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かんなぎ皇女・褐色の破壊神 壱ノ巻

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 国家再建の為にかんなぎ皇女自らが陣頭指揮を取る事になった。
 嶺翁星のトップに君臨したのだった。

 それは同時に亡き母貴美枝から受け継いでいた平和的且つ穏やかな心境に変化が訪れる時だった。

 皇家の人間で有る前に、高い気品と優しさを持った女性になって欲しい。

 しかも全ての人を愛し、思いやりと優しさを与える素敵な人柄を持つ乙女に。

 幼い頃、かんなぎ皇女や摩耶比売命に託していた母貴美枝の切なる願いである。
 かんなぎ皇女はいつしか、母の願いと熱い思いを忘れてしまうようになったのだ。
 と或る存在が、かんなぎ皇女の心を変えたと勝仁は亡命者から聞いていた。

 播磨羅王バイラス将軍に(サポートとして)様々な助言やアドバイスをしていた銀河仙人の黒龍老が、かんなぎ皇女を強大な支配者に仕立て上げた張本人である事を。
 亡命者は或るタイミングにより、黒龍老がかんなぎ皇女と密会して話しをしているのを盗み聞きしていた。

「何と素晴らしい事だ。ワシが想像していた以上だ」

 かんなぎ皇女の一連の働きぶりに黒龍老は感服し大いに褒め称えた。

 一方のかんなぎ皇女は播磨帝国軍の侵略に疑問を抱いていた。
 単に報復の為、嶺翁星に侵攻して来たと思えない。

 将軍自身が誰かに唆されているように思える。

 …ずっと、こんな疑問を抱いていたのだ。

「まさか、貴様が?」
「鋭い勘だな皇女? 其方(そなた)の推理通り、ワシはあの男に嶺翁神高皇軍への報復を促した」
「何故、そのような事を!?」
「皇女の力がどのくらいなのか、試したかっただけだ」
「だから提督たちを動かしたってワケか!?」
「まあ、そのように思っても差し支えはないであろう」

 黒龍老の身勝手さにかんなぎ皇女の怒りは治まらない事を亡命者は認識した。
 実際にかんなぎ皇女は怒りに打ち震え、鉾を出して刃を黒龍老に向けたのだから。

「貴様のせいだ! 貴様のせいで両軍共に犠牲者を出し、何の罪もない一族の者たちや数多くの民たちが命を落としたのだぞ! 大事な父も殺され、余は提督を殺す羽目になってしもうた!」

 相手の言葉を遮るように黒龍老は声を張り上げた。

「笑止!」
「何ィ!?」
「嶺翁神高皇軍や播磨帝国軍、それ以外も者たちに犠牲が出ようが出まいが、そんなのワシの知った事ではないわ!」
「貴様ッ! 人の命を何と心得ておる!?」