電撃FCI The episode of SEGA 3
「全力で……!」
「いくわよ!」
二人は全く同じタイミングで、パワーアップブラストを発動した。ブラストを発動した直後はあらゆる攻撃がすり抜けるため、二人はブラストの波動を当ててより多くのゲージを手に入れる事はできなかった。
地面に足がつき、行動可能となった瞬間、サヤはジャンプと同時に攻撃するが、美琴はその隙間を駆け抜けていった。
距離はかなり離れた。間合いを詰めなければお互いに攻撃が届かない。
しかし美琴には、この遠距離さえもものともしない攻撃手段を持っていた。
「そこを動くな!」
美琴は電気を体内にため込み、もっとも充実した瞬間にそれを放った。
「ゴラァッ!」
喉が潰れそうなほどの叫びを上げ、美琴は遠く離れたサヤへとためこんだ電気を放出した。
「よっと!」
サヤは後ろに飛び退き、電撃をかわした。的を外した電気は地面に弾け飛ぶ。
力の入った攻撃を避けられて大きな隙をさらす美琴へ、サヤは反撃に出る。
刀を脇に構え、つま先を軸にして回転し、刃を斜め上へ振り上げた。
「トンボ斬り!」
瞬間的に音速を超えたサヤの剣からは衝撃波が発生し、美琴へと襲いかかった。
「ふっ!」
美琴は目の前で腕をクロスさせ、更に帯電させた。腕に衝撃波がぶつかった瞬間、美琴は帯電した電気を放出し、バチッと相殺させた。
「なかなかやるじゃない!」
「飛び道具には飛び道具を、ってね。迂闊に間合いを詰めようったって、あなたの能力の前じゃ迎撃されるのがオチだわ」
「なかなかよく考えてるじゃない!? けど確かに、このままバチバチ打ち合ってても戦いにならないわね。なら、これで……!」
美琴は大きくジャンプした。そして電気をまとった右手を大きく振り上げ、一瞬溜め込むと、地面に向けて一気に降り下ろした。
「……こんのぉっ!」
美琴の電撃は一瞬にして落雷と化し、地面へと叩き付けられるように落ちた。落雷を扱っているだけあってか、その発生の速さは、誰もが想像できないほどであった。
しかし、サヤには目で捉えることができていたが、さきほどのようにバックステップでかわせるほど体までは動かなかった。
「ぐう……!」
サヤはとっさに、手元の刀を横にして落雷から身を守った。普通ならば金属である刀は導体となり、そのまま感電してもおかしくはないが、サヤは刀にマナを込めていた。
「ふっ!」
美琴は更に、電気で金属を含む鉄筋コンクリートの瓦礫を空中に集めるとそれを足場とし、蹴りつけた反動で前に跳んだ。
そして手元に電磁力で砂鉄を集め、棒状のものを作り出した。砂鉄剣(エレクトロ・フェンサー)という、美琴の接近戦用の武器である。
「てやっ!」
美琴はそれをサヤに向けて振るった。
「そのくらい……!」
サヤはガードするが、まだ反撃には出られない不利の状況であった。美琴は攻撃と同時に着地すると、着地の瞬間に屈んだ姿勢のまま電気を帯びた手刀を繰り出す。
「ふっ、しゅっ!」
美琴は二発手刀を打つと立ち上がり、斜め前方向に電撃を放った。
「えいっ!」
サヤは一連の攻撃を全てガードしていた。
「やるじゃないの……!」
サヤの前に円形の光りが放たれた。リフレクションガードと呼ばれる防御法で、サヤは美琴を前に押し返す。
そして斜め後ろへジャンプし、美琴からひとまず距離をおいた。
「砂鉄を集めて剣にするなんて、なかなか面白いことするじゃない。しかもその剣、電磁力で超高速振動してる、当たったら首なんか簡単に持っていかれそうね」
サヤは、砂鉄剣を一度受けただけで、その性質まで見抜いてしまっていた。
「驚いたわ、そこまで分かるなんて……伊達に剣士はしていないって事かしら? 確かにアンタの言う通り砂鉄がチェーンソーみたいになってるから、こんな世界じゃなければ当たったらちょっと血が出るかもね!」
美琴は言いながら、砂鉄剣を持ってサヤへと駆け寄った。斬ることはできないにしても、叩き付けてダメージを与えようというつもりだった。
サヤは当たらないようにバックステップで距離を離す。
「逃げんなっ!」
「ふふっ、太刀筋がまるでなってないわね。私からすればあなたの剣は棒振り遊びよ。当たる方がむしろ難しいわ!」
「何をっ!?」
美琴は最後、大きく斜めに砂鉄剣を振り上げた。しかし、サヤには当たるはずもなく、空振りして大きく隙を見せてしまう。
「あなたの能力、超能力者(レベル5)だったかしら? 確かに強力だわ。けれども私の、いえ、私達のドラゴンを狩るための力は、あなたの能力の更に上をいくわ!」
啖呵を切るサヤの側には、ナビ二人の一人、少年型のミロクが控えていた。
「サポートを呼んだのね!?」
「ミロク、お願い!」
ミロクは潜在能力を解放し、自然事象すらもハッキングして操るハッカーの能力を発揮していた。
ミロクの両手には、バーチャルなキーボードがあり、目の前には同じような仮想的なディスプレイまで出現し、ミロクがタイプすると、ディスプレイにいくつものコードが上から下へ流れるように表示されていく。
ミロクがハッキングコードを入力し、コードが適用されると、彼の両サイドのキーボードに一際大きいエンターキーが出現した。
「ハッキング・ワン!」
ミロクは両手の指先でエンターキーを叩いた。その瞬間、美琴の周りの空間にハッキングコードの浮かぶ光輪が出現し、彼女を締め付けようとする。
「これは……!? ううっ!」
ミロクによる精神に作用するハッキングが見事に成功し、美琴は一切の行動を封じられてしまった。
一方的に攻撃を仕掛けられるこのチャンスを逃すサヤではなかった。サヤは一気に近づき、ハッキングの効果が切れる前にコンビネーションを決めた。
「てえいっ、はっ、やっ!」
サヤは足元を薙ぐような攻撃で下段を攻め、斬り上げの要領で縦に、そして力を込めて斜めに大きく斬り込んだ。
「影無し!」
サヤはすぐに切っ先を美琴に向け、袈裟斬りと足元刈りを同時に行った。
「あっ!」
ダメージを受ける美琴であるが、すぐに倒れることができない。
サヤのこの技には強力な作用があり、相手をスタンという状態異常にして、その場でしばらく麻痺させるような縛り付けの効果があった。
サヤはスタンした美琴に向け、連続攻撃を放った。攻撃を受けた瞬間、美琴のスタン状態は解除されたが、サヤは美琴が崩れていく様子を見逃さなかった。
美琴は下段に攻撃を受けると、強制ダウンしかけた。その瞬間をサヤは逃さず、さらに攻撃を加えて、美琴を地面にバウンドさせて宙に浮かばせた。
さらにサポートのハッキングによって動きを抑制され、美琴は回避動作を一切とれず、サヤの攻撃によってどんどん上に運ばれていってしまった。
「たあっ! ぶった斬ったる!」
サヤは頂点まで達すると、体を前に回転させながら袈裟斬りを放った。この攻撃がコンボの締めとなり、美琴のハッキング状態が解けた。
「なんて能力……!」
美琴はようやく体に自由が効くようになり、ダウン回避の受け身を取った。僅かに速くサヤが同時に地面に着地する。
「お願い、ミイナ!」
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗