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電撃FCI The episode of SEGA 3

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 途方もない話を聞かされ、美琴は完全に言葉を失っていた。しかし臨也は何がおかしいのか、ニヤニヤしながら何か納得したように頷いていた。
「なるほど……。となると君はドラゴンから人々、いや、地球そのものを救う救世主というわけだ。そこまで知っていたんなら、少し不思議な事が出てくる。何故、君はナツメって人が世界を、いや、地球を支配しようって考えに荷担し続けていたんだい?」
 サヤは驚きを隠せなかった。
「どうしてそれを知っているの……!?」
「俺に隠し事なんて無駄無駄。彼女の実験の目的は、自らの手でドラゴンに抗う存在を生み出すことじゃない。星一つを破滅の危機に追いやるほどの力を持つドラゴンになって地球を支配する神にでもなりたかった。そうだろう?」
 一体どこからそれを知ったのか、恐ろしくなるほど臨也の言葉は正しかった。
「その様子だと、やっぱり知ってるみたいだね。まあ、知らないはずはないか。君はこの事実を知りながら彼女の計画に協力していたわけだ。機関から抜けようと思えば抜けられたはず。でも君はそれをしなかった。どうしてだい?」
「それは……」
 臨也の指摘は正しく、サヤは返す言葉が見つからなかった。
「ひょっとして、君もナツメのようになりたかったとか? 星に選ばれた特別な人間だからって、みんなにちやほやされたかったんじゃない?」
 臨也は悪どい笑みを向ける。
「ち、違う! そんなんじゃない!」
 臨也は更に追求してくる。
「現に君は、ナツメが組織化したムラクモ機関に残り続けているじゃないか。ナツメ亡き後、君がムラクモ機関を維持しようとしたんじゃない? 壊滅させようと思えばできたはず。けれどそれをしなかった。つまり君は……」
「部外者が、オレらの事全く知らねえくせに、黙って聞いてりゃいつまでも偉そうにしやがって!」
 ついにミロクが憤りを見せた。
「あなたは何も分かっていません。ムラクモ機関は、確かに裏ではひどい改造を行っていた。でもそれは、機関の暗部の人間によるもの。サヤ達十三班は違う……!」
 ミイナも臨也を軽く睨み付けていた。
「サヤは、全人類の希望なのです。そしてサヤはその希望の光として、真竜フォーマルハウトを倒して見せた。サヤは私達のために命がけで戦いました。ナツメ総長と一緒にしないでください!」
「そうだ、ミイナの言う通りだ。サヤはオレ達の未来のために全力で戦ったんだ! ナツメみたいに私利私欲のためなんかじゃなく、ドラゴンに脅かされる人々のためにな!」
 二人から反感を買い、臨也は少し黙った。かと思うと、両手を広げ、軽くため息をつき、首を横に振った。
「おやおや……ずいぶん信頼されてるんだねぇ……羨ましいことに、俺の愛する人間からそこまで信用されてるなんてね。けど、過去というものは不変の存在だ。一生その人にのしかかってくる。決して消えない存在という点では、神に近いのかもしれないと俺は考えてる。悪逆の片棒を担いだ過去は君の背中にずっとあるものなんだよ」
「まだそんな事を……!」
「もういいわ、ミロク」
 サヤはミロクを止め、まっすぐ臨也を向いた。
「あなたの言っていることは紛れもない事実よ、けれど真実ではない。確かに私はナツメの指示にホイホイ従っていたわ。だけど、本心からあいつの思惑に従っていた訳じゃない。あの頃の私には、まだ袂を分かつ自信がなかった。もっと早くに決心していれば、数多くの犠牲を出すことはなかったと思う。だからもう迷わない、私は星に選ばれた『狩る者』として、星を脅かすドラゴンを狩り尽くす。それだけよ!」
 続いてサヤは、美琴に切っ先を向けて言い放った。
「彼から何を言われたのか、だいたい見当はつくけど、間違いなく全て事実よ、残念だけどね。だけど、さっきも言った通り真実じゃないわ。私のこの力、間違ったものかどうか見せてあげる。勝負よ、御坂美琴!」
 サヤのこの言葉を待っていたと言わんばかりに、美琴は不敵な笑みを浮かべた。
「その言葉、ずっと待っていたわよ! やったろうじゃない!」
 美琴は、感情昂り、全身にたぎる電気をバチバチと周囲に放電させた。
「お、おい、サヤ、本気で戦うつもりなのか!?」
「私達の最優先事項は、真竜フォーマルハウト討伐です。このような私闘に、何の意味が……」
「ミロク、ミイナ。意見が割れて、どうしても相容れない時、そしてその意見が絶対に譲れないものの時、そんな時は戦って強い方が決める。そんな選択も必要なの。キリノも言っていたわ」
 サヤは心配そうな二人を落ち着かせ、美琴へと向き直った。
「さて、戦うのはいいけれど、この世界じゃ戦いには妙なルールが発生するみたいね……」
 気が付くと、サヤと美琴には謎の数値やメーターが出現していた。
「ああ、それなら心配ないよ。それは体力のバロメーター、そのすぐ下にあるのはブラストゲージ、一番下にあるのは特殊技を使うためのゲージさ」
 ナビ二人が調査するよりも早く、臨也が説明した。
「……ほんと、何でも気持ち悪いくらいよく知ってるわよね、アンタ……」
「この世界の大体の事はとっくに調査済だよ。いつぞやシズちゃんにばったり出くわしちゃった時、シズちゃんも似たようなのを持っていたからね」
 臨也は得意気に話した。
「まあいいわ。私のやることは一つ、極悪組織に与する悪人を倒す! もう、あの子達のような存在や、非人道的実験をさせるわけにはいかない!」
「思い上がりも甚だしいわね。確かにムラクモ機関は裏でひどい実験をしていた。だけどその諸悪の根元は真竜、私達の正義を見せてあげるわ!」
 サヤと美琴は臨戦態勢に入った。
「臨也、サポートしなさい。サポートキャラだったらメインキャラの役に立ちなさい」
 臨也はやはり、不敵な笑みを浮かべる。
「そこまで言うなら、協力してあげてもいいかな」
「サヤ、この世界の戦いのルールについて分かりました!」
 ミイナが端末を片手に呼びかけた。
「戦いの大部分を担当するのはメインキャラと呼ばれるもので、サポートキャラと一緒でないと戦いが成立しません。そしてメインキャラ級の力を持っているのは、この場ではサヤと御坂美琴です!」
「……なるほどな、差し詰めオレ達はあの男みたいにサポートキャラってとこか。サヤ、オレ達の内どっちをサポートにする?」
 ミロクが訊ねると、サヤはすぐに返答した。
「もちろん二人ともよ。この世界に二人揃って出現したってことは、ここでは二人で一つの存在って事でしょ!?」
「サヤ、なるほど、それは考え付かなかったですね……」
「どこの世界でも、オレらは十三班のナビか。だったらオレとミイナはサポートキャラ『ナビ』だ!」
「全力でサポートしますよ!」
「さあ、行こうぜ!」
 サヤの方もサポートが決定した。イグニッションデュエルは今まさに始まろうとしていた。
「アンタのS級と私のレベル5、本当に強いのはどっちか勝負よ!」
「挑むところよ、返り討ちにしてあげるわ!」
 サヤと美琴は掛け合うと、声を揃えた。
「ラウンドワン……」
「ファイト!」
 サヤ達のラウンドコールと同時に、イグニッションデュエルはスタートした。
 お互いに距離を詰め、攻撃は僅かに届かない位置で同時に立ち止まった。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗