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かんなぎ皇女・褐色の破壊神 壱ノ巻

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「ここで1人の男が梛木星の危機を回避し始めたのじゃ」

 身を乗り出すようにして阿重霞は質問する。

「誰ですの?」
「カミヤマトと名乗る男じゃよ」
「カミ…ヤマト…、どこか気品が高そうな名前ですわ」
「他の星から密入国して、皇家の警察に身柄を拘束されていた風来坊らしいじゃがのぅ。事態を静観しておったその風来坊が1人でかんなぎ皇女に立ち向かったのじゃ」

「この俺に任せろ!」

 カミヤマトと名乗る風来坊は空飛ぶ嶺翁白馬に跨って警察拘置所を飛び出した。
 向かう先は嶺翁神高宮殿。

 途中で嶺翁華夏山の頂上へ立ち寄ると、神高皇家仁祖御神木の一部を伐採して鉾を作った。
 御神木には何か強力なエネルギーが備わっている事をカミヤマトは分かっていたのだ。

 宮殿に到着すると、すっかり変容したかんなぎ皇女の姿が有った。
 白い小袖の赤い袴の(地球で言えば)神社の巫女の衣装だが、両肩を出しスリット状になった袴から素足が出ている。何も履いておらず裸足である。

 丁度今、ギャラクシーポリスから派遣されて来た特殊部隊を相手にしている最中だった。
 部隊員たちはそれぞれ、ショットガンやレーザーブレイドを手にしている。
 1人がショットガンを撃ち、数人がレーザーブレイドでかんなぎ皇女に立ち向かった。

 目を細めてジッと隊員たちを見るかんなぎ皇女。
 背中辺りから帯のような黒く細いモノが数本、触手のように伸びて来た。
 走って来る部隊員たちを跳ね飛ばし、飛来して来る光弾をいとも簡単に跳ね返す威力を持っているのだ。
 身体から発するケガレで吹き飛ばしたりする。
 部隊が攻撃の手を止めた。流石の最強部隊も恐れおののくのだ。

 そこへ嶺翁白馬に乗ってカミヤマトが颯爽と走って来た。
 馬から飛び降りたカミヤマトは懐から草薙光剣を取り出すと宙に棚引く黒帯を次々と切り落として行く。 
 驚愕するかんなぎ皇女を目の前に黒帯が散らばった。
 最強を誇るかんなぎ皇女も、カミヤマトに依って短い生涯を終えた。
 御神木で作られた鉾で胸を突き刺されて命を絶ったのだ。

 宮殿内の霊安室に安置されたかんなぎ皇女の亡骸。
 摩耶比売命・第二皇女は無念の思いで、姉の遺体をジッと見つめ続けた。
 ずっと神高皇家に仕えている年寄り侍女トヨノの判断で遺体はバラバラにされた。
 かんなぎ皇女の邪気が再び猛威を振るわないよう、死者が生き返らないよう封印したのだ。

 御霊送りの儀式の後、カミヤマトが別室で御劔を使って遺体を解体し特殊なカプセルに入れた。
 宇宙空間を離れ嶺翁星を去るカプセル。