銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ
「ユキは来るだろうか…」
アルフォンは重核子爆弾の下部へ向かうエレベータの中で呟いた。デザリアム側は地球を占領するために用意したガリアデスを1台だけ残しヤマトを追って地球を離れていた。そのガリアデスは王女ローダのために置かれたもので非戦闘員ばかりが残っていた。援軍は望めない。中間補給基地をヤマトに殲滅されているからだ。
「ヤマトを追って行ったから地球に残っているのは戦いに不慣れな者ばかり…」
アルフォンは自分も"情報将校"であり戦略を立てたり新兵器の発案などで活躍していた。
「私を倒すことができたら…か。私にモリユキが撃てるのだろうか。」
アルフォンはレーザーガンを手にする。と、その時パルチザンが内部に侵入してきたのが見えた。
「腕は鈍っていないようだな。」
ユキを撃って以来…久々にレーザーガンを使用した。触れると少し銃口が熱を帯ていて熱かった。
(この先に外との連絡口があったな)
アルフォンはここからパルチザンが入ってくると思いレーザーガンで辺りを撃ちまくる。自分のアイディアで作られた重核子爆弾…それを今自分の命と共に亡きものにしようとしている…
(1号…お前は生まれ変わって私の代わりに美しい地球で生きてくれ)
目を閉じそう願った瞬間パルチザンの足音が聞こえ数名現れた。待ち構えていたアルフォンは目を開き静かにレーザーガンを構え撃つとそのままゆっくり外部への通路の出入り口へ向かった。
(ユキ!)
アルフォンは出入り口付近で機関銃を構えこちらを伺っているユキを見た。内部で戦闘が繰り広げられておりかなり煙たい状態になっていた…がその煙が落ち着くとお互いの姿がはっきり見えた。アルフォンは改めてユキの姿を見て"愛おしい"という気持ちを確認した。レーザーガンを構えているがユキを撃つことはできない…
そんな自分をユキの視線が真っ直ぐ捉えている。
(ユキが私を見るときは迷いながらも弱い自分を見せないよう必死だった。
しかし今は違う。さぁ…ユキ。私の決心が鈍らないうちに早く撃ってくれ。
…私もユキを見逃すわけにいかないのだ…早く…)
アルフォンが構えた瞬間ユキの足元に倒れていたパルチザンの機関銃が火を噴いた
「キミを心から愛していた。」
アルフォンは生まれて初めて"苦しい"という気持ちを味わった。それは撃たれた事で命の限りを感じている体の苦しみもそうだがそれ以上に"ココロ"の苦しさを感じていた。想われたい人に想いが通じない…その苦しさは体の苦しみ以上なのだと初めて知った。ユキのひざの上に自分の頭部を乗せてもらうと唯一の肉体部分に愛するユキの体温を感じた。
(もう…想い残す事はない。私は力の限り戦った…そして地球人の愛に負けたのだ)
アルフォンは重核子爆弾の解体図をユキに差し出し満面の笑みを残し息を引き取った。
ユキは息を引き取ったアルフォンの亡骸を抱きしめるとそっと手を合わせ涙を拭いて解体図を胸ポケットにしまいそっと立ち上がった。
「長官、解体図を手に入れました。特殊任務隊員を私のいる所へ集合させてください。
今私はポイント5の出入り口付近にいます。」
ユキが通信機を通じ長官に連絡を取った。しばらくするとパルチザンの中の先鋭部隊である特殊任務隊員が20名程ユキの所へ集まってきた。そして解体図を見せ作戦を練る。
「森秘書、ここからは危険です。我々が行います。」
特殊任務を請け負う部門の兵士が名乗り出る。
「いいえ…これは私に与えられた任務…私が行います。私はヤマトで特別訓練を
受けています。恐らくあなたたちと変わらないぐらい戦える。」
ユキは断言し自分が指示を出すと伝え作戦はまとまった。重核子爆弾の中枢は最上階にありそこまで3つの部隊に別れバラバラになり敵の目を欺く方法を取った。まず先発隊が5名でカモフラージュするために地下に向かう。そしてユキを含む10名の部隊が上を目指し階段を昇る。残り5名はユキの部隊が出たあと階段を昇ろうとする敵を撃つために残った。
(リハビリをしっかりやってたおかげね。)
多少の息切れはするものの体は問題なく動く。途中敵兵士と撃ち合いがあったがユキの指示で必ず頭部を狙うよう指示を出していた事と地球人がここまで来ると思っていなかったのか内部はかなり手薄だったのですぐに重核子爆弾の心臓部へたどり着くことができた。
ユキは胸ポケットから解体図を取り出すと兵士に持たせ重たい扉を開き重核子爆弾の信管を取り除くことに成功した。
(古代くん…後は任せたわ)
ユキは信管を握り締めパルチザンに撤退するよう指示を出しすぐに旧地球防衛軍へ戻った。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ 作家名:kei