かんなぎ皇女・褐色の破壊神 壱ノ巻
丁度この時、テレビではニュース番組が放映されていた。
番組で大きく取り上げられているのは、今から4年前に起きた隕石落下による犠牲者の合同慰霊祭の模様である。
前例の無い大規模自然災害であり、犠牲者数も五百を越えていた。
以来、毎年のように合同慰霊祭が行われ今年も惨事が起きた10月に開催される予定となっているのだ。
勝仁は隕石落下に対して特別な思いを抱いていた。
身近に犠牲となった者はいないけれど、甚大な被害が出た事に今でも無念さと悔しさの感情を捨て切れない思いになっていて、毎年のように映像を見ると心を痛めるので有った。
太陽系第三惑星である地球は、樹雷直轄の保護地域になっていた。
地球に住む人類の誰もが知る由もないが、これは紛れもない事実である。
保護地域だから、宇宙からのあらゆる脅威から地球を守らなければならないと言う使命が有る。
今から4年前に飛来して地上に甚大な被害を起こしたティアマト彗星に対しても例外ではなかった。
樹雷の方では早くからティアマト彗星の存在を掴んでいた。
ギャラクシーポリスの協力を得て彗星を追っていたのだった。
だがティアマト彗星自体の不可解な動きに振り回されて、進路を予測する事でさえ困難だった。
勝仁の元に樹雷皇家・第一皇妃船穂を通じて連絡が来た時には彗星は既に太陽系に入った後だった。
地球に最接近したティアマト彗星は大気圏上で謎の分裂を起こして、その一部が隕石となって地上へと落下してしまった。
落下地点は岐阜県の山あいに広がる糸守湖の地域だった。
未曾有の大被害の様子が映し出された映像を目の当たりにして勝仁は無念の思いにかられるのだった。
以来、勝仁は毎年のように岐阜県高山市で行われている隕石落下に依る犠牲者の合同慰霊祭に欠かさず参加するようになった。
今年も又、行われる慰霊祭参加に勝仁の思いが高まるのだが、それと同時に手紙に記されている大きな事件への警戒感をも抱くようになった。
大事件はティアマト彗星との関連が有るかもしれないと手紙には記載されているからだ。
作品名:かんなぎ皇女・褐色の破壊神 壱ノ巻 作家名:kazusa