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電撃FCI The episode of SEGA 3

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 臨也の言い分は理解できる。
 ドラゴンは、人間なんかよりよっぽど巨大な体躯をし、その表皮は頑丈な鱗に包まれ、それは銃弾さえも容易く弾き返すと思われる。
 しかし、そんなドラゴン相手であっても、美琴の電撃の前ではいとも容易く倒れていった。
 その容易さは、ドラゴンはただ、周囲の雰囲気を出すためのハリボテではないかと思われるほどだった。
 しかし、相手が人間となると、話はがらりと変わる。
 メインキャラ級の人物、それを助けるサポートキャラが合わさることによって
、ようやくまともな戦いになる。
「俺はどうやら、サポートキャラとして呼ばれたみたいなんだ。けれど、君の知っての通り、サポートキャラだけじゃ、この世界の戦いは成り立たない……」
 美琴は臨也の言う取引の内容が理解できてきた。メインキャラの美琴、サポートキャラの臨也、二人が手を組めば、人間が相手になってもまともな勝負となる。
「どうだい、ミコちゃん。ここは俺と手を組んで上手くやっていこうよ?」
「…………」
 美琴は安易に誘いに乗らず、少し考えてみることにした。
 確かに、臨也の言う通り、この世界ではメインキャラであってもサポートキャラがいないことには、例えドラゴンを倒せるほどの力があっても人間が相手になると勝負にならない。
 しかし、サポートキャラといっても、上手く使いこなせるほど相性がよくなければ、やはり対戦で優位に立つことは難しい。
 しかし何よりも、美琴を悩ませていたのは、臨也が何故、自分の所へやって来たのかという事である。
 確かに美琴は電撃使い(エレクトロマスター)超能力者級(レベル5)である事には自信を持っている。その能力を買ってもらえるのには悪い気はしない。しかし、それ以上に気になるのは、何故臨也がこの世界に存在する、ムラクモ機関を知っていて、そして潰そうとしているのか、ということである。
 臨也は、人間を愛しているなどと言っているが、それが本心なのか分からない。例え本心だったとしても、それはそれで危うい感じがする。
 臨也の取引を受けることは、何か危険な事に繋がるのではないか。美琴が黙して考えていると、美琴は後ろから不意に殺気を感じた。
「キシャアアァァァ!」
「なっ!?」
 先ほどの超電磁砲(レールガン)で一掃したはずのドラゴンの生き残りがまだ存在しており、その爪で美琴を引き裂こうとしていた。
 不意を突かれ過ぎて、美琴は一切の迎撃体勢を取ることができなかった。超電磁砲を撃つどころか、ドラゴンを気絶させられるほどの電撃も放つことができない。
 美琴に最大の危機が迫ったその時だった。
「ダメだよー!」
「ガアアアア……!」
「えっ!?」
 臨也はドラゴンの額に、ナイフを放っていた。そしてどこから取り出したのか、同じ形のスローイングナイフをいくつか取り出し、壁を伝ってジャンプしてナイフを投擲し、宙返りしながらドラゴンへとナイフの雨降らせた。
「そこが心臓かな!?」
 臨也は着地すると、とどめのナイフを放った。狙いは見事に的中し、ドラゴンはその場に沈んだ。
「どうかな、こう見えて俺、戦うこともできるんだよ?」
 臨也はナイフを手の中でくるくると回しながら、得意気な表情を美琴に向けた。
「少なくとも、君の足手まといにはならないつもりでいるよ」
「あんた、一体何者よ? 無能力者(レベル0)の一般人とは思えない……。空間移動(テレポート)の使い手なんじゃないの!?」
 瞬時にいくつものナイフを取り出す技術は、空間移動(テレポート)や座標移動(ムーブポイント)の能力でもなければできないはずの動きだった。加えてあの動き、特別な技術でもなければできそうにないものだった。
「テレポート? ハハッ、俺にはそんな力ないよ! まあ、俺は頭脳派だけど、伊達にシズちゃんとやりあってないよ。どうかな、俺をサポートキャラにしてみないかい?」
 一般人ならば、美琴の戦いにはとても付いてこれないことだろう。しかし、この青年はドラゴンを目の前で倒して見せた。少なくとも戦闘では役に立つ事だろう。ろくな力を持たずに謎の特殊機関とやり合おうなどという絵空事を言っているようでもなかった。
「……分かったわ、あんたをサポートにする。取引成立よ、話しの続きを聞かせてもらえるかしら?」
 臨也は計算通り、といったように笑う。
「そこまで言うなら、協力してあげてもいいかな」
「さんざん頼み込んで来たのはあんたの方でしょうに……まあいいわ、ムラクモ機関、だったかしら? それのリーダー格が分かってるんだったわよね?」
 美琴は臨也の態度に内心イライラしながらも、ここは臨也の話を聞いておこうとした。
「ああ、俺はフェアだからね。取引をしてくれたからには俺も包み隠さず話そう。ムラクモ機関の切り札(エース)、それは機動十三班。異能力者で編成された戦闘集団さ」
 通称ムラクモ十三班と呼ばれる集団は、先天的に異能力を持つ者が集まる集団だった。そしてその十三班をまとめるリーダーがいる。
「ムラクモ十三班リーダーの名前は刀子沙耶(かたなこさや)。仲間からはサヤって呼ばれてるみたい。珍しい現代に生きるサムライだってさ」
「刀子、サヤ……」
 その人物がムラクモ機関の頭目であるならば、臨也の言っていた人体改造を肯定している許すまじき人物である。
「そいつも実験に参加してるわけ?」
「さあ、さすがに俺でも組織の正確な内部事情までは手に入れられなかった。けれど、その子なら何か知ってるんじゃないかな?」
「……だったら、直接締め上げて全容を明らかにしてやるまでよ。臨也、ムラクモ機関の本拠地は知ってるんでしょ? 案内して」
「その必要はなさそうだよ?」
 臨也は大仰に両手を広げる。
「彼女達、シンリュウ? とかいうやつの反応がここ、丸ノ内にあったとかで、ここに向かってきているからね。そのうち会えるんじゃないかな?」
「デタラメ言ってんじゃないでしょうね?」
 常にニヤけた顔の臨也の言うことはどうにも信用ならない。美琴は僅かに苛立ちを覚えた。
「まあ、そんなに怖い顔しないで、きっと会えるよ、二人はね。巡り合わせってのが君達を繋いでいる、そんな気がするんだ」
 美琴は言葉を失い、沈黙する。
「まあ、取り合えずここを移動しよう。楽に倒せるとは言っても、ドラゴンなんかを何度も相手するのはタルいからね」
 それについては美琴も賛成だった。
 ドラゴンは見た目こそゴツく、実際にはただの置物にも等しいほど無力ではあるが、ぞろぞろと集まられては厄介なのも事実だった。
「ひとまず駅舎内から出よう。駅の入り口にいれば、ムラクモに見つけてもらいやすいかもよ?」
「そうね、ここにいたら、ドラゴンに見つかるわね。無駄な消耗は避けたいところだわ……」
「よし、それじゃあそうと決まったら早速行こうか、ミコちゃん」
「そのあだ名で呼ぶな、私には御坂美琴って名前があるんだから!」
 馴れ馴れしくミコちゃん、などというあだ名で呼ぶ臨也に、美琴は釘を刺した。
「ハハハッ! 別にいいじゃない。ミコちゃん、かわいい名前だと思うけど?」
 臨也に改める気はさらさら無いようだった。これ以上問答しても無駄と感じ、美琴はため息をついて諦めた。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗