銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ
「真田さん、あれは本当に重核子爆弾なんですか?」
地球との通信が終わった後島が真田に聞いた。
「間違いない…各惑星の基地の犠牲者の様子といい…おそらく敵母星とタイミングを
合わせ惑星通過のタイミングで爆発させながら太陽系内の基地を全滅させたんだ。」
真田の説明に島が納得できないことがあった。
「でもあの要塞に乗っている異星人の脳もやられちゃうんじゃないですか?」(島)
「その通りだ。普通に考えたらね…あれだけの爆弾を造りかなり離れたところから
操作する事を考えると我々よりかなり科学力の進んだ星だと思われる。
ならばその重核子の影響を遮断するなにか防御できるものをその時に備えるのでは
ないだろうか?」
真田が顎に手を当てて考える。
「古代が火星に到着したとき火星のシステムは生きていたと。ただヒトだけが死亡
していて他の様子もなにも普段と変わらなかったと聞いた。重核子が絡んでいると
最初からわかっていたら残留放射能を調べる方法もあったが…もしかしたら一瞬の
出来事で残留放射能物は残らないかもしれん。」
真田が"俺の空論だがな"と付け加えた。
「あの重核子の形…」(島)
「あの時の連中だろう…爆撃機もタイプが似ている…」(真田)
「しかし無人艦隊で敵が撃破できると本気で思ってたんでしょうか。私はコントロール
センターを地下に作ったほうがいいと提案してたんです。ここが攻撃されたら無人
艦隊はただの的になるだけですから。」(島)
「…それは守からも言われたよ。俺もそれはごもっともと思い上に掛け合っていたが
予算がどうのこうのと言って全く前に進まない案件だった。すでに出来上がった
システムを移行するのが面倒だったのではと思っている。人の命を守るシステムが
全く役に立たないとわかっただろう。このために割いた予算を考えたらとっとと
移動したほうが良かったはずだがな…。結局全て後手に回ってしまった。」(真田)
真田は口を動かしながらも手はしっかり動いていて間もなく技術班から点検が終わったと報告があった。
「太助に感謝だな。」(真田)
「そうですね。偶然コントロールセンターに1ヶ月研修で来てたので英雄の丘に
連れて行ってもらえました。」(島)
「オヤジさんが導いたのかもしれませんね。」
エンジンルームの点検を終えた山崎が第一艦橋に戻ってきて会話に入ってきた。
「やっぱりそう思いますか?」(島)
「オヤジさん太助が心配でしょうがないと思いますよ。」
山崎がダンディに笑いながらいう。
「一度失敗したことは二度と失敗しませんしどんなところも自分で2回チェックする。
若いがかなりしっかりしています。先が楽しみですよ。」
山崎が嬉しそうに語る。
「"徳川"って呼びにくいんですがね。」
誰からも"そりゃそうですよね"と笑いが起きた。
太田は多忙を極めていた。イカルスを飛び立った後、敵母星を突き止めるには向かってきた方角を定めなくてはいけない。彼らは白色彗星のように他の星を破壊してまっすぐ進んできたわけではなく各太陽系の惑星を経由して来た。つまりトレースしないと敵母星にたどり着かないというわけだ。
まず冥王星のシステムに入り込み重核子爆弾が侵入してきた角度を計算し真空の宇宙に残るわずかな熱量とエンジンが燃えた時に出す"カス"の帯を調べトレースする方法を考案。そしてワープテストの準備…
「相変わらず人遣いが荒いなぁ…。」
第二艦橋で呟く太田。
「まぁまぁ…太田さん。頼みますよ。このトレース方法太田さんが編み出したんです。
誰も手伝えませんからね。」(第二艦橋のクルー)
そのトレースのラインを読み取るシステムを形にしてくれたのは真田だ。真田も太田の計算をシステムに読み込み今までの航路図と照らし合わせ最短で航海出来る方法を考え中だ。
「多分…この方角だと思うんだが…。」
およその検討が付いたところでワープテストが入り残念なことにレーダーが損傷したのでしばらく停泊することになった。そこで太田が気になることがあったので第一艦橋へ戻り進に声をかけた。
「大体の予測は付いたがこの方角がすごい気になるんだ。やたら熱量が多い部分が
あって…でもこの周辺は地球防衛軍も飛ばない地域で…。」
太田がサイドにあるサブビデオパネルで説明する。
「…わかった。索敵機を飛ばそう。」
その進の言葉に山南も頷く。進は相原の席に行き加藤を呼び出した。
「…加藤。2時の方向へ索敵機を飛ばせ。具体的な位置は太田が送る。」(進)
「了解!」
加藤はすぐに指示を出し1台のコスモタイガーを出動させた。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ 作家名:kei