銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ
ユキは今までしていた掃除もしないでベッドの上でずっと考えた。生かされた自分に出来ること…アルフォンに身を委ねること…そうすれば重核子爆弾の秘密が分かる。後はこの館をでて仲間にそれを知らせれば自分の任務は終わる…
(だけど…それは古代くんを裏切ることになる…)
ユキは進が死んだと知らされても進以外の誰かに抱かれるなんて考えられないし考えたくない事だった
(でもそれしか方法がないとしたら?)
"静かすぎる"
突然パルチザンの戦いの光が見えなくなった。ユキはもしや全滅したのでは…と思ったが地球にはまだ戦う力があると信じその考えを払拭した。そう思っていても頭の中で繰り返されるのは"生命反応がなかった"と告げるアルフォンの言葉…と愛を告げる言葉…
(古代くん…私は古代くんの帰ってくる場所なの…今すぐ帰ってきて私を抱きしめて…)
ユキの叶えられない哀しい願いだけがユキの心を支配した。
ユキは食事も取らず数日もベッドに伏せて泣きながら考えた…がいつしか"それをいつ実行すればいいのか"に変わっていた。
(古代くんがいないのなら私も生きてても仕方ない。向こうで合わせる顔がないけど
私の体一つで仲間の命が救えるのなら…。古代くんごめんなさい。私はあなたを
裏切ろうとしている。でも信じて。私のこころにはあなたしか住んでいない。
地球が生き残るため…私にできる最後の仕事をして私はあなたのところへ逝く。
許してなんて言わない。私が最後の仕事をしっかりきるように見守っていて…)
ユキは久しぶりにアルフォンの帰る時間に合わせアルフォンの部屋に向かった。
「…古代…いいのか?」
進がサーシアを追ってしばらくすると進が肩を落としひとりで戻ってきた。
「島…」
「サーシアはここが住みいいらしい…。」
進はサーシアが「俺と一緒に地球に帰りたくないからここに残る」なんて言えなかった。言えばサーシアが自分に好意を寄せていたことを言わなくてはいけなくなると思ったから。しかし第一艦橋のメンバーはサーシアが進に好意を寄せていることに気付いていた。まさか叔父と姪の関係と知らなかったから尚更だが進の今までの態度を考えてユキがいなくなってもユキの代わりにサーシアをと思っている様子がなかったのでいくら肉親といえど帰りにくいのだろうと思いそれ以上進を追求することはしなかった。
(真田さんになんて言えばいい?)
進は無言でヤマトに向かうために上陸用舟艇へ乗り込んだ。
地球に降りたメンバーはそのまま艦長室へ向かい報告をした。山南はそこにサーシアがいないことに気付いたがあえて触れず報告だけを聞いた。そして"生き続ける権利"を行使するために地球へ戻る指令をだした。
「古代」
山南が進を呼び止める。
「あぁ…他のメンバーは準備を…。」
山南がそう言うと進を除くメンバーは敬礼し第一艦橋へ降りた。
「澪はどうした?」
山南は訓練学校の校長をしていたのでサーシアもずっと見てきた。
「…真田澪はこの地球に残るといい…説得しましたが力及ばず…。」
進が目を伏せながら答える。
「もう…地球の環境に合うと思っていたのに…何か思うふしがあったのだろうか?」
山南の言葉に進が顔を上げる
「長官から直接聞いている。極秘事項だから誰にも話していない…知っているのは
真田と山崎と幕の内ぐらいだ。」(山南)
「そうだったんですか…」(進)
「自ら残ると?」(山南)
「…はい。」
進はそれ以上話すことができなかった。
「…わかった。戻って出航の準備を…」
山南が進から視線を逸らす。進は敬礼し艦長室を辞した。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ 作家名:kei