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琅琊閣小噺 弍

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そういえば、花の匂いを嗅いだのだ。その時に花粉を吸い込み、この有様となったのだろう。
「ここから離れた地の、榛子の雄花を持ってきたが、あの飛流だ、相当振り回して、ここに来るまでには花粉もほぼ、飛び散っただろうに、お前のこの過敏な症状は、、、。」
「子供の頃から、酷い目に遭っていた筈だ。」
────そうだ、知らずに食べて酷い目に遭った。
あの時も、、、、静嬪が居たからあの程度で済んだのだ。────
その後は、もうあんな酷い症状は出なかった。周囲の者が、長蘇が口にせぬ様に、計らっていたのだ。
そして、秘密にされていた。
「北の地ならば榛子は無いが、似た種類の白樺でも似たような症状が出る。」
「春の白樺が開花の頃、風が強く吹いた日に、喉がおかしかったりした事はないか?」
────そういえば、春先はそんな事もあった気がする、、、、。
風邪だと思っていたのにいつまでも治らず、母が静嬪に相談して、薬を貰って治まった事があった。
こういう事だったのか。────

「黎綱、さし当たって、あの枝は焼却してしまえ。」
「残った花粉が落ちるかもしれん、袋に入れて、西の門辺りで焼けば、この部屋には影響あるまい。」

「また西の門とは随分と離れた、、、、。」
黎綱が渋い顔をしたが、長蘇の為ならば、仕方がない。
飛流程飛ぶ事が出来れば、造作もないが、黎綱は飛流程は飛べない。
「そして花粉は、まだこの部屋には落ちているかも知れぬ。」
「部屋の隅々まで拭き掃除だな。」

「えっ、私は昨日、隅々まで掃除したんですよ。」

澄ました顔で藺晨が言う。
「仕方無かろう。妙な体質の主を持つと、配下は苦労するな。」
恭しく同情した様に聞こえるが、そうではない。
「衣服にも付いてるだろうな、着替えもせねばな。」
「まぁ、しなくても私は別に構わぬがな。」

「wwwwww」
「私は嫌だなんて、言ってませんよ。喜んでいたしますよ!!」

「主思いの良い配下がいて、幸せだな、長蘇。」
一言余計に言って、笑っている。そして、やおら藺晨は立ち上がる。
「さて、邪魔になるから、私はゆくか。」
部屋を去ろうとするが、長蘇が何か言いたげだ。
「なんだ、長蘇。」
酷い咳と、喉の腫れで声が出ないのだ。
「、、、、、、。」
「、、、、、。」

「なに?」
何度か繰り返す口の形から、ようやく言いたい事が分かった。
「飛流?飛流か?」
長蘇は頷く。
「そのうち帰ってくる。大丈夫だろ。」
長蘇は心配げにしている。
━━━━それは、そうだな。私は気休めを言っただけだからな。
何を言っても、当の飛流の姿を見るまでは、無駄だろう。
探して来いと言われかねぬ。言われる前に消えるまでだ。━━━━
藺晨は長蘇の部屋を出る。

全く、人騒がせだ。
━━━━だが、都の怪童の弱みが、榛子だとは。
大渝の将軍が聞いたら、笑い転げて止まらなそうだ。━━━━
藺晨自身も、何だか可笑しくて笑ってしまう。
━━━━長蘇は、笑い事では無いのだろうがな。
また暫くの間、別の薬も処方してやらねばな。
寝込まれてしまっては、私もつまらぬ。━━━━

「さて、各地の報告も届く頃か。」
戻る事にし、廊下を進んで行った。

しばらく進んで行くと、いきなり背後からぶつかる者がおり、その者は藺晨の背中に抱きついた。
力のこもったその手には、見覚えがあった。
「飛流。」
藺晨は、自分の腹部で合わされた飛流の手を解こうとしたが、解こうとする程に力がこもり、外れない。
何をしてきたのか、、、、冷たい手だった。
少し、そのままでいる事にする。
そして、穏やかに話しかけた。
「驚いたのだろう?」
「怖かったか?」
藺晨の腹部の辺りで組まれた手を、とんとんと、軽く叩きながら話す。
「お前のせいでは無いのだ。」
「長蘇の体質がああなのだ、気にするな。」
「恐らく、ここに来る前からの体質なのだ。」
「飛流のせいでは無い。」
幾らか力が緩み、藺晨は飛流の手を解き、振り返る。
何故か髪はずぶ濡れだ。束ねた髪の先からは雫が滴っていた。
━━━━滝壺にでも落ちてきたのか?━━━━━
「、、、、死ぬ?」
真っ直ぐ藺晨を見上げた飛流の眼は、真っ赤だった。
今にもまた、涙が零れ落ちそうなのだ。
「、、、、、、毒?」
そう聞かれて、腑に落ちた、
━━━━可哀想に、これ程驚いたのだ、、、。━━━━
直感的に、持ってきた榛子の枝を、毒だと感じたのだ。
驚いたからこそ、どうしてよいのか分からずに、逃げたのだ。
だが、長蘇の事は心配でもあり、自分の行いに責任も感じ、、、、自分の体に付いた毒を落そうと、本当に滝壺にでも飛び込んだのだろう、、、、服を着たまま。
そして、毒を落としたので、長蘇の事も気になり、着替えてだけ来たのか、、、。
━━━━まだ、水は冷たかったろう、、どの位浸かっていたのか、体が冷えている。━━━━
藺晨は掴んだ飛流の腕から、冷えた体の体温を感じた。
「長蘇はあれしきでは死なん。」
「私が針を打ったのだ。」
にっこりと笑いかけて、穏やかに話しかける。
「外から見なかったか?もう、咳も止まり、心配は無い。」
飛流は首を振る。この辺りには居たのだろうが、怖くて様子を伺うことが出来なかったのだ。
「飛流。」
「お前が持ってきたあの枝は、榛子の実がなる枝なのだ。
私にも、飛流にも、榛子は毒ではない。」
「たが、長蘇はあれに過敏に反応してしまうのだ。恐らく産まれてからずっとこうなのだろう。私も知らなかった。」
飛流は、じっと藺晨の眼を見て聞いていた。
━━━━
この先、、、この先は長いのだ。まだ、始まってもおらぬ。━━━━

ふと、藺晨が視線を外す。
「───飛流──、一年先か、五年先かは分からぬが、いつか長蘇は金陵に戻るだろう。」
「金陵に戻れば、長蘇は、もっと酷い状態になる事があるかも知れない。苦しい発作は、二度や三度では済まぬかも知れぬ。」

━━━━そして、そのまま、、、、という事も、、、、あるかも知れぬのだ。
諦めろと忠告しても、やつは聞く耳をもたぬのだ。
奴の身体にも、私の力にも限界はある、、、、。
私は、、、、友を、、、目の前で失うかも知れぬのだ。━━━━

━━━━頑なだった決意。
一族を根絶やしにされた恨みだけではなかった、、、、。
父親は、大虐の汚名を国から被せられ、殺された。
全てを失い、自らの身体すら、元の健康なものでは無い。
これだけの仕打ちを祖国から受けたというのに、あいつはその、大粱という国の未来を案じているのだ。
自分の命すら削って、風雲を起こそうとしているのだ。━━━━━

「、、、、死ぬ?」
心配げに飛流が聞く。
「私が、治療をするのだぞ、死ぬ訳があるまい?」
藺晨は視線を戻し、飛流に笑いかける。
飛流は藺晨の笑に不安が消えた様で、表情が幾らか明るくなった。
藺晨が頷く。

━━━━今、不安なのは、飛流より私の方だろう、、、、。
だが、奴の方こそ不安であるに違いない。強がって、誰にも悟られまいとしてはいるが。

身体も心も、辛く険しい道を、わざわざ選択したのだ。不安で無いわけが無い。
歩み出してしまえば、諦める事も、倒れる事も許されぬ、苦しい道なのだ
作品名:琅琊閣小噺 弍 作家名:古槍ノ標