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永遠にともに〈グリプス編〉8

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カミーユのその言葉に、アムロはカミーユがニュータイプとして完全に覚醒したことを感じる。
「カミーユ…」
《了解だ!行くぞ!!カミーユ!》
《はい!!》
アムロはリックディアスの破片を一瞬見つめた後、操縦桿をグッと握り、グリプス2へとZガンダムと共に向かった。

グリプス2ではレーザー照射を阻止すべく、シロッコがMSジ.Oを駆り、グリプス2内部へと侵入する。シャアの百式もシロッコを追撃すべくグリプス2の内部へと追いかける。
そして、ハマーンもまたキュベレイを駆り、シャアの命を狙う。
レーザー照射部に入り込んだシロッコはレーザーのガラス照射部品をビームサーベルで切り裂く。
「クソっ!シロッコめ!」
次々と破壊するシロッコのMAジ.Oを百式が攻撃する。
それを横で見ていたハマーンが嘲笑する。
「シロッコめ、コロニーレーザーを破壊する気か?面白い」
追撃にくる百式をシロッコがビームライフルで狙う。それをギリギリで躱すと、ハマーンのキュベレイが放ったビームが百式の右腕を撃ち抜く。
「ちぃっ!!ハマーンめ!」
《これで終わりだ!シャア!!》
二機に挟まれ絶体絶命のシャアはそれでもまだまだ諦めない。
《まだだ!まだ終わらんよ!》
『アムロ!!』
シャアは心の中でアムロの名を呼ぶ。

「シャア!?」
その思惟を感じたアムロが叫ぶ。
《アムロさん!クワトロ大尉が!!》
《ああ、解ってる!中だ!行くぞ!》
《はい!》

シャアはシロッコとハマーンを振り切るとコロニー内部の居住区へと2人を誘き出す。
銃を片手に居住区を進むシャアは出撃前にアムロが言っていたことを思い出す。

『1年戦争の時の…ア・バオア・クーでの作戦前の時と同じ感じがする…。白兵戦になるかもしれない。』

「アムロには未来も解るのか?」
そんな事を思いながら劇場跡へと侵入する。
「シャア!!拳銃を捨てろ!」
舞台に出たところで客席側からハマーンの声が響く。
「大した役者だったよ。シャア。話し合う余地が無いならば此処がお前の死に場所だ!!」
「いや…、もう1人役者が居るな。」
シャアが言うと、客席からシロッコも現れる。
シロッコに振り向くハマーンが銃をシロッコに向けながら鼻で笑う。
「そうだったな。こんな役者じみた事はシロッコの領分だったな。」
「ふふ、私は只の傍観者にすぎんよ。」
シロッコは皮肉めいた視線をシャアに向ける。
「シャア・アズナブル。貴様は世界をその手に入れたがっている。違うか?」
シャアは顔を伏せそれに何も答えない。
「シャア!世界を手に入れたいならば共に手を取りザビ家を再興させ、その後で世界の事を共に考えよう!この男を始末して!」
と、銃口をシロッコに向ける。
ようやく顔を上げたシャアが口を開く。
「ハマーン。私はただ世界を誤った方向に持って行きたく無いだけだ。」
「では聞くが、ザビ家を排除した後ティターンズを倒して世界をどう導いて行くつもりだ?」
「私が手を下さなくてもニュータイプへの覚醒で人類は変わる。私はただその時を待つ。」
銃を取ろうとしたシャアを銃で牽制する。
「私に同調してくれなければ排除するだけだ。その上でザビ家を再興させる。」
「また同じ事を繰り返すだけだと気付かんのか!?」
「しかし、それが一番わかりやすい方法だ!世界の動向を見誤る男は排除すべきだ!」
「それは違う!!」
そこに銃を構えたカミーユが現れる。
「本当に排除しなければいけないのは地球の重力に魂を囚われた人達だ!だけど、その為に沢山の人達が命を落とすなんて間違ってる!」
「ふん!若いな!」
カミーユをシロッコが鼻で笑う。
「人の心を大事にしない世界を作って何になるんだ!!」
カミーユの叫びをシロッコが一蹴する。
「常に世界を支配してきたのは一部の天才だ!」
「違う!!」
「ちっぽけな感傷は世界を破滅に導くんだ!分からんか!少年!」
「違うよ…シロッコ…」
そこに銃を構えたアムロが現れる。
「アムロ・レイ!生きていたのか!」
アムロはシロッコへと銃を向ける。
「アムロ・レイ!君ならば分かるだろう?君のように選ばれた人間が私と共に世界を支配すれば戦いは終わる!」
叫ぶシロッコにアムロは悲しい視線を向ける。
「分からないよ。シロッコ。選ばれた人間って何だ?ニュータイプか?オレはそんな偉そうなものじゃ無い。貴方が言ったんだろう?ただの殺戮兵器だって。」
「アムロ!!」
アムロの言葉をシャアが否定するように叫ぶ。
「ごめん、シャア。分かってる。本来ニュータイプは貴方のお父さんが言ったようにこの宇宙で生きて行く為、危険をいち早く察知し、人々とわかり合い、争いの無い世界を作る為の存在だ。でも、今この時代では戦争の道具でしか無い…。」
アムロが悲しく告げる。
「貴方が言ったんだ。僕はあの戦争でニュータイプの有り様を見せ過ぎたと。戦争の道具としての有り様を…。僕がニュータイプを誤った存在にしてしまったんだ!」
「アムロ…」
そして、アムロはシロッコに視線を向ける。
「シロッコ!世界は誰かが支配するものじゃ無い!人々の暖かい心が作り上げて行くものだ!」
そのアムロの言葉にハマーンの心が揺れる。
「ハマーン様!貴女も本当は解ってる筈だ!アクシズに…ジオンにとらわれ過ぎてはダメだ!貴女は本来そんな人じゃ無い!」
「黙れ!アムロ!今更遅い!私は道を選んだのだ!だからアムロ!シャアと共に私の元に帰ってこい!そして世界を正しい道に導こう!」
「ハマーン様…」
アムロはそっと首を横に振る。
「オレは前の戦争でザビ家の…ジオンの支配を見てきました。力による支配は歪みを生み、新たな争いの芽を育てる。それではダメなんです。」
「アムロ!!」
ハマーンの悲痛な声が響く。
そんなハマーンとアムロをカミーユは見つめる。
ーーーこの2人もまた、ニュータイプ同士魂が引き合っている。しかし、互いの選んだ道が2人を別けてしまったんだ…。
「ははは!」
突然シロッコが笑い出す。
「そうだ。アムロ・レイ。君は我々天才の道具だ!“検体ナンバー001”!!」
その言葉にアムロの身体が硬直する。
「なっ!?」
「ふふふ。まだ、キーワードによる後催眠のマインドコントロールは生きているようだな。」
「な…に!?」
「“検体ナンバー001”このキーワードで後催眠が発動する。さあ!アムロ・レイ!その銃でシャア・アズナブルとハマーン・カーンを殺せ!!」
シロッコの命令に自分の意思とは関係なく身体が動く。
「嫌だ!やめろ!!」
アムロは首を振って抗おうとするが銃を握るその腕がシャアへと銃口を向ける。
「逃げろ!シャア!」
「アムロ!!」
撃ち放たれた弾はシャアの左腕を掠める。
「うっ!アムロ!!」
シャアは傷口を押さえながらもアムロへと歩み寄る。
「ダメだ!シャア!身体が言うことをきかないんだ!貴方を殺したくない!」
「アムロさん!!」
カミーユが駆け寄ろうと足を向ける。
そして、引き金にかけた指が引かれるその瞬間、ハマーンの放った弾がアムロの銃を弾き飛ばした。
「うっ痛!!」
「チッ!ハマーンめ!」
銃を奪われたアムロを睨みつシロッコが舌打ちする。
「残念だよ。アムロ・レイ。君を殺すのは惜しいが致し方あるまい!」