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銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ

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  「調子は?」(アルフォン)

ユキがベッドの上でぼんやり外の様子を眺めていると仕事から戻ってきたアルフォンが声をかけた。

  「だいぶ良くなりました。無理な動きさえしなければ大丈夫です。」

熱を出すことはなくなったが長く動くと筋肉が張って肉離れを起こしそうな痛みを発する。

  「ゆっくり治せばいい。食事は…」

ユキは出された食事を食べようとしない。

  「少尉が心配していると衛兵の方に聞いています…が…。」

ユキがアルフォンから視線を外し言葉を濁す。

  「無理強いはするつもりはない。」

あるフォンの言葉にやはり違和感を感じる。

  (私は捕虜のはず…なぜこんな手厚い保護を受けられるの?私が死ぬと都合の悪い
   事があるんだろうけれどそれは何?)

ユキはその疑問を飲み込むように少し時間を置いて

  「ありがとうございます。」

とだけ答えた。

  「私はあなたを捕虜だと思っていない。」

ユキは驚いて目を見開く

  「ゆっくりするがいい。この館からでなければ何をしても構わない。
   自由にするがいい。」

そう言ってアルフォンは部屋を出ていった。







  (自由に…ってどういうこと?)

ユキはベッドの上で考えた。

  (館からでなければ何をしても…どの部屋に入っても構わないって事?少尉の部屋に
   入って家探ししても問題ないってことなのかしら…それともここには私の求める
   物はない…って意味なのかしら。)

夜になるとあの不気味なオレンジ色の光が更に明るく見える。そして時々その近くで戦っているのかレーザーの光が見える。

  (あの光の先で誰かが犠牲になっている…みんなが戦っている時に私はベッドの上で
   寝ているだけ…一緒に戦いたい…元の平和な地球を取り戻したい…その為に私に
   何ができるんだろう…)





ユキは自分の無力さに涙が出てきた












アルフォンはドクターを部屋に呼びユキの一日の様子を聞いた後、ユキに告げた事を伝えた。

  「よろしいのですか?」

アルフォンの言葉をドクターが確認する。

  「よい…自由にするがいいと言った。それにモリユキは私が情報将校だと知っている。
   仲間のためになにか情報をと思うだろうがこの館から出られないのだ…何も心配
   する事などあるまい。」

ドクターはアルフォンのこころがわからなかった。

  「それに…ここに重核子爆弾の内部が分かるものはない。」

アルフォンの視線の先にはオレンジ色を発している重核子爆弾がある

  (自分が無力だと知るがいい…そして絶望を味わいローダ様として生まれ変わるのだ。
   そして…)

アルフォンはそこで我に返る

  (その続きはどうなるのだ?)

  「今日はもう下がっていよい。」

アルフォンはドクターを自分の部屋から下げさせその続きを考えた。

  (モリユキはローダ様となり生まれ変わる…そして私はローダ様と生きていて行く。
   あの美しい身体は私のものとなるが…私はモリユキの心も手に入れたいと
   思っている?)

アルフォンは今までもやっとしていた気持ちがこれだったことに気付いた。

  (私は…モリユキを愛し始めている…あの美しい身体とこころ全て手に入れたいと…)

敵に心を奪われるなんて思いもしなかった。ヤマトという艦で地球という星に興味を持った。そして原始的な民族であること…多少科学の力はあるがヒトがヒトから生まれてくるという事実…ならば我らが生まれ変わるにいいと判断し地球を征服する計画を立て実行した。自分たちが将来自分の子供を産めるかもしれないとそんな夢をみてこの地球に来た。まさかそこで自分が地球人に心を奪われるなんて思いもしなかったのだ。

地球人は自分達より下等な生物だと思い計画を遂行させてきた。そしてその計画の先に自分がデザリアム人の上に立つこと…そしてローダ様との婚姻。

全て計画通りだった。王女から結婚の許しが出た時も心から喜べない自分がいた事も今は腑に落ちていた。






  (私の体がサイボーグでなければ…今すぐにでも…)

アルフォンは深い溜息をついた