銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ
「真田くん、艦長室まで来てくれ。」
山南は出航準備中でレーダー室にいた真田を呼び出した。
「お呼びでしょうか。」
真田が敬礼して艦長室へ入る
「澪がこの星に残りたいと申し出て上陸用舟艇に乗らなかったそうだ。
ヤマトは間もなく地球へ向け出航する…真田はそれでいいのか?」
真田は山南の言葉に驚きを隠せなかった。
「澪が?残ると?」(真田)
「古代が説得しようとしたがダメだったと…。」
山南の言葉に真田は引っかかるものを感じた
「古代は…」(真田)
「出航の準備をさせている。このまま出航するか呼び戻すか…キミは育ての親だ…」
山南が真田に聞いてきた。真田は進に対する澪の態度が気になっていた。進は肉親として接していていたが澪は果たしてそうだったのか…と。実父、守が亡くなったと告げた時"叔父様から聞いて慰めてもらった。"と言っていた。澪はユキがいない進をどうやったら癒せるか…とそればかり考えていた。真田は"慰めてもらったから"だと思っていたが澪が残ると言うことは叔父への気持ちではなくひとりの男性として意識していたのでは…と思った。進のこころに澪の入る隙間はない…例えユキが死んでしまったとしても進はユキの代わりに澪を…なんて思わないだろうと思った。
「澪の…気持ちを尊重します。」
真田は今すぐにでも連れ戻したい気持ちを抑え山南にそう告げた。
「…わかった。」
真田は敬礼して艦長室を辞した。
「古代…終わったか?」
真田が艦長室を辞して第一艦橋へ降りてきた。
「真田さん…」 (進)
「古代、ここは俺が見るから…行ってこい。」
島が気を利かせる。
「悪いな…頼む。」(進)
進は真田と一緒に後部展望室へ向かった
「古代…澪はお前になんて言ったんだ?」
真田はまっすぐ進の目を見て聞いてきた。
「真田さん…」
進は悩んでいた。サーシアの言葉をそのまま真田に伝えていいものか…
「澪は…古代のことが好きだったんじゃないか?」
真田がストレートに聞いてきた。
(そうだ…真田さんは常にストレートだった)
進がユキと付き合い始めたときもそうだったと思い出した。
「澪は…私と一緒に地球に戻れないと…言いました。」
真田は進の様子を見てそれ以上詰め寄ることはしなかった。
「…そうか。分かった…。ヤマトは予定通り出航する。」
進は真田の声が少し震えていることに気付く。真田も辛いのだ。母を亡くした幼い子を親友から譲り受け育てた。美しく聡明に育ちこれから平和な地球で…というところで地球ではなく敵地へ向かうことになった。
母が亡くなったのも父が亡くなったのもこの星の住人のせいなのになぜそこに残るのか…真田は理解できなかった。できれば連れ戻したかったが…
「真田さんはいいんですか?」(進)
「古代…ユキの代わりに澪をと思えないだろう?もし少しでもそう思っている
ところがあるなら…俺は親として…お前を許さない。」
真田の声は震えていなかった。
「澪…サーシアは姪です。大切な肉親です。そんな風に見ることなんてできません。」
進が断言すると
「…そうだろう?だから澪は残ったんだ。澪のことだから"ユキのかわりでもいい"
と考えただろう。自分がどんな辛い思いをしてもお前の支えになることが幸せだと
思っただろう…だがそれはいつかお互い負担になってくる。支えられる方も支える
方もその人自身を見ているわけじゃないからな。自分を通して別の人を見ている
なんて辛すぎる。」
真田の言っていることはもっともなことだった。澪を見ながら火星で亡くなったサーシアさんを思いそれがユキにつながっていた。
「そう…ですね。」
進はサーシアを真正面から見ていなかったことに気付く。澪を見ながらユキの面影を探しサーシアさんを思い出していたのだから…
<ヤマトは間もなく地球へ向け出航する。全員配置に付け>
スピーカーから山南の声が聞こえてきた。
「戻ろう…」
真田は進に声をかけて第一艦橋へ戻った。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅲ 作家名:kei