二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

五十音お題。

INDEX|4ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 

えむ(臨也→帝人←シズ)


 竜ヶ峰帝人ことダラーズの創始者である少年は、今まで様々な事を経験しているとはいえ現在の状況は耐えるには辛く、誰でもいいから助けてくれと叫ぶとか携帯で連絡をとりたいくらいに困っていた。
「なんで手前がいるんだ臨也!」
「ちょっと。どうしてシズちゃんなんかといるんだい、帝人君!」
「なんか呼ばわりとは、いい度胸してんじゃねぇか。あぁ?」
 折原臨也こと新宿で暗躍している情報屋は笑みを浮かべ、平和島静雄こと池袋を闊歩する借金取りは青筋をたてていた。
(早く帝人君置いてどっか行ってくれないかな)(早く失せろノミ虫が)
 二人とも行動は違えど考えていることは同じであった。無論、二人共思っている事は同じだと知っているので、近くにあるゴミ箱に手を出しかけ、臨也はジャケットに入れているナイフに手を伸ばす。
「……やめてくださいよ! ここ、どこだと思ってるんです」
 ぴたり。と動きを止めた二人は、臨也が少し見上げるように静雄が少し見下げるようにして視線を合わして目配せをする。
(帝人君が言うんじゃ仕方ないよね)(……ち、)
 と言った具合に帝人に聞こえないように会話をすれば殺伐とした空気が少しばかりマシになった。
「……仕方ねぇ、」
「ところでさ、なんで帝人君とシズちゃんでゲーセンにいるの?」
「あー……ただ、ガンゲームでもぶっ放そうとしただけだ」
 目を泳がせて誤魔化す静雄を大きなぬいぐるみを持った帝人は苦笑して見ていたのだが、臨也はそれに気付いたのに無視をしたのか気付かなかったのか盛大に笑い転げた。
「……くっ、あははっ! シズちゃんがガンゲーム? 自販機投げて撃退した方が様になるって」
 否。どうやら前者だったようで、帝人が抱えているぬいぐるみを睨みつけていた。
「あ? 文句あるのかよ」
「……よし、帝人君。俺とプリクラ取ろうよ」
「え、」
 困ったように、助けを求めるように帝人は静雄を仰ぎ見た。見られた方がどうしようと考えあぐねている静雄を放置した状態で、臨也はぐいぐい帝人をプリクラのコーナーへ押し込められていた。
「なにしてんだ、臨也ああぁ!」
 静雄もダッシュでコーナーへ滑り込み、帝人をべたべた触る臨也を引っ剥がしてかえそこから出ようとする、のだが。
「三人でとりましょうよ」
 と言った途端、静雄びたっと停止して、臨也は有り得ないという顔で臨也と帝人を交互に眺めていた。

 間。

 結局、臨也と静雄が喧嘩し、帝人で止めにかかったのだが、ちゃんと綺麗に写った写真は一枚しかなかったのだが、六枚すべてをラクガキへ回した。
「ラクガキ……やっぱり台は二つしかないよね。よし、俺に任せてよ帝人君!」
「竜ヶ峰。今、俺が持ったらこのペン、折るだろうから手前がやっていいぞ」
「え、あ。……はい。でも前行った時は正臣が居たからなぁ…」
 ぼそ、と呟いてから描き始めた帝人であった。
「まずはシズちゃんの顔を塗り潰してー」
「なにしやがんだ」
「え。嬉しいの?」
「いい加減にしやがれ臨也あああぁ!」
 いい大人がしていいものとは程遠い罵倒の声にため息を漏らしながら、帝人は一人黙々とラクガキを施して、携帯に送るのも(赤外線が便利で全て貰えた)シートにどう枚数の配分するかの設定も、全部帝人が行った。
 機械から吐き出された台紙を切ろうと机とはさみが置いてある方向を見れば、テーブルに手をかけて投げるタイミングを伺っている静雄が見えた。
「…………なに、してんですか」
「出来心というか、なんというかさ。まぁ、全部シズちゃんが悪いんだけど」
「よくもまぁ、ぬけぬけと言ってくれるなぁ、臨也ぁ?」
「……やめないと、僕一人で貰っちゃいますよ!」
 勇気を振り絞って言ったのだろう、肩口を震わせながら叫んだ帝人のおかげか、(まだ睨み合って一触即発な空気は広がっているものの)臨也と静雄は大人しくなった。
 机に置いてある鋏に手を伸ばした帝人は、丁寧に全ての絵柄が三分割されるように切り離して二人へと渡した。
「……ありがとう帝人君! やっぱり君はまめまめしくて、是非ともお嫁さんに欲しいよ」
「悪ぃな竜ヶ峰。そのぬいぐるみを茜とセルティにあげる為に付き合わせてよ」
 帝人の肩を掴んで抱き締める臨也と、申し訳なさそうに目を逸らす静雄と、行動は似ても似つかないけれど礼を言っているのには変わりなかった。
「いいですよ。……僕も、」
 久しぶりに楽しかったです。
 と、言おうか言うまいか悩んだのか不明瞭な声だったけれど、礼を述べてゲーセンから出て行こうとする帝人を、臨也と静雄が止めてまた二人は睨み合った。
「まだ早いし、もっと遊ぼうよ帝人君」
「……今日の礼じゃねぇが、菓子でもクレーンで落としてやる」
 まだ、この駄目な大人達は帰してくれるようではないようで帝人は呆れた。しかしその前にやりたい事があって、自分のシートから切り取った三人が唯一並んでとれたプリクラを、携帯の電池パックを蓋する板の裏っ側に貼り付けた。
「明日学校あるんですけど……遅くならないなら」
「よし、じゃあ行こうか帝人君!」
「臨也……俺を置いてくんじゃねぇ! 竜ヶ峰も抵抗しろ!」
「え、あ。……ちょっと、離してくださいって!」
「やだ」

 この後、三人で遊んだかどうかは池袋にまことしやかに囁かれている噂を聞けばわかるだろう。
 竜ヶ峰帝人は池袋で唯一、平和島静雄と折原臨也を懐柔できる青年だ。と。



作品名:五十音お題。 作家名:榛☻荊