電撃FCI The episode of SEGA 3
今、この場は本当の東京ではないが、地球の物理法則は働く上に、絶無フォーマルハウトほどの攻撃を受ければ、地球の破滅は免れない。
どうあがこうとも、サヤ達に待ち受けるのは死であった。
「フハハハ! 死ねい!」
絶無フォーマルハウトが、サヤ達を東京ごと破壊しようとしたその時だった。
「させません!」
聞き慣れぬ少女の声がしたかと思うと、辺りは再び不思議な空間となった。
メインキャラの二人には体力のバロメーター、並びに二つゲージ、二本の切り札が出現した。
「ガードしてください!」
サヤと美琴の二人は言われるままに守りの体勢を取る。
「何っ!?」
絶無フォーマルハウトの、クライマックスアーツなみの攻撃は二人に防がれ、大技を出した反動で動きが固まってしまった。
「今です、リバーサル攻撃です!」
少女の声は攻撃を指示する。
「なら私が全力で行かせてもらうわよ!」
美琴がコインを弾きあげ、腕に強力な電気を纏って磁界を作り、コインがその磁界に入り込んだ瞬間、一気に撃ち出した。
「うごおおお……!」
美琴のクライマックスアーツ、超電磁砲(レールガン)が見事に炸裂した。
美琴との体格の差は圧倒的にも関わらず、絶無フォーマルハウトは、吹き飛ばされ地を転げた。
美琴の放った超電磁砲(レールガン)の通った後から煙が上がる中、まるでオーラのようにバーチャルなディスプレイを身に纏う少女が姿を表した。
白とオレンジを基調とした衣装に身を包み、首回りに巻いたケープとオレンジの渦巻き状の模様のあるベルト、頭に着けたコントローラのような飾りと、その特徴は非常に目を引くものがある。
特にも彼女を特徴付けていたのは、毛先がやはり、渦巻きのようにカールしたピンクのツインテールであった。
「そこまでです、絶無!」
少女は絶無フォーマルハウトを指差して言い放つ。
「ぬうう……! 電神! 力を取り戻したというのか!?」
サヤ達の前に現れ、空間を変えて助けに入ったのが、絶無と対になる存在である電神、またの名をドリームキャストといった。
「電神、あんた……」
電神ドリームキャストは、美琴を振り向くと、小さく笑った。
「あの時、絶無の言葉に揺らされなかったあなたのおかげで、一度は絶無を破ることができました」
ですが、と電神ドリームキャストはすぐに真顔になる。
「この世界にはまだ絶無が糧とできる、大きな絶望の残る場所が残っていました。それがここ、ドラゴンに支配された丸の内です」
何故絶無が、フォーマルハウトの姿を取ってここに現れたのか、その真実が電神ドリームキャストから語られた。
「一度は美琴さんによってあなたは討たれた。ですが、完全に消えるまでには至らず、ここに残る大きな絶望を糧に復活の機会を窺っていました。いくら私の力が弱まってしまっていたとはいえ、完全に盲点でしたよ」
この世界には、様々存在する世界の一部分が点在しているが、この二千二十一年の東京ほど脅威にさらされている場所はなかった。
絶望の糧を得た今の絶無には、かつて打ち勝つことができた美琴であっても倒せる見込みはゼロに等しい。
しかし、今は美琴と同様に希望の担い手と呼べる者がいる。
本物の神体フォーマルハウトをその手で討ち取り、東京に二度目の平穏の時をもたらした。
サヤこそが、美琴に次ぐこの世界の希望の担い手であった。
「美琴さん一人では、今のあなたを倒すことは難しいかもしれません。ですが、今はもう一人、希望の担い手がいます。それがサヤさんです!」
電神ドリームキャストは、絶無フォーマルハウトに向けて指をさす。
「絶無、二人の担い手と私の力によって、今度こそ消えてもらいます!」
電神ドリームキャストは言い放った。
「ふふ……どうやら、ずいぶん頼りにされているみたいね。こういう風に頼られるの、嫌いじゃないわ」
美琴は得意気に笑う。
「威勢が良いのはいいことよ。けど、みんなの願いには応えなきゃいけない。全人類の願いを託されるってのはこんなもんじゃないわよ」
サヤは美琴の軽口を注意した。
「言われなくても、分かってるての」
美琴は軽く聞き流した。
「ふん、調子に乗るなよ凡愚どもが! 希望の担い手が二人も現れてしまったのは誤算であったが、私とて力を蓄えた。この世界ごと貴様らを吹き飛ばすことなど造作もないわ!」
絶無フォーマルハウトは空高く上昇し、再び負のエネルギーを纏い始める。
「まずいわね、またあれが来る!」
「美琴、ガードよ! 今の状態なら受けきれるはず!」
サヤと美琴は、皆の前に立って防御姿勢を取る。
「フフフ……! 果たして今度はそう上手く行くかな!?」
絶無フォーマルハウトは、上空からサヤ達に向けて不気味な波動を放ってきた。
「いけない! あれは……!」
電神ドリームキャストは叫ぶが、その時には既に二人は波動を受けてしまった後だった。
「くっ! ……う、ん?」
「何よ、何ともないじゃない?」
二人に異常はなかった。しかし、実際には深刻な事態が起こっていた。
「二人とも、逃げてください! 絶無が出した波動は私の力の加護を打ち消すものです! 今の状態であの攻撃を受けたら、本当に世界ごと……!」
電神ドリームキャストは、事態の詳細を語った。するとすぐに、サヤ達は自らに起こっている状況を理解した。
イグニッションデュエルのルールがまた全て解除され、普通の世界と同様、死が起こりうる状態となってしまったのである。
例え絶無フォーマルハウトの攻撃を防ぎきれるだけの力があったとしても、世界そのものを破壊されれば誰も助からない。まさに状況は絶望的だった。
「フフン、世界ごと俺達を消し去る、か。いかにも化け物らしい。けど、世界を消すって事は、君が存在することもできなくなるんじゃないかい、絶無?」
臨也が言う。彼の言う通りであれば、絶無フォーマルハウトの存在できる世界もなくなり、絶無の存在も消えてなくなる事になる。
「私は絶望より出でる存在、絶無! 他の世界にも絶望の心を持つものがいれば、私は何度でも蘇るのだ! フフフ、臨也よ、私が世界ごと貴様らを消すと言うのは脅しだとでも思ったのか?」
これを聞かされ、臨也も流石に余裕ではいられなくなった。
「化け物と心中だなんて、こんなこと……!」
「さあ、おしゃべりはここまでだ。消え失せよ!」
絶無フォーマルハウトは空中を旋回し、自らの体を槍のようにする。
「魔槍・フォーマルハウト!」
自らの頭を穂先とし、そこに負のエネルギーを集中させ、絶無フォーマルハウトは地を目掛けて急降下した。
「ぐっ……!」
美琴はコインを構えた。しかし、超電磁砲(レールガン)を撃ったところで、絶無フォーマルハウトは止められないと本能で悟った。
「……どうやら、これを使うしかないようですね……」
ふと、ミイナが呟いた。
「サヤ、ゲージを二本私にください!」
イグニッションデュエル状態は解かれたものの、ゲージだけは何故か残っていた。
それは、この世界の理から外されたのは、サヤと美琴であり、サポートや電神ドリームキャストにはまだルールが適応されていたためであった。
「ミイナ、まさかあれを!?」
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗