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電撃FCI The episode of SEGA 3

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 美琴の体力のバロメーターはほとんど空であったが、ほんの僅かに倒すまでには至らなかった。まさに皮一枚で繋がった、という状態である。
――まだやれるというの? いや、でも相手は瀕死、何か一発食らわせれば……!――
 コンボが長すぎたために、サヤのクライマックスアーツの威力が少し落ちて引き起こされた事態であった。
 サヤは勝利を確信し、美琴の起き上がりに合わせて小さく跳んで刀を振る。しかし、この軽はずみな行動がある種の奇跡を起こすことになった。
「……ナメんなっ!」
 美琴は反撃行動として、起き上がって動けるようになった瞬間に切り札を発動した。
「なんで……!?」
「ぐうっ!」
 美琴の切り札である電撃を込めたハイキックがサヤに入った。同時にサヤの剣も美琴を打つ。
 二人の体力のバロメーターは全く同時にゼロになった。見事なまでの相討ちであった。
 イグニッションデュエルで非常に稀にしか起こらない、ダブルK.O.が発生したのだ。
 サヤも美琴も、互いに完全にやられたと思っていたが、すぐに体力が回復し、二人に立ち上がるだけの活力が宿る。
「起きなよ、ミコちゃん。どうやら、勝負はまだついてないみたいだよ?」
 臨也が、倒れる美琴の顔を覗き込みながら言った。
「……はっ!?」
 美琴は動けることに気が付き、すぐに飛び起きた。
「サヤ、大丈夫ですか!?」
 ミイナ達が駆け寄ると、サヤは立ち上がる。
「ええ、詰めが甘かったわね……。あそこで秘奥義を強化して倒しきるべきだったわ」
「ダブルK.O. ……相討ちなんてありえるのか」
「私としたことが、相手にチャンスを与えてしまったわね」
 イグニッションデュエルには、通常勝負が決まるはずである第三ラウンドでダブルK.O. が起きた時、特別な最終ラウンドの試合が行われるルールがあった。
 これまで通り、ラウンドをまたぐ際にはイグニッションを決める事ができる。しかし、イグニッションできる総数は二つという絶対的なルールがあった。
 つまり、三つ以上のイグニッションは存在せず。メイン、サポート、ブラストに一つずつ置くような事はできず、メインの場所にダブルイグニッションを行い、ブラストにシングルイグニッションということもできない。
 まして、トリプルイグニッション、などというものは存在すらしない。
 この特別なイグニッションは、選んだものをダブルイグニッションにする効果がある。
 サヤは今、ブラストと自らにイグニッションしている。しかし、これこらどちらかにイグニッションをすることにより、その瞬間に片方のイグニッションはなくなる。そして選んだ方がダブルイグニッションとなる。
 美琴の場合も同様である。美琴は自らにダブルイグニッションしている。そんな中、イグニッションする先を変えれば、自分にイグニッションしている効果は一切無くなってしまう。
「どうする? ミコちゃん。俺にイグニッションしてくれてもいいんだよ?」
 迷っている様子の美琴に、臨也がニヤつきながら訊ねてきた。
 サポートにダブルイグニッションすれば、対戦中のサポートキャラが動けるようになる間隔が普通よりも少なくなる。更に、これはゲージを消費してしまうが、切り札状態の時のようにジャンプしながら呼び出すことができるようにもなる。
 サポート臨也にイグニッションという方法も、選択肢としては十分にあった。
 しかし、美琴は迷っている様な雰囲気を見せながらも、その実迷いなどなかった。
「イグニッションは変えないわ。最大出力で行く!」
 美琴はダブルイグニッションに自分を選んだ。
 臨也は期待はしていなかったものの、選んでもらえず、やれやれと言った様子で引き下がっていく。
「臨也!」
 美琴は臨也を呼び止める。
「あんたにももっと活躍してもらうわよ」
 臨也は小さく笑う。
「ふふっ、お手柔らかに頼むよ」
 美琴は前に向き直ると、サヤに指をさした。
「さあ、私は決まったわよ。あんたはどうするの!?」
 サヤはまだ、イグニッションを決めていなかった。
 先のラウンドで、エスケープブラストを発動してしまったために、ブラストゲージはまだ完全に回復していない。
 しかし、イグニッションをしていたおかげで、回復が遅れるペナルティは緩和されており、またEX技を多用したおかげで、EXゲージは残っていないものの、ブラストゲージの回復に役立った。少し待てばブラストは回復すると思われた。
 ここでブラストにダブルイグニッションしたとしても、あまり得なことはない。むしろ、自身にダブルイグニッションした美琴と、攻撃力と防御力に差が出て不利が生じてしまう。
 選択するのに、迷うほどの事はそれほど大きくなかった。
「プレイヤーダブルイグニッション!」
 サヤも自らにダブルイグニッションした。
「ミロク、ミイナ、勝負が決まる最後の瞬間までサポートお願いね!」
 ナビ二人は強く頷いた。
「任せておけ!」
「必ず勝利しましょう!」
 サヤも二人に頷くと、美琴へと振り返った。
「待たせたわね。それじゃあ始めましょうか!?」
 サヤは刀の切っ先を美琴に向ける。
「これが本当の本当に最後の勝負、絶対に私が勝つわ!」
 美琴はニヤっと笑いながら腕組みをし、体に電気を纏った。バチバチと放電された電気が弾け飛ぶ。
「本気の本気で……!」
「全身全霊を込めて……!」
 二人の声が重なる。
「行くわよ!」
 全てを懸けたファイナルラウンドが今、始まった。
 先に動きを見せたのはサヤであった。クイックフォワードを使い、高く跳びながら美琴との距離を詰め、飛び込みつつ攻撃するように見せかける。
 美琴は、上から来るであろう攻撃に備えて防御を固めた。しかし、サヤは攻撃することなく着地する。そして、美琴に掴みかかろうとするサヤの手が伸びた。
「甘いっての!」
 美琴は電撃を放ち、サヤの手を弾き返した。サヤは電撃を食らわないように少し後ろへ下がった。
「はあっ!」
 美琴は、小さく放物線を描く電撃を放った。しかし、地面に電気が落ちる時には既にサヤの姿はなかった。
 不意に美琴の背後からとっ、と何かが着地する音が聞こえた。それが美琴を飛び越して後ろを回ったサヤの立てた音だと分かったのは、そのまま後ろから攻撃を受けた後だった。
「しまっ……!?」
 攻撃を外して隙を見せる美琴に、サヤのコンボが決まる。
「テンポ変えようか!」
 サヤはインパクトスキル、影無しまでコンボを繋げると、即座に納刀し、敵を打ち上げる波動を全身から放った。
 サヤの二つのEX技の一つ、居合いの技を強化することによって発動できる技、不動居には、覇気で敵を吹き飛ばす以外にも特別な効果があった。
「十六手……!」
 サヤは刀の柄を逆手に握り、吹き飛ぶ美琴に超高速で抜刀した。瞬間、剣閃が煌めき、美琴を多方向から斬撃が襲いかかる。
「……アンタ、詰んでるよ!」
 サヤは納刀していた。
 抜刀するかという挙動を見せたかと思うと、まるで目に捉えられないほどの速さで全ての攻撃を終わらせ、納刀するところまで一瞬で行っていたのだ。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗