれと言った感じだが"やっと来たか"という顔でエンジンルームを後にした。
「サーシア」
真田はエンジンルームを出たところでサーシアに連絡を取った。
〈真田のお義父様!〉
サーシアが元気よく返事をした。
「叔父さんが来たから第一艦橋へ来なさい。」
真田が短くそれだけを伝えるとサーシアは嬉しそうに"了解"と敬礼をして通信を切った。その様子を見て真田は山崎と一度格納庫へ向かい加藤を連れて第一艦橋へ向かうエレベーターに乗った。
「よく来たな。」
真田がメインクルーを出迎える…がそこにユキだけいなかった。ユキの事を聞くと誰もが口を閉ざし視線を逸らした。佐渡だけが"ユキのことだから無事でいてくれるだろう"と言ったので何かがあったことだけは察しがついた。
「ゆ…ゆきサンガイル!」
アナライザーの慌てた様子に誰もが開いたエレベータの方を見た。そこにユキより明るい金髪に近い長い髪を揺らしながら美しい少女が入ってきた。
「紹介しよう…私の姪、真田 澪だ。」
メインクルーが唖然と澪を見ているが澪は余裕の笑顔で微笑む。真田は澪に隊員服に着替えて第一艦橋へ戻ってくるようにといい第一艦橋を辞させた。
「古代…すまんな。ユキがいればレーダー室で働かせようと思ってたんだが…。」
真田が進に声をかける。
「ユキの席を空席にしておくわけにいきませんし…アナライザーにいてもらおうかと
思ったのですが澪がレーダー扱えるならそれに越したことはありません。」
進が冷静に答える。アナライザーは万能ロボット。ここだけに居させるわけにいかない…
(いずれ古代にはきちんと話さないと…)
澪はサーシアだといつ告げようか真田の頭の中は計算し始めていた。
出航前の最終チェック中に地球から入電した。それは緊急時に通信部門の一部しか知らないシークレットコードだ。相原はその通信をキャッチした時に伊藤が無事であることを確信した。
「…兄さんが…」
藤堂はメインクルーの面子を見てユキがいないことを瞬時に把握し藤堂の頭の中で"あの状態なら大統領緊急脱出用高速連絡艇を使うはず"と考えた。ユキがヤマトに乗っていないのは計算外だったがドームの天井を開くとき乗り損なったのでは…と察しが付いた。もしヤマトのメインクルーを"送り出す"ならその後地下都市に来て地球防衛軍に合流するはずだと思い進に"生きていれば合流するはずだ"と敢えて"戦死"の明言を避けた。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ 作家名:kei