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第二部 レーゲンスブルグ編1(74)であい

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「ただ~いま~」

夜半過ぎにアレクセイがアパートに戻って来た。

「お帰りなさい!」

ぼくが玄関先でアレクセイにぴょんと抱きつく。そのままキスを交わす。

一頻り熱いキスを交わした後、アレクセイはぼくの髪をクシャクシャと撫でたあと、そのまま頬を撫で、最後にぼくのほっぺを軽くプニっとつまんだ。

「今スープを暖めるね。着替えて来て」

アレクセイの上着を受け取るとコート掛けに掛けて、スープの鍋に火を入れる。

「そういえば、今日はお前の手、いつもみたいに冷たくなかったな」

着替えながらそう言ったアレクセイに、ぼくは

「ジャーン!見てみて!!ぼくいい事思いついたんだ」

と得意げにスカートを少し捲ってその中のズボンを見せた。

アレクセイは、一瞬目が点になってそんなぼくの捲り上げたスカートの中の様子を凝視した後…、腹を抱えて笑い出した。

「な…。なんだよ~。その色気のねぇカッコは。ハハハ…俺も含めた大抵の男は…女のスカートの中身が大好きだけど…流石にそれはノーサンキューだぜ・・・・。ハハ…アハハ」

「そんなにおかしい?…ぼくは寒さが苦手だから、我ながらいいアイデアだと思ったんだけど…」

「そっか…。寒いの苦手か。…ロシアは寒いか?」

そう言ってぼくの顔を両手で優しく包み込んで瞳を覗き込んできたアレクセイに、ぼくは小さくコクリと頷いた。

「ごめんな。…南ドイツで育ったお前に…この寒さは堪えるよな。おまけにこんなに細い身体じゃ…尚更だ」

アレクセイはぼくの両手を取ると自分の身体の温もりで包むようにそっと僕を抱きしめると、小さな子供をあやすように、頭を背中を、ポンポンと優しく叩いてくれた。

「ううん…。大丈夫。こうしてると…温かい」

アレクセイの腕の中で、彼の匂いと温もりに包まれて頭の芯まで蕩けそうになりながらぼくも囁く。

「そうか…。おまえ、寒いのならば無理せずちゃんと薪をくべて暖炉の火を強くするんだぞ。我慢するなよ」

アレクセイの言葉を彼の胸の中で聞きながらコクリと頷いた。

「よし。いい子だ。じゃあ、メシ食おうぜ」
― お前のメシ、美味いよな。

ぼくとアレクセイが向かい合って食卓につく。

「ちょ~っと興ざめだけど、俺がいないときは、そのズボン穿いとけ。女は…下半身を冷やすといけないらしいからな」

「アレクセイがいる時は?」

「そりゃ~、そんなもんで温める必要なんかないだろう?俺の懐でお前を温めてやる」

な?

アレクセイにそう言って同意を求められ、ぼくは耳まで真っ赤になってうつむきがちに頷いた。

「それから、今度公衆浴場連れてってやるよ。蒸し風呂で身体の芯まで温まるぞ」

アレクセイの抱擁と優しさと彼への愛おしさに、ぼくの心はこの北の街の寒さとは裏腹に温かな幸せで満たされていった。