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ヒカリ 5

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「シャ…ア…?」
ベッドにぐったりと身体を預けるアムロを見下ろす美しい男は自分の口元を腕で拭うとアムロの頬を優しく撫ぜる。
「何…飲ませた…の?」
虚ろな瞳で見上げるアムロにシャアは優しく微笑む。
「少し眠くなるだけだ。ゆっくりおやすみ。君が目覚めた時には全てが終わっているさ…。」
「全てが…終わ…る?」
その言葉にアムロが目を見開く。
「貴…方!…何をする気ですか!?ララァは!?」
ララァの名にシャアの眉がピクリと反応する。
「…まさかララァを出撃させるつもりですか!?」
シャアは何も答えずアムロの肩をぐっとシーツに抑えつける。
「やめて下さい!ララァは戦いをする人じゃない!!僕みたいに汚れちゃいけないんだ!」
肩を抑えつける腕を退かそうとするがビクともしない。
「離…して!シャア!ニュータイプは…ララァは殺し合いの道具じゃない!どうしても必要だって言うのなら…それなら…僕が代わるから!!」
シャアはアムロの琥珀色に輝く瞳を見つめながら、抑えつける腕に更に力を込める。
「痛っ」
「アムロ…君に仲間が殺せるか?」
シャアの言葉にアムロの身体が固まる。
「な…に…?まさか…ホワイトベースが此処にいるのか!?」
「ああ。我々が今いる宙域にあるジオンの要塞《ア・バオア・クー》はジオン軍と連邦軍との最終決戦の場だ。双方全勢力が集結している。連邦はおそらくモビルスーツ隊を要塞に取り付かせ内側から攻撃しジオン軍を殲滅する気だ。」
「なっ!?そんな無茶な!」
「無茶でもそうする以外連邦軍にはもう手が無いからな。当然木馬のモビルスーツ隊も特攻を仕掛けてくる。ララァにはそれを迎撃してもらう。君に仲間が撃てるか?」
「そんな…」
茫然とするアムロの目をシャアは手のひらで覆い隠す。
「出来ないだろう?だから君は此処で眠っていたまえ。身が覚めた時には全てが終わる。」
シャアは全てに目を閉じて僕に仲間を見殺しにしろと言っている…。
『…なんて…酷い…。この人なりに僕を守ろうとしてくれているのはわかる…。でも、それは間違ってる。それじゃダメなんだ…!』
シャアは手のひらに暖かく濡れるものを感じる。
それは後から後からか溢れ出し、手のひらの隙間からアムロの頬に伝い落ちてゆく。
「アムロ…。」
薬が効いてきたのかアムロの身体から力が抜け始める。それを感じ取ったシャアは目を覆う手を離すと、そっとアムロの瞼に口付ける。
「すまない…。アムロ。」
そう告げるとマスクを嵌め、部屋を出て行った。
残されたアムロはベッドに仰向けのまま涙を流がし続ける。
「それじゃ…ダメだ…。僕には受け入れられない。みんな…大切な人達なんだ…。」
アムロは必死に起き上がるとベッドサイドのチェストからペンを取り出し、自分の太ももへと突き立てる。
「あうううっ!」
激しい痛みに耐えながらゆっくりと起き上がると制服を身に付け立ち上がる。
「はぁ…はぁ…、ララァに…人殺しなんてさせない…、みんなを死なせたり…しない!」
床に血がポタリポタリと滴り落ちる。
「シャア!!貴方を…信じてた!…でも…やっぱり貴方は…!」
アムロは歯を食いしばり壁に拳を叩き付ける。
「シャア!!」
絞り出すように叫ぶアムロの声が宇宙に響き渡る。

「アムロ!?」
その声がセイラの耳に届く。
セイラは宇宙を見渡しアムロの気配を探す。
「何処なの!?アムロ!やっぱり近くにいるのね!」
必死にアムロに呼び掛けるが返事は返ってこない。
同じ頃、ミライもアムロの声を感じ取っていた。
「アムロ!」
その声にブライトが反応する。
「ミライ!?」
「アムロが…、アムロの声が聞こえた気がするの…。とても悲しい声が!!」
こめかみに手をあて周囲に意識を向ける。
けれどセイラ同様それきりアムロの声を感じる事は出来なかった。
「アムロは生きているのか?無事なのか?近くにいるのか!?」
心配気に聞くブライトにミライは曖昧な表情を浮かべて微笑む。
「多分…。でも…とても辛い思いをしているかもしれない…。」
伝わってきたのはそれ程に悲しい思惟だった…。


アムロは自室の扉のロックを解除する為、コードを入力する。
毎日コードは変更されるがシャアやララァ、衛兵が出入りする際に盗み見てそのパターンを確認していた。
入力コードはアムロの思った通りのコードでOPENボタンを押すとピピっと音を立て扉が開いた。
アムロは連邦の制服の上からジオンの制服を羽織り、フラつく身体を叱咤してモビルスーツデッキへと向かう。
「…ララァはもう出撃してしまったか?」
意識が飛びそうになる度にペンで刺した傷口を手で抉り、痛みで正気を保つ。
「…うう…痛っ…」
モビルスーツデッキに辿り着くと、既にララァのエルメスとシャアのゲルググは見当たらなかった。
「クソッ!もう出撃してしまったか!間に合うか!?」
デッキ内を見渡すとガンダムが目に入った。
「ガンダム!動くか!?」
戦闘の混乱でごった返したデッキ内を移動し、ガンダムのコックピットに乗り込む。
パネルを操作し起動処理をかけるとコックピット内に明かりが灯りシステムが起動した。
「動くぞ!エネルギーもある。行ける!」
アムロは操縦桿を握り締め、ガンダムを固定するワイヤーを引き千切る。
その様子に気付いたクルー達が騒ぎ始めるがそれを無視してアムロはデッキを飛び出した。
外に出て要塞に向かって飛ぶとそこはまさに乱戦という状態だった。
要塞からの集中砲火、双方の戦艦からの砲撃。そして、モビルスーツ達が対峙しあい彼方此方で爆風が上がる。
「ララァ!シャア!何処だ!」
アムロは意識を集中させ二人の気配を探る。
そして、ダミー隕石の影に二人の気配を感じる。
そして、もう一つよく知る気配も感じた。
「カイさん!?」
カイのガンキャノンが敵を倒しながら要塞へと向かっていく。
そのカイを狙うララァのビットを察知する。
「カイさん!危ない!!」
アムロは咄嗟にカイを狙うビットをビームライフルで撃ち落とす。
その衝撃にカイがビットを操るエルメスの存在に気付いた。
「そこか!!」
カイのガンキャノンがララァのエルメスを狙い攻撃を仕掛ける。
「ダメだ!カイさん!!」
アムロの制止も虚しくキャノンから発射されたミサイルがエルメスへと向かっていく。
「ララァ!!!」
しかし、そのミサイルはシャアのゲルググにより退けられ、そのままシャアがキャノンへと向かう。
「何!!赤い彗星か!?」
カイが慌てて回避しようとするが間に合わない。ゲルググのビーム薙刀がキャノンを切り裂こうとした瞬間、それをガンダムのビームサーベルが受け止める。
「「アムロ!!?」」
二機は突然間に現れたガンダムに驚愕する。
「カイさん!離れて!!」
「アムロ!!やっぱりお前生きて!!」
喜びも束の間、ララァのビットが再びカイのキャノンを狙う。
しかし、そのビットはハヤトの援護によって退けられた。
「ハヤト!」
「アムロ!!」
その情報はホワイトベースのミライやブライトの元にも届く。
「ブライト!!アムロが!!」
ミライの叫びにブライトと艦橋のクルー達から歓声が上がる。
「アムロ!!」
ブライトはモニターでガンダムを呼び出す。
作品名:ヒカリ 5 作家名:koyuho