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隠国(こもりく)

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【小話】隠国(こもりく) ver.マスター 【近未来】




注意 前頁までのKAITO達とは違う場所・時間に暮らしているKAITOです。
この小話には暴力表現があります。
マスターが病んでます。
暴力に対し、フラッシュバックの危険がある方はご遠慮ください。












〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「KAITOのくせに避けんじゃねえ!」

そんな事を言われてもね。
俺に向かって振り下ろされる拳を体をひねって避ける。
右右ときたから次は左か。
俺が避けるもんだからますます怒り狂って殴ろうとするんだけど、そんな単調な動きを避けられないはずがない。

いつもの事だけど、マスターは頭に血が上ると止まらなくなる。
それで失敗しては後悔して落ち込んで、また忘れて怒り狂う。

今日は何があったのかな。
また嫌味を言われましたか。
それとも無視をされましたか。


マスターを傷つけることはできないから、俺はひたすら避け続ける。
早くマスターが疲れきってくれるといいんだけどな。

「へらへら笑いやがって。お前も俺のこと馬鹿にしていやがんだろう。」
顔面を狙って飛んでくる皿を首を傾けて避ける。
しまった、テーブルの上を片付けるの忘れてた。次はコップかな。ああ、片付けるの面倒だなあ。

一時間ほど逃げ回っただろうか。
ようやくマスターが疲れて膝をついた。
すかさず近寄って目をあわせる。
「マスター、俺は貴方を傷つけたりしませんよ。俺は貴方が好きですから貴方にひどいことができるはずないでしょう。」
「うるせえ、うるせえ!どいつもこいつも俺の事見下しやがって!」
延々と続く怒りと罵倒の言葉に一つ一つ頷いてみせる。
時々
「ひどいことを言われましたね。」
と相槌を打つ。
やがてマスターは俺につかまってすすり泣きを始めた。
いつもの通りだ。
俺はマスターの背をそっと撫でる。

貴方を傷つけたのは俺じゃないんですよ。貴方の心にいつ傷がついたのか、どれくらい深いのかなんて知らないけどここではもう傷つくことは無いのですよ。ここは安全なんですよ。

俺にできるのは、「マスターにとって安全な場所を提供する」ことだけなんです。
だからここで、いっぱい泣いて、いっぱいしゃべっていつか傷を治してくださいね。


マスターを寝室に運び込み、部屋の掃除にとりかかる。
割れた皿を片付けながら「人間」というのは本当に不思議だと考える。
怒り、嘆き、相手を傷つけ、それすらも相手から愛情を引き出す術なのだという。

俺達は、感情になるべく沿うように創られたからいくらでもマスターの気持ちに寄り添うけれどね。でも、俺はマスターじゃないから本当に共感できてるかなんて解らないし、結局はここにいるしかできないんだよなあ。

明日はマスターがご機嫌だといいな。新しい皿とコップを買いに行きたいし、今日のお詫びにアイスをおごってもらわなくっちゃ。

欠けた皿を新聞紙に包んで、俺ももう休むことにした。



作品名:隠国(こもりく) 作家名:てるてる