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ヒカリ 4

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スープを一口飲んで素直な感想を述べるアムロにシャアとララァの表情が和らぐ。
スープと一緒に玉子のサンドウィッチを頬張るアムロの口から「懐かしい…」と呟く声が聞こえた。
「懐かしい?」
「あ、えと。そんなに懐かしいってほど前じゃないんですけど…、幼馴染みの子がよく玉子サンドを作ってくれたんです。」
アムロが玉子サンドを懐かしそうに見つめる。
「幼馴染み…?ああ、もしかするとあの時に君を庇ったあの少女か?」
「ええ…、そうです。隣の家に住んでいた子で、親父が留守がちな僕を心配して、いつも世話を焼いてくれました。」
ーーーまだ、戦争に巻き込まれる前の、ニュータイプ能力に覚醒する前の僕の日常…。
まだ数ヶ月しか経っていないのに、僕は随分遠くまで来てしまった気がする。

この数ヶ月で、僕は一体どれだけの命を奪ったのだろうか…。
真っ赤に染まった僕の両手。こんな手じゃ、母さんに見捨てられても仕方がない。
こんな僕なのに、あの時フラウは身を呈して僕を守ってくれた。
ブライトさんも自分が命令したからだと、自分が代わりに捕虜になると言ってくれた。
みんな…大切な仲間だ…。

「木馬に帰りたいか?」
黙り込んでしまったアムロを見つめてシャアが言う。
『みんなに会いたい…。でも…』
アムロは少し考えてからゆっくりと首を横に振った。
「今は…貴方とララァの側に…いたい…。」
「…そうか…。」
少しほっとした様に答えるシャアにララァが微笑む。
「さぁ、食べましょう!」
ララァの笑顔に、アムロもそっと微笑んだ。



けれど、アムロには分かっていた。
これが偽りの…、一時の儚い幻の幸せなのだと。

『シャアは僕に人の温もりをくれた。僕をニュータイプという兵器ではなく、人として扱ってくれた。そして、ここには僕を唯一理解してくれるララァがいる…。』
そう自分に言い聞かせていた。

しかし、現実はおそらく違う。
今まで行われてきた《検査》が僕の為などでは無く、ニュータイプ能力を戦争の道具として使えるかを調べるものだということは薄々気付いていた。そして、今日のサイコミュの検査で確信してしまった。
これはニュータイプ能力を“兵器”として使う為の“武器”を開発する《実験》なのだと…。
連邦もジオンも変わらない。
今、この戦時下ではニュータイプは戦闘兵器でしかないのだ…。
でも…、シャアを信じたかった。この人は僕やララァを“兵器”になどしないと…。


数日後、全ての検査を終えたアムロは再びムサイへと乗り込み、シャアの次の任務地であるア・バオア・クーへと向かった。
その際、ララァとフラナガン博士も共に乗艦した。
「何故ララァと博士が?」
「二人にはやってもらう事があるのでな。」
「…そうですか…」
シャアの含みのある言い方に、おそらく「何を?」と聞いても答えて貰えないだろうと思い、アムロはそれ以上聞く事が出来なかった。
それに…聞いてしまえばこの夢は終わってしまう様な気がしたから…。


任務地に到着すると艦内が俄かに騒めき、緊張感が漂ってくるのがわかる。
それを肌で感じながら戦闘が始まるのだと直感する。
アムロは昨日からずっと自室での待機を言い渡されている。捕虜だから当然なのだが、外から鍵も掛けられて出ることも出来ない。
艦内の緊迫した空気と嫌な予感に息苦しさを感じてアムロは制服の襟を緩めた。
「戦闘が…始まる…。」
ベッドに座り、震える身体を両手で抱き締める。
すると、ノックと共に扉が開く。
「アムロ!」
部屋の中にララァの優しい声が響き渡り、アムロの緊張がスッと引いていく。
「…ララァ!」
アムロは立ち上がるとそのままララァに抱きついた。
その縋る様なアムロの様子に、ララァは悲しげに微笑み、アムロの背中を優しくさする。
「アムロ…、不安なのね。」
「…ララァ…、ララァ…僕…」
アムロは顔を上げるとララァの瞳を見つめ、言葉を紡ごうとするが言葉が出てこない。
そんなアムロの頬を両手で優しく包み込むと、そっとその唇を己の唇で塞いだ。
二人は抱きしめ会い、ただひたすら互いの唇を求め合う。
アムロの心が落ち着いてくると、ララァはそっと唇を離し、アムロの瞳を見つめる。
「本当にアムロは綺麗な瞳をしているわね。穢れのない、美しい光を湛えた琥珀色の宝石のよう。」
「そんな…僕なんて…綺麗なのはララァだよ。翡翠みたいにキラキラしてて…、魂も綺麗で…本当は僕なんかが触れてはいけないんだ…。」
「ふふ。私とアムロは同じよ。きっと本当は一つの魂だったのよ、それが二つに分かれて私とアムロになったの。」
「…本当は…一つ?」
「ええ、でなければこんなに魂が惹かれ合ったりしないわ。私はいつかアムロの中に還るの…。」
「僕の…中に?そんなの嫌だよ。ララァはララァのまま傍にいて欲しい。」
「…アムロ、人の魂には光が宿っているの。その淡く暖かい光の一つ一つが自然に惹かれあって導かれて、重なり合って世界を作っている。」
「世界を…?」
「そうよ。それに、姿形が変わって抱きしめられなくなっても同じ光で傍にいるから大丈夫よ。」
「ララァ…?」
ララァはそっとアムロを抱き締める。
「ああ、大佐は私とアムロが一つの魂だと分かっているから一緒に傍に置いてくれたんだわ。そして、私たちは大佐の光に導かれてここに辿り着いた…。全ては運命だったのよ。」
「運命?」
「ええ、私たちは出逢うべくして出逢ったの。そして、アムロとホワイトベースの人達もそう、みんな導き合って出逢ったのよ。」
「ホワイトベースのみんなも?」
「そうよ。だからアムロはその運命に従って歩めば良いわ。たとえ、心が音を立ててきしむような絶望に襲われたとしても、みんなの心の光が希望の光となってあなたを包み込んでくれるから…。」
そのララァの言葉はアムロの心の中にスッと溶けていく。同じ魂を持つ二人だからこそ、同調し合い、共鳴していく。
「ララァ…。」
「ふふ、私の可愛いアムロ。大好きよ。」
ララァはそっとアムロの額にキスを贈る。
「アムロ、忘れないで。私はいつも貴方の傍にいるわ。」
ララァはそう告げると、微笑みを残して部屋を去って行った。
「ララァ…」
そして、それが“ララァ”の姿を見た最後だった…。


その夜、アムロの元にシャアがやってきた。
シャアは部屋に入るなりアムロを抱き締めるとそのままベッドへと押し倒した。
「アムロ…」
言葉少なにひたすらアムロを求める。
いつもの余裕はなく、貪るようにアムロを掻き抱くシャアからは戦場に赴く前の高揚と焦燥がない交ぜになったような感情が流れ込み、アムロはただ、必死にそれを受け止めた。
アムロの中で熱を弾けさせ、荒い息を吐くシャアの頭を自分胸に抱き締める。
「シャア…」
「どうした?アムロ」
シャアが優しく慈しむような瞳をアムロに向ける。
そのシャアの中にアムロは赤と金色の混じった美しい光を感じた。
『ああ…これがララァの言っていた魂の光…』
「…綺麗だ…」
シャアの魂の光をとても美しいと思った。力強く輝くその光は僕を惹き寄せてやまない。
「アムロ?」
「ふふ、何でもありません。」
「…ふう、ララァと同じ事を言うのだな。」
作品名:ヒカリ 4 作家名:koyuho