五十音お題。
せんそう
(戦争さんど)「あ、帝人君だー。なんでシズちゃんと居るの?」
「てめぇこそ、なんでここにいるんだ」
ひょこ、と道から首を出してきた臨也さんに青筋を立てながら問いかけている平和島さんは、凄く怖かった。隣にいるなんて嫌だなぁ、威圧感だけで僕は死んでしまうのではと思った。
「俺ってば、運命の赤い糸で結ばれているから」
僕の手をぐい、と引っ付かんで満面の笑みを浮かべられた。にやぁ、つり上がった口角が酷く気味が悪かった。まるで童話に出てくるチシェ猫のようである。
「運命の赤い糸? それって俺が臨也を血塗れにされに運命か」
首を傾げながらバキバキと手の関節をならした平和島さんは、僕を掴んでいるのとは反対側の腕を凝視している。腕の骨を折ろうとか、ろくでもない事を考えているのだろうか。
「そんな怖いものじゃないって」
さ、と見られているのに気付いた臨也さんが、腕を後ろに隠せば平和島さんはチッと大きく舌打ちをしていた。どうやら本当に骨折させようとしていたのかもしれない(それとも脱臼だろうか?)
「つまらねぇだろうが」
「血塗れになる位なら、面白くない方がいいよ!」
顔面は蒼白である。僕をつい、と引っ張ったかと思えばそのままエスケープしようと走り出された。ちょっと待って、と言う前にいつの間にか臨也さんの肩は平和島さんによって捕縛されていた。二人でほぼ同時に振り返れば満面の笑みをなさった顔が見えて、思わず背筋が凍った。
「せっかく、ずたぼろにしようと思ったのによ……」
「シズちゃん、爽やかな台詞で怖いこと言わないで!」
「なんにも怖くねぇよ」
にこぉ。
まるで蛇に睨まれた蛙のようである。いきなり平和島さんは僕の目を塞ぐようにベストを頭に乗せた途端、いつも通りのような叫び声が路地裏に響いた。
「まったく……なにしやがる臨也ぁあぁああ!」
「え、ちょっとさっきまで大人しかったのに!」
「いきなり叫んだら竜ヶ峰が可哀想だろうが! ちょっと待っててくれるか竜ヶ峰? すぐ終わらせるからよ……」
どうやら僕に乱闘するシーンを見せないための気遣いで、さっきのさっきまで我慢していたようであった。
「まったくシズちゃんは素直じゃないなぁ!」
この後は特筆する価値もないので割愛させてもらうけれど、相変わらず仲がよいのが露見した一日であった。