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電撃FCI The episode of SEGA 3

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 記憶も強い想いとなれば、実際のものとなりうるのが、この世界の理であり、故にサヤの強い意志が竜殺剣を出現させた。しかし、所詮は記憶の産物である。サヤの記憶以上のもの、例えば半永久的、もしくは永久的に振るえる代物にはなりえなかった。
 サヤは鍵のような竜殺剣の切っ先を絶無フォーマルハウトに向け、急所である眉間を外さないように狙いを定める。
「歯ァ、食い縛りなさい!」
 サヤは、竜殺剣の刃を立て、中心部にドリームブレードの切っ先をなぞらせるように添える。
 そして、絶無フォーマルハウトに向けて地面を蹴った。
「ぬうう……! 近寄るなぁ!」
 絶無フォーマルハウトは、身動き取れない状態でもサヤを迎撃しようと、口を開き衝撃波を放つ。しかし、威力はほとんど出ない上に、竜殺剣の前ではドラゴンの力など全くの無力であった。
 まさに鉈が青竹を割るかのように、サヤの竜殺剣は絶無フォーマルハウトの衝撃波を真っ二つにしていく。
 そしてついに、竜殺剣は絶無フォーマルハウトの眉間を貫き通した。その様子は、鍵穴に鍵を差し込むのと変わらないほど簡単に、竜殺剣は突き刺さっていった。
「ぐああ……ご、お……!」
 竜殺剣を鍔まで到達するほど深く眉間を貫かれた絶無フォーマルハウトの体は、竜殺剣を形作っているオリハルコンと同化していき、パキパキ音を立てながら、凍り付いていくように水色になっていった。
 サヤは竜殺剣の柄から手を離した。そして右手に持っていたドリームブレードをゆっくりと上段に上げ、斬り込む間合いを調節すべく後ろに少し下がった。
 サヤはドリームブレードへとマナを込めた。同時に自らの夢、そして希望をこの一刀に託す。
――私は絶望しない。どんな逆境に立たされようとも、強大な敵を前にしても……!――
「剣が光った!?」
 美琴が叫んだ。
「ふふ……夢や希望の力ってやつ? そんな形のないものにも信頼することができる……ははっ! これだから人間ってやつは大好きなんだ! だから、人間からそれを奪おうなんてやつは倒しちゃってよ! アハハ!」
 臨也はさもおかしく笑った。
「サヤ、今のお前にしか絶無は倒せない。頼んだぞ!」
「私達の希望を全て託します。だから、必ず勝って!」
 ミロクとミイナはサヤに声援を送る。
「……私もヤツとは戦ったってのに、すっかりおいしいところ持ってかれちゃったわね……まあいいわ。サヤ、今回はアンタに譲るわ。ギッタギタにしてやりなさい!」
 ここにいる者達の希望を一身に受けて、ドリームブレードは更に輝きを増す。そしてサヤは皆の応援に応えんと、絶無フォーマルハウトへ止めの一撃を与えようとした。
「ぐごご……よ、よせ……止め、るの、だ……!」
 オリハルコンの中に固まってしまった絶無フォーマルハウトの声は、最早声になっていなかった。
「弾けろぉ!」
 サヤは、光輝くドリームブレードを降り下ろしつつ両手で握り、非常に大きく一歩踏み込み、袈裟斬りを放ちながら絶無フォーマルハウトを斬り抜けた。
「グオオオオ……!」
 ドリームブレードの軌跡が走ると共に、絶無フォーマルハウトの断末魔が上がった。
 オリハルコンと一体となった絶無フォーマルハウトの体は、ドリームブレードによる一閃により、木っ端微塵に砕けていった。
 水色のオリハルコンとなった絶無フォーマルハウトの砕けていく様は、空気を凍結させるダイヤモンドダスト現象のようであり、空間をキラキラと彩るのであった。
    ※※※
 絶無フォーマルハウトを討ち取り、役目を終えたドリームブレードは、サヤの手からキラキラと光の粒になって消えていった。
「お役御免だって分かるのかしら?」
 サヤが手を離すとすぐに、残ったドリームブレードは消えた。
「そういえば、あの盾……」
 美琴は、はたと気が付いた。
 美琴は、電神ドリームキャストからホープシールドを授かったが、いつも撃っている超電磁砲(レールガン)の更に高威力にするためにその盾を弾にしてしまった。
 音速の三倍にもおよぶ速度で放たれれば、ホープシールドといえども、形をとどめていられるはずがなかった。
「それなら心配ありませんよ」
 電神ドリームキャストが言う。その手元にはホープシールド、そしてドリームブレードがあった。
「あれって!?」
「驚きましたか? この通り無事ですよ。お二人の活躍のおかげで」
 電神ドリームキャストは笑顔で、気にかかる言い方をする。
「私達の、活躍?」
「一体それはどういう……」
 サヤも美琴も意図を掴むことはできなかった。
「お二人がどんな局面でも諦めず、前を向いて絶無を打ち倒しておかげで、夢と希望を失わずにすみました。だからこそ夢と希望の賜物であるこの剣と盾は、決して失われずに済むのです」
 サヤと美琴は、得心がいったのかいっていないのか、自身でもよく分からない心地であった。
「とにかく、サヤさんと美琴さんのおかげで絶無は消え去りました。本当にありがとうございます。これで絶望に沈む人、夢を諦める人は少しずつでも減っていくでしょう」
 電神ドリームキャストは、ドリームブレードとホープシールドを消し、空中に指先で渦巻きを描いた。すると、辺りの空間が少しずつ消え始める。
「ああ、どうぞ驚かないでください。絶無が作った世界を消して皆さんをもとの世界に戻そうとしているだけですから。名残惜しいですが、異世界を長く残すわけにはいかないので……」
 電神ドリームキャストは絶えず笑顔を見せているが、その笑顔の裏には、やはり寂しそうな感じが見てとれた。
 ふと、サヤは絶無フォーマルハウトが消えていった所に、何かが転がっているのを見つけた。
 歩み寄ってみると、それは一度、竜殺剣に変化させたサヤの愛刀であった。
――竜殺剣と一緒に消えたかと思ってたわね……――
 サヤは刀を拾い上げた瞬間、あることを思い出した。
「ねえ、美琴」
 サヤは呼びかける。
「何よ?」
「私達の勝負、そういえばまだ決着ついてなかったわよね?」
 二人のイグニッションデュエルは、絶無が突然割り込んできたせいで、無理矢理中断させられていた。
 ダブルK.O. まで起こってからのファイナルラウンドの途中であり、決着がつかなければ非常に後味の悪い事になるであろう。
「そうねぇ、絶無のヤツを倒すのは譲っちゃったし、私としても不完全燃焼ね。いいわ、やったろうじゃない!」
 美琴も同感であり、イグニッションデュエルの再開を所望した。
 しかし、戦うにしても、大きな問題があった。
「お二人ともまた戦うつもりなのですか!? ですが、世界を元通りにする術は使ってしまいましたし、この世界が残り続けるのはもう五分も残っているか……」
 絶無の生み出したこの世界は、絶無がいなくなったために存在が不安定であり、世界に呼ばれた人々を安全に帰すには、電神ドリームキャストの力が必要だった。
 そしてその力は発動され、ここにいる者全員が少しずつ消滅しはじめている。
「ふーん、五分、ね……」
 一部が半透明になり始めた体に一瞬驚きながらも、美琴は得意気な表情を浮かべて腕を組んだ。
「それだけあれば十分決着が付けられるわね……!」
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗